高市発言から3週間近く経った。中国側の、習近平仕様を全開させた、自滅効果を導く尊大外交の悪影響と、その機を捉えた右翼とマスコミの巻き返しによって、日本国内の世論は高市発言が正当化される流れに染まっている。日中両国は戦争する可能性が高くなった。悲観的な気分になるが、今回は台湾有事の政治思想史について整理を試みよう。左翼リベラルの界隈では、台湾有事は根拠のない幻想であり陰謀論であると長く言われてきた。それは憲法改正や軍備拡張を達成するための政権側の口実であり、虚構であり、真に受けてはいけない詭計だと窘められてきた。その言説を主導したのは内田樹であり、田岡俊次と升味佐江子である。それに対して私は、台湾有事はアメリカの国家戦略であり、実体のある計画的なものだと反論し続けてきた。残念ながらその孤軍奮闘は功を奏さず、説得力にならず、言論世界で共通認識となる端緒すら得られなかった。 現在でも、左翼の中の