NYTが振り返った小澤征爾さんの音楽人生 活力、情感、時に波乱
Seiji Ozawa, a Captivating, Transformative Conductor, Dies at 88
1960年代から70年代にかけて欧米のクラシック音楽界を一気に虜(とりこ)にし、その後約30年にわたってボストン交響楽団を率いた、活力あふれる日本人指揮者の小澤征爾さんが2月6日、東京の自宅で88年の生涯を閉じた。
小澤さんの音楽事務所は9日、死因は心不全だったと公表した。
小澤さんは食道がんと診断され、(訳注:病気を公表した)2010年初頭から長らく、体調面が問題となってきた。がんの手術からも、術後の療養中に悪化した腰痛からも完全に回復せず、晩年は心臓弁膜症で入院していた。
過去半世紀にわたってクラシック音楽界を一変させた大きなうねり(movement)のなかで、図抜けた先駆者だった。東アジアの音楽家たちは、せきを切ったように西洋に進出し、同時にそれが西洋のクラシック音楽の神髄を韓国や日本、中国に広めることにもなった。
しかし、その間も長らく、高度な訓練を受けたアジアの音楽家たちがたとえ西洋音楽における完璧な技術を習得できたとしても、その音楽に宿る情感の内実を解釈し、深く理解することは絶対にできないという偏見を、クラシック音楽を知悉(ちしつ)する批評家たちさえもが広く共有していた。活気に満ちあふれた音楽家だった小澤さんは、持ち前の並外れた個性と妥協を許さぬ音楽的才能、そして、たゆまぬ努力によって、それを乗り越えた。
かさばった黒髪と少年のような所作、常にみなぎる活力で早くから人々の想像力をかき立てた。
世界的な指揮者としてクラシック音楽界に貢献した小澤征爾さんが亡くなりました。ニューヨーク・タイムズが掲載した小澤さんの足跡を詳細に振り返る記事を紹介します。
1973年にはボストン交響…
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