仕事や暮らしのあらゆる領域にAIが浸透する中で、「人間の存在価値はどこにあるのか」という問いが、これまでになく突きつけられている。感動プロデューサーの平野秀典氏は「あるヤクルトレディが顧客からもらった感動体験に、そのヒントがある」という――。
ヤクルトレディ
ヤクルトレディ(写真=Jim Epler/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

AI時代に必要な「7つのシン」とは

これまで2回にわたり、AI時代を生き抜くための処方箋として「感動力」や「自然知能」という概念を紹介してきました。

最終回となる今回は、その自然知能を体系化した「7つのシン」に触れながら、人間とAIが共演する未来の可能性を考えていきます。

10月1日に発売された新刊『シン・感動力』では、AIと人間の関係を考える中で「自然知能」を7つの切り口(7つのシン)に整理しました。

頭文字の「シン」には、「新」「真」「深」「信」「神」「心」「清」という7つの意味を込めています。

これらは一見すると抽象的に思えますが、日常のあらゆる場面で発揮される実践的な自然知能を表しています。

7つのシンすべての中核となるのが、「感動力」です。

感動とは、相手の期待を少しでも超えた瞬間に生まれます。

・営業の現場では「想像以上の提案」に
・教育の場では「予想を超える学び」に
・組織の現場では「期待を超える信頼関係」に

感動は人を動かし、組織を動かし、社会を動かす原動力になります。

AIが合理的に導いた「正解」だけでは動かない人の心を、動かすことができます。

AIは強力な伴奏者

AIと人間を「競争」の関係で捉えると、人間は劣勢に立たされます。

しかし「共演」として捉えたとき、AIは強力な伴奏者になります。

AIが膨大なデータを分析し、人間は「深」の知能でそこに意味を与える。

AIが最適解を提示し、人間は「信」の知能で人と人をつなぐ。

AIが仮想世界を描き、人間は「心」の知能で共感と物語を紡ぐ。

そして、そのすべての共演を束ねるのが「感動力」です。

感動力を自然知能のエースとして発揮することで、AIと人間は対立ではなく共創の未来を描けるのです。