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2025-05-12

私が人生で一番怒った時の話

あれは、茹だるような夏の日の出来事でした。

観測史上まれにみる酷暑で、

気温はおそらく35度を優に超えていたと思います

炎天下住宅街を歩いていた私は、

最悪なことに財布を忘れてしまったため、

一滴の水分も補給することができませんでした。

喉はカラカラに乾き、意識朦朧とし始めました。

『このままでは本当に倒れてしまうかもしれない。』

命の危険を感じるほどのどが渇いていた私は、

恥も外聞も捨て水を恵んでもらおうと、

とある一軒家の呼び鈴を鳴らしました。

「どなたかね」

家の中からは、小柄な老婆が出てきました。

私は必死の思いで深々と頭を下げ懇願しました。

「お願いです・・どうか、一杯のお水を恵んでいただけないでしょうか。

財布を忘れてしまい、何も口にできず・・本当に倒れてしまいそうなんです」

すると、老婆はこう答えました。

「嫌だよ出ていきな」

最初、私は聞き間違いだと思いました。

だって、そんなわけがない。

こんなに困窮して、

死にそうなほど汗だくになっていて、

土下座せんばかりの必死さで頼んでいるのに、

「嫌だよ出ていきな」なんてそんな返事できるわけない。

そんな無慈悲なふるまい、

文明をもった社会で、人間によって育てられたならできるわけがない。

私は意表を突かれて、ただ立ち尽くしていました。

「さっさと帰んな」

老婆はそう言って、玄関の扉をぴしゃりと閉めました。

私はしばらく呆然としていました。

・・しかし、どうすることもできない。諦めて帰るしかいか・・

そう思いかけた矢先ーーーーー

私の中で何かがぶちんと音を立てて切れました。

灼熱の感情沸点を超えて大爆発を起こし、

抑えきれない怒りがマグマのように噴き出した。

「このクソババアがぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

気がつくと、喉が張り裂けんばかりの大声で怒鳴っていました。

自分でも信じられないほどの、制御不能な怒りの咆哮。

乾ききっていたはずの喉から、どうしてこんな声が出るのか自分でも不思議だった。

そして、家の扉を全力で蹴っ飛ばして、ダッシュで逃げました。

世界が灼熱の業火で真っ赤に焼かれた日。

しょせん、この世は弱肉強食以外の何物でもなかった。

他人善意になど期待してはいけない。

結局は自分の力で生き抜いていくしかないのだ。

「強くなろう」そう心に誓ったあの日

私が人生で一番怒った時の話。

https://note.com/lithe_gerbil1811

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