もはやホラー映画界のディズニーランド。観客が見たいものを見せてくれる上にサービス精神も満点、74点。
個人的には映画界のストレステストなんじゃないかと思っているファイナルデスティネーションシリーズの最新作。
とにかくこの作品群は視聴中、極度の集中に晒され続ける。
めっちゃ簡単に言うと「大事故で死ぬはずだった人が主人公の予知夢などによって死に回避した結果、死がそいつらを追いかけてきてちゃんと死ぬはずだった順番にサービス精神満点な殺し方で死なせていく」という話。そして概ねその死は「日常に転がっているちょっとした危険」が積み重なって死に至る。
例えばこんな感じ。
風の強い日に芝刈りをしている人の家がある。その家のガレージ前ではガキどもがサッカーの練習をしており、一人は道路を背にボールを受けている。道路とガキの間にはゴミ箱が置かれており自動回収のゴミ収集車が向かっている。
ちょうど女性がそこを通りがかったときに強風が吹き、芝が舞いガキの目に入りガキのボールは目測を誤り女性にシュート、女性はゴミ箱にダイブしゴミ収集車に自動回収されすりつぶされて死ぬ。
巷では「死のピタゴラスイッチ」などと呼ばれているが、こういった死のタネが作中にとにかくめちゃくちゃ出てくる上に「これ危険ですよね!!!」と自己主張が激しい。芝刈り機、ガスコンロ、割れたガラス、可燃性の洗浄剤、ちゃんとしまわれない包丁、扇風機の近くに垂れている紐、前を走る丸太を積んだトラック、整備が不十分なトランポリン、虫眼鏡の役割を果たしそうな猫避けのペットボトル、ボルトが緩んでいるシャンデリア、置きっぱなしの鍬、高所のガラスの入替作業。日常に潜む危険がこれでもかと出てくる。
もう本当にめちゃくちゃ出てくるのでどれが本当に死に関わるタネでどれがブラフなのかがわからない。出てきたはいいけど何もありませんでした~のパターンもある。
なので観客は「どれだ、どれで死ぬ、これか、いや違うのか、こっちか、いややっぱりあっちなのか」と常に身構えた状態で画面を見ることになる。そして見事な手順をたどって死に至りスッキリして「整う」のだ。
これが気持ちいいと思えない人はまず向いてない。
作品はシリーズ通してほぼすべて同じパターンで構成されており、まず最初に多くの人が「死ぬべき」大事故が発生し、多くの人の悪趣味な死にザマをたっぷりしっかり見せてくれる。ウェルカムドリンクならぬウェルカム大虐殺をお出しされる。しかしそれは主人公の見ていた予知夢で主人公はそれを訴えて周囲の人間を救う。
その後、それで助かった人たちが愉快な死に方をしていき「これは助かったやつが本来死ぬべき順番で死んでいっているのでは?」と発覚しなんとかかんとかそれを避けようと奮闘し最終的になんとかなる。
そしてようやくみんな助かったねよかったよかったハッピーエンドと思った瞬間に最後のやつがめちゃくちゃ愉快な死に方をしてギャー!終わり!というデザートまで完璧な配分になっている。
今作は最後のギャーの規模がめちゃくちゃデカくなっていてフルコース食い終わったらサーティーワンを店舗ごとプレゼントされたような気分になった。ありがてぇ。
今作ではこの予知夢を見るのが助かる本人ではなくその孫となっているのがこれまでとの違い。
祖母もその大事故を予知夢で回避しており、大事故の時点で妊娠していたため彼女の子供、そしてその子供たち(孫)も本来生まれるべきではない死の対象だったということで一族全員死亡するまで帰れま10という展開になる。
大事故で死ぬべきだった主人公の祖母は田舎にずっと引きこもって襲い来るピタゴラ死を研究し予兆を見抜く能力を身に着けそれを回避し続けることで「死の次に順番を渡さない」という形で家族を守っていた。
でも主人公が過去の予知夢を見て祖母に助けを求めたことで「死が狙っている」というゴリゴリオカルトを主人公に信じさせるために家を一歩出た瞬間、愉快な死に方をしてしまう。このことで死のファミリー連鎖が始まってしまうのだが、ババアが家出なかったら死の連鎖始まらなかったよね!?と思ってしまった。ガンでもうすぐ死ぬって言ってたからなんにせよ次に回るしなぁって判断だったのかな。死の対象が老衰で死んだらどうなるのかの言及がなかったからここはよくわかんなかった。
今作は「血のつながり(原題はbloodlineで血族を表す)」で人の死の順番が決まっているので「じゃあ次こいつやな」と思っていたら実はその子は不倫でできた子だからセーフでした~という世界一嫌なスティングがあるんだけど、結局そいつも面白死しちゃう。ここは批判ポイントなんだけど
・死を誤魔化そうとするやつは酷い目に合うというセリフがあったのでそれで死んだ
のどっちかだと思う。ちゃんと血が繋がってたら順番通り死ぬはずだから、多分後者。心停止してから復活したらいけるらしいという情報を元に弟を仮死状態にしたろ!と奮闘していた結果、死を怒らせたというのが一番筋が通る展開だと思う。
まぁ、今作では最後のギャー!のために何十人も死んでると予想されるので「死は対象者以外狙わない」というのはかなり眉唾ではある。
このシリーズのサービスポイントでありここが面白い部分でもあるんだけど、今作ではさすがに気になったかなっていうのは、「膨大な前振り」「死のピタゴラスイッチ」を見せなきゃいけないという使命感(サービス精神)が出すぎていて、「逆に」まだ死なないなが予想できてしまうシーンが多かったこと。
サービスシーンはいっぱいあるんだから途中に1個でも「前振りの途中でいきなり死ぬ」シーンがあるともっと緊迫感が増したんじゃないかと思う。
あと、さすがにアメリカの建物も機械も規格外すぎるだろ。セレモニーで人集まったらどんどんボルトが抜けるスカイツリーとかドア越しの自動販売機の巨大スプリングを引っこ抜く磁力を発揮するMRIとかめちゃくちゃすぎるだろ。さすがに笑う通り越してドン引きですわ。面白いからいいけど。