北海道いか釣漁業協会(札幌)は22日から、漁獲枠超過による自主規制として函館市を含む小型イカ釣り漁船(5トン以上30トン未満)について、北海道周辺でのスルメイカ漁を休漁した。漁期が来年1月まで残る中での異例の対応で、イカ釣り専門の漁師が多い函館市漁協には収入が絶たれ、死活問題になる可能性がある。期間は当面の間としている。大泉潤市長は同日、藤田仁司水産庁長官に対し、小型イカ釣り漁船の漁再開を緊急要望した。
21日に札幌で開かれた同協会の緊急理事会で決定した。全国的に太平洋側で例年にない好漁が続いており、函館でも市水産物地方卸売市場での9月の生鮮スルメイカ取扱量が、前年同期比で10倍以上(209トン増)に拡大し230トンとなった。
自主的な休漁措置を取ったのはスルメイカの漁獲が多い青森県、岩手県、北海道が先行し、今後、他県が追随するとみられる。
市によると、市内5漁協の小型イカ釣り漁業者は89人。市水産課は「スルメイカが捕れないので、漁業者は収入がなくなる。代わりの魚種を捕るしかないが、イカ釣り専門はそう簡単にはいかない。死活問題だ」と指摘する。
また、松前町と福島町は21日、合同で水産庁に対しスルメイカ漁獲枠拡大の要望を行った。スルメの加工原料を確保するためで、松前から尾坂一範副町長、伊藤幸司町議会議長ら4人、福島から鳴海清春町長、溝部幸基町議会議長ら5人が参加し、藤田水産庁長官に口頭で漁獲枠を増やすよう要請。松前町水産課は「両町とも前浜でのスルメイカの水揚げよりも、スルメの加工原料確保が目的。青森県八戸市などから多くの原料スルメイカを仕入れ、全国のスルメの8割以上を松前、福島で加工している。スルメイカが入ってこないと加工業が成り立たず、雇用の場が失われる」と危機感を示す。
水産庁は9月、今年度のスルメイカの漁獲枠に関し、現状の1万9200トンから34%増の2万5800トンに期中改定。このうち小型イカ釣り漁船枠は3回の追加配分を受けて4900トンに増枠したが、今月15日現在で漁獲可能量(TAC)が全国で超過した。水産研究・教育機構が発表した今年度の太平洋スルメイカ長期漁況予報(10~12月)によると、津軽海峡~道南太平洋海域の来遊量は前年を上回ると見通す。(山崎大和)