この記事は Chrome アクセシビリティ テクニカル リード、Dominic Mazzoni による Chromium Blog の記事 "Using Chrome to generate more accessible PDFs" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。

Chrome 85(8 月下旬に安定版になる予定)以降の Chrome は、ウェブページを印刷する際に保存先として [Save as PDF] を選ぶと、自動的にタグ付き PDF を生成します。タグ付き PDF とは、見出し、リスト、表、段落、イメージの説明など、ドキュメントの構造に関するメタデータが追加されている PDF です。タグ付き PDF は、スクリーン リーダーを使って PDF ファイルにアクセスする視覚障害のあるユーザーなど、ハンディキャップのある方でもアクセスしやすくなっています。ソフトウェアによる自動処理で PDF からデータを抽出しやすくなるなど、その他の用途にも使うことができます。

PDF にこのメタデータを追加する処理は、Chrome が得意とするところです。この情報は、既に適切に構造化された状態でウェブページ内に存在しているからです。これにより、より多くのコンテンツが Chrome からエクスポートされ、より多くのユーザーに利用されることを期待しています。

ネットにコンテンツを一般公開する組織は、多くの場合、ポリシー上の理由により、または米国の Section 508 のような現地法に準拠するため、すべての人が PDF にアクセスできるようにする必要があります。しかし、その他の面で優れたコンテンツを制作できる多くのソフトウェア プログラムは、タグ付き PDF を直接生成する機能をサポートしていません。そのような場合は、別のソフトウェアやサービスを使って PDF を準拠させています。この機能を Chrome に組み込むと、既にドキュメント ワークフローの一部で HTML を利用している組織は、この新機能を活用して、準拠した PDF を簡単に生成できるようになるかもしれません。--print-to-pdf フラグと --export-tagged-pdf フラグの両方を指定すると、Chrome Headless でもこの機能を動作させることができます。

PDF のアクセシビリティ向上を検討するにあたって、CommonLook というエキスパートに助言を求めました。CommonLook は 20 年以上にわたって PDF アクセシビリティに関するソフトウェアやサービスを提供してきた組織で、PDF 標準の設定にも積極的に関与しています。私たちは CommonLook の検証ツールを活用し、CommonLook に相談することで、最大の効果を得られる分野に労力を集中させることができました。
「Google は、Chrome で PDF ドキュメントのアクセシビリティを向上させるため、PDF アクセシビリティに関する高い専門性を持つ CommonLook に助言を求めました。その時点で私たちは、Chrome には世界中にたくさんのユーザーがいるので、PDF アクセシビリティの潜在的な影響力を認識していました。それから 2 年が経ち、大きな進展をお知らせできることをうれしく思います。ついに、Chrome でこの機能がすべてのユーザーにロールアウトされ、Chrome で PDF を生成するたびに実行されます。今後も私たちは、すべてのユーザーがアクセスできる Chrome を目指す Google をサポートいたします」 - CommonLook 社長兼 CEO、Monir ElRayes 氏
この機能は試験運用版としてロールアウトされます。すべてのユーザーで自動的に有効になる前に試してみたい方は、chrome://flags/#export-tagged-pdf をお使いください。

これは重要なマイルストーンですが、これで終わりではありません。今後の作業として、生成されるタグ付き PDF の質の向上や、Chrome の組み込み PDF リーダーでのタグ付き PDF の操作の改善などがあげられます。

Reviewed by Eiji Kitamura - Developer Relations Team