■砂塵のあとに 
広場に人々が集まり、
ある者は叫んだ。
「王は退く! ついに座を去る!」
すると群衆はざわめき、
胸を高鳴らせ、
砂塵のように声が舞った。
やがて別の者が現れ、
帳を広げて語った。
「その声は早すぎた。
確かに兆しはあったが、
確かな証は今ここにある」
人々はうなずき、
あたかも最初の叫びなど
なかったかのように頷いた。
わたしは苦笑した。
――勝負が終わったあとで、
手を出す者の掌は、
いつも清らかに見えるのだ。
だがその掌は、
本当に正しさを示すのか。
それとも遅れて舞う影の一つか。
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