江戸川乱歩が描いた人間の「闇」 没後60年、色あせぬ魅力とは

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聞き手・岡田昇

楽問(がくもん)のススメ

学校、趣味、学び直し……。「学ぶ」「教える」の現場にいる人たちに取り組みや魅力を聞きます。今回は立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター助教の杉本佳奈さんです。

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 江戸川乱歩と聞いて、皆さんはどんな作品を思い浮かべますか。明智小五郎や怪人二十面相が登場する少年探偵団のお話でしょうか。小学生の頃、図書室にずらりと並んだこの人気シリーズに夢中になったという人も少なくないかもしれません。

 乱歩が子ども向けの探偵小説を手掛けたのは、作家デビュー後10年余りたってからのことです。一方で大人向けの推理・怪奇ものも得意とする、日本における探偵小説の草分けです。人間の心の奥底に潜むエロチシズムや猟奇性など闇の部分を描くことにたけていました。

 代表作の「孤島の鬼」はミステリーとして完成度の高い作品ですが、同性愛や先天異常が物語の重要なカギを握ります。「人間椅子」では倒錯的な恋愛感情が奇抜な発想へと結び付きます。トリックの緻密(ちみつ)さでいえば現代の推理小説に及ばない点があるかもしれませんが、人間が持つ秘めた欲望を描き出した作品の魅力は、今でもまったく色あせていません。

生涯に40回以上の転居、作品にも影響

 乱歩は作家として名をなす前…

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