今や「自由陣営の盟主」ではなく、「世界の王」のごとくふるまうアメリカのトランプ大統領。戦後80年、一貫してアメリカに追従してきた日本はどうすべきか。BBT大学学長の大前研一氏は「石破首相はトランプ氏、中国の習近平主席ともわたりあいながら、『失われた35年』からの脱却を図るしかない」という――。

※本稿は、大前研一『ゲームチェンジ トランプ2.0の世界と日本の戦い方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

中国、日本、アメリカの国旗
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石破首相は、習近平やトランプと渡り合えるのか

図表1で、日米中の関係性と、想定される要求事項をまとめてみた。

トランプ氏のアメリカ大統領復帰により、米中対立は再び激化することが予想される。その中で石破首相が取るべき道は、単なる対米追従でも中国への傾斜でもなく、日本独自の戦略的自立性を確保したバランス外交である。

まず、安全保障面では、日米同盟の実効性を高め、尖閣諸島など対中抑止力を強化する必要がある。その一方で、経済・環境・感染症対策といった地球規模の課題については、中国との対話と協力の窓を閉ざすべきではない。

石破首相は、アメリカには原理原則に基づいた是々非々の姿勢を貫きつつ、中国には毅然としながらも敵視に走らない、臨機応変な対応が求められる。また、ASEAN諸国やインド、オーストラリア、EUとの連携を通じて、多国間協調の枠組みを強化し、日本が米中両国に対して発言力を持つ「信頼される中核国家」として存在感を高めることが重要である。

石破外交の真価は、米中いずれにも偏らず、国際秩序の安定に寄与する“中庸の道”を切り拓けるかにかかっている。