Text by Financial Times Editorial Board
台湾有事についての高市早苗首相の答弁を機にした日中の関係悪化の波紋は、日ごとに大きさを増して世界に広がっている。このタイミングでの発言は国益にかなうのか──。保守派や高市首相の支持者からも、そんな声が漏れ出る。そうした意見は日本だけではない。英紙「フィナンシャル・タイムズ」は21日、高市首相の率直すぎた答弁と中国の姿勢を批判する社説を掲載した。
中国と日本の無駄な論争
中国のスタンダードである「戦狼外交」だったとしても、その言葉は行き過ぎていた。
「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」
今月初め、大阪の中国総領事・薛剣はSNSへ上記一文などを投稿した。この言葉は、「武力攻撃が発生したら、これは存立危機事態にあたる可能性が高い」と高市早苗首相が示唆したことに向けられたものだ。投稿はのちに削除されたものの、中国政府の憤慨はなおも強さを増し、中国人の渡航を制限する動きを見せ、係争地に警備隊を送り込み、日本の海産物輸入への脅しをかけた。
※戦狼外交とは、中国が自国の利益を最優先するために、外国に対して威嚇や恫喝などおこなう攻撃的な外交スタイルをいう。
1931年から45年にかけ、国土の大部分を日本の残忍な占領下におかれたという苦しみの記憶を今なお抱き続けている中国は、日本の軍国主義が復活することを恐れていると主張している。しかし、高市首相の答弁はすでに自明なことを述べたに過ぎない。
2015年に規定された安保関連法では、直接的な攻撃がなくてもあらゆる「存立危機事態」に対して日本政府が集団的自衛権の一環として武力を行使することを可能にした。中国の台湾侵攻は、日本にとっての生命線となる海上交通路へのアクセス、台湾に住む日本人の安全、東アジアの民主主義の未来などを含む、日本の基礎的かつ重要な国益への脅威となる。台湾の紛争はアメリカを巻き込み、ほぼ間違いなく日本の領土にまで波及するだろう。
しかし、高市首相の、台湾におけるそうした事態において日本政府は武力行使を検討しなければならなくなるだろう旨の見解は正しかったものの、その可能性を公然と論じるのは控えたほうが賢明であった。
中国との関係においては、慎重な言葉遣いと歴史背景への配慮が美徳とされる。これは、引っ掻き回す必要などない外交問題だ。
1931年から45年にかけ、国土の大部分を日本の残忍な占領下におかれたという苦しみの記憶を今なお抱き続けている中国は、日本の軍国主義が復活することを恐れていると主張している。しかし、高市首相の答弁はすでに自明なことを述べたに過ぎない。
2015年に規定された安保関連法では、直接的な攻撃がなくてもあらゆる「存立危機事態」に対して日本政府が集団的自衛権の一環として武力を行使することを可能にした。中国の台湾侵攻は、日本にとっての生命線となる海上交通路へのアクセス、台湾に住む日本人の安全、東アジアの民主主義の未来などを含む、日本の基礎的かつ重要な国益への脅威となる。台湾の紛争はアメリカを巻き込み、ほぼ間違いなく日本の領土にまで波及するだろう。
しかし、高市首相の、台湾におけるそうした事態において日本政府は武力行使を検討しなければならなくなるだろう旨の見解は正しかったものの、その可能性を公然と論じるのは控えたほうが賢明であった。
中国との関係においては、慎重な言葉遣いと歴史背景への配慮が美徳とされる。これは、引っ掻き回す必要などない外交問題だ。
10月末のドナルド・トランプ大統領の訪日は高市首相にとっての成功であり、駐日米国大使は「揺るぎない」支持を保証している。とはいえ、アメリカは明らかに以前ほど頼れる同盟国ではなく、地域の安定を守ることもなくなった。
防衛費の増額を約束しているものの国内経済の弱さに直面している高市首相は、自国の安全保障をより良く維持することに重点を置くべきだ。また、彼女は予定されている韓国の李在明大統領との会談を軸に、韓国政府と周辺同盟国との関係強化に努めるべきである。
中国には、この騒動について改めて考えるべき、さらに多くの理由がある。
防衛費の増額を約束しているものの国内経済の弱さに直面している高市首相は、自国の安全保障をより良く維持することに重点を置くべきだ。また、彼女は予定されている韓国の李在明大統領との会談を軸に、韓国政府と周辺同盟国との関係強化に努めるべきである。
中国には、この騒動について改めて考えるべき、さらに多くの理由がある。
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