第3回声帯失った仲間も一緒に スタレビ根本要さん、歳の数だけ楽しい人生

有料記事

聞き手・構成=河上真木子
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 「木蘭(もくれん)の涙」「夢伝説」などで知られ、2026年にデビュー45周年を迎えるスターダスト☆レビュー(スタレビ)。メンバーの林“VOH”紀勝(はやし・ボー・としかつ)さん(65)が喉頭(こうとう)がんで声帯を失い、一時はバンド脱退を覚悟したが、リーダーでメインボーカル・ギターの根本要さん(68)らの言葉に引き留められ、ライブに復帰した。新しいバンドの形を模索しているという根本さんに、息長く活動を続けることや年をとること、バンドの未来について聞いた。

【連載①】声帯失ったスタレビメンバー 帰りを待った仲間に抱きしめられた日

 2年前に声帯を摘出し、バンドの売りであるコーラスができなくなってしまったメンバーの林さん。大きな喪失感と向き合い、仲間の元に帰るまでのストーリーです。

実は、ずっと後ろめたかった

 今回、(林さんの復活へ)踏み出して、空気が一転しましたね。(林さんのいない)5人でやっている後ろめたさはなくなってきたというか。

 前回のツアーは、ステージにVOHの等身大パネルを置かなきゃいけないとか、休んでいることを説明しなきゃいけないとか、時には、その説明すらできないイベントもあったから、「スタレビは5人のバンドなんだ」と思った人もいたかもしれない。

 特にファンクラブは、僕らの生き様までお見せするところだと思っているから、そこに状況を伝えきれていない後ろめたさは、ずっとありましたね。

 ライブ来てくれる人にも、5人なんだから、チケットを安くしたほうがいいんじゃないかという気持ちすらあった。アンコールの最後に言っていた「次はあいつを連れて帰ってきます」という言葉も、途中からは僕自身、100%の自信を持って言えていなかった。もし、VOHが、脱退という言葉でスターダスト☆レビューを締めくくっていたとしたら、お客さんへの申し訳なさでいっぱいでした。今となっては、言っておいてよかったなと思ってます(笑い)。

 今回のことがあって、バンドの結束は強まりました。それは、とても大きい。今は、VOHが戻ってきたっていう余韻、「利息で暮らしてる」みたいなところがある。まだ実になっていない感じ。

 あいつが出ることで、お客さんが異常なぐらい喜んでくれるんだよね。お客さんの年齢もある。みんな何かしら、健康的にも精神的にも人間関係的にも、いろんな不安を抱えていると思う。だから、頑張って乗り越えたVOHを見た時に、自分のあるべき姿を投影するんでしょうね。

 そういうお客さんからのパワーが、今の僕らを作ってるような気がする。だから僕は、ちょっと今のスタレビには、半信半疑なところがあるわけですよ。ウケ過ぎてるから。

常に反対意見を探している

 怖いのは、野放し、手放しになること。絶えず何か、反対意見というのを求めるんですよね。だから、大成功と言われれば、ひたすら失敗したところを探したくなる。大失敗と言われりゃ、逆に良かったところを探したくなる方だからね。

 ありがたいことに、うちは、大成功といわれることを、まぁ僕らなりの小さい規模ですけれど、積み重ねて今がある。だから、周りのスタッフたちが、面と向かってダメ出しするようなことはないから、あえて僕が、失敗した部分、できなかった部分というのをほじくりかえしていく。それもよかったんでしょうね。

 年食えば食うほど反省する部分が多いし、できなくなる部分も多い。それに準じて落胆も出てくるはずなんですよ。でもそれが、ない。ありがたいことに、今が一番お客さんが入っているわけだから。

 苦節何年とか、あんまり使いたくない言葉だけど、その人にとってのピークを迎えるって、あるじゃないですか。そういうのが見えないって、こんな幸せなことはないんだと思うんですよ。

いつか僕がマイクを置くとき

 ――今年3月のツアー初日公演の終盤、「初日が終わっちゃう」と感極まる場面がありました。「あと何回ツアーができるかな」という思いがあったのでしょうか。

 それは、ある。それと、あと…

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    服部倫卓
    (北海道大学教授=ロシア・東欧)
    2025年10月26日12時11分 投稿
    【視点】

    個人的に、昨年初めて、スターダスト☆レビューのコンサートを生鑑賞する機会があった。 その際に、確かに林“VOH”紀勝氏の不在が知らされ、記事にあるように等身大パネルが設置されただけでなく、VOHの過去のパーカッション音源と生演奏をミックスす

    …続きを読む
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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2025年10月26日13時45分 投稿
    【視点】

    起こったこと、それによって何かができなくなること。そのこと自体には何の意味もなく、どう意味づけるかは本人次第、なのだが、その本人次第は周囲の本人次第を尊重する支援とともにある。“生きるって人と関わることなんだ”と思えてくる。そんな連載だ。

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