舞踏、新城市鳴沢の瀧、ダンサー岩下徹(2025年11月16日) 十一月、紅葉が山肌に火を灯しはじめる頃、私達は鳴沢の瀧へ向かった。瀧の脇にひっそりと設えられた簡素な舞台で、舞踏の撮影がある。 パフォーマーは四人。こちらはカメラ一台。その不釣り合いな静けさの中で、私はレンズの向こうに流れる時間の気配を探していた。 そのうちの一人、岩下君は元・山海塾のダンサーである。パリ・オペラ座をはじめ、世界の舞台に立ってきた男だ。そんな彼が、鳴沢の瀧という原初の空間に立つ。観客は二十名に満たない。しかし数の問題ではない。むしろ、このささやかな場が“舞台”という言葉を取り戻す。 瀧の冷気が肌を撫で、苔むした岩壁…