「日の丸メーカーが苦戦する時代に、志を共にする若い社員たちと、日露戦争に勝利した日本のような世界史の奇跡を起こすこと。それが、私の『坂の上の雲』です」──。 徳重徹は、愛読書である司馬遼太郎の代表作になぞらえて、そう夢を語る。 場所は、東京・渋谷の雑居ビルにある4畳半程度のシェアオフィス。狭い室内には、Tシャツにジーンズ姿の若者がひしめく。訪れる者は皆、この場所が創業わずか2年で、電動バイクの国内最大手に躍り出たEV(電気自動車)ベンチャーの心臓部だと知って驚くという。 2010年に誕生したテラモーターズは、電動バイクの開発から製造、販売までを手がける。同社の電動バイクは、家庭用コンセントによる7時間の充電で、約40キロメートルの走行が可能。1回の充電にかかる電気代はわずか約30円だ。 11年度は前年度の5倍に当たる約3000台を売り、創業2年目にして、同じく電動バイクを販売するヤマハ発動