ボーイングに批判殺到 米航空大手「失望、怒り」

【ヒューストン=花房良祐、ニューヨーク=弓真名】小型旅客機「737MAX9」の事故を巡り、米航空会社が製造元の米ボーイングへの批判を強めている。航空機自体の安全性に懸念が深まれば、2018〜19年に引き起こした2度の墜落事故から少しずつ取り戻しつつあった顧客の信頼は再び揺らぐ。
アラスカ航空の小型機「737MAX9」は1月5日、飛行中に機体の一部が吹き飛ぶ事故に見舞われた。米連邦航空局(FAA)の指示で、アラスカ航空やユナイテッド航空が保有する約170機が運航を停止。安全検査を強いられた。
約70機を運航するアラスカ航空は大幅な減便を強いられ、25日には年間で1億5000万ドル(約220億円)程度の減益要因となると公表した。同社のベン・ミニクッチ最高経営責任者(CEO)は23日報じられた米NBCテレビの取材で「いら立ちや失望を通り越し、私は怒っている」とボーイングを公然と批判した。
事故の原因は非常口を覆うパネルを製造時にボルトで固定していなかったためとみられる。アラスカ航空によると、同社が保有する多数の同型機でボルトの締め方が緩かったという。アラスカ航空は検査を終えた機体の運航は26日から順次再開する予定だが、ボーイングのずさんな品質管理の波紋は収まらない。

「737MAX9」を約80機を運航するユナイテッド航空のスコット・カービーCEOは23日、CNBCテレビで「製造上の問題に失望している」と話した。
ユナイテッドは同日、2024年に納入が予定されている機体107機のうち31機が「737MAX9」よりやや大きい派生機の「737MAX10」だと明らかにした。開発中の機種で、今回の事故を受けてFAAの型式認証の審査が厳しくなれば年内とされる商用化が遅れるとの予想もある。
ユナイテッド幹部は「納入が予定通りに行われると考えるのは非現実的だ」と指摘し、代替案を検討していることを示唆した。
90年以上前に誕生したユナイテッド航空の源流はボーイング系の航空会社だ。ユナイテッドは長くボーイングの上顧客だったが「25年のボーイングへの発注と同社からの納入は減少が予想される」(ユナイテッド幹部)。隙間風は隠せない。
型式認証をめぐっては、737MAX9よりやや小さい「737MAX7」の審査も遅れる可能性がある。導入を予定していたサウスウエスト航空は25日、24年の運航計画に同機種を盛り込んでいないことを明らかにした。
「737MAX」では、先行して市場投入した「737MAX8」が18〜19年に2度墜落し、300人以上が死亡。世界で2年近くにわたって運航停止に追い込まれた。アメリカン航空のロバート・イソムCEOは25日、「ボーイングはしっかりしなければいけない。過去数年の問題は許容できない」と批判した。
ボーイングの「737MAX」シリーズのライバル、欧州エアバスの「A320neo」シリーズは受注で大きく先行している。追い上げたいボーイングにとって、信頼回復途上で引き起こした品質問題は大きな逆風となる。
ボーイングの商用機部門トップ、スタン・ディール氏は23日、「顧客の航空会社を失望させた。混乱を招いて申し訳ない」と謝罪のコメントを公表したが、試練は続きそうだ。
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