洗ってはいけない食材とは かえって高まる食中毒リスク

有料記事食のおしゃべり

大村美香
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 コロナ禍で、めっきり増えた生活習慣といえば、手洗いでしょう。職場で、食事の前に、帰宅して……。洗浄イコール清潔。何を今さら当たり前と思われますか? でも逆に、洗わない方が衛生上望ましいこともあります。8月、食品安全委員会フェイスブックで「食肉は洗わない」という投稿をしました(※1)。食中毒予防のためには、洗わない方が良いというのです。

肉を洗わない理由とは

 生肉の表面には、カンピロバクターや腸管出血性大腸菌、サルモネラなど、食中毒を起こす細菌が付いている可能性があります。肉を生のままで食べないよう呼びかけられるのはこのためです。厚生労働省によると、市販の鶏肉を調べた複数の調査結果では、カンピロバクターが20~100%という高い割合で見つかりました(※2)。

 肉を洗うと、肉に付いている食中毒菌が水しぶきと共に飛び散り、周りに置いてある調理器具や他の食品に付いてしまう恐れがあるのです。こうして細菌をばらまいてしまうと、食中毒を引き起こすリスクも高くなります。

 肉の表面に水分や血が浮いていたり、ドリップが出ていたりして、気になることもあります。「そんな時は、キッチンペーパーでふき取り、そのペーパーはすぐにゴミ箱へ捨ててください」と同委員会の香西みどり委員は話します。「肉に付いた食中毒菌は十分に加熱すれば殺菌できますから、生の肉を洗う必要はありません。洗う時にこすったりすると、肉の表面が傷つき水溶性成分の流出もあるでしょうし、肉が水っぽくなり、食味にも影響します」

 「肉を洗わないで」という呼びかけは、米国農務省や英国食品基準庁も行っています(※3)。

魚や貝の場合は?

 一方、一匹丸ごとの魚や殻付きの貝を調理する時は、最初に流水でしっかり洗う。魚介類に付く代表的な食中毒菌は、腸炎ビブリオ。この細菌は海水に生息し、真水には弱い性質があり、水道水で洗い流すのが有効です。切り身の魚は、すでにさばいてある状態なので、洗う必要はありません。ここで香西委員が調理のコツを一つ。「魚に塩をふってしばらく置くと、生臭い臭い成分などを含んだ水分が出てきます。焼く前にふき取る方が良いです」

 肉も魚も、調理に使った包丁とまな板はすぐに洗うことが大切。洗った後に熱湯をかけると消毒効果があります。

 野菜は流水でしっかり洗うこ…

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大村美香
大村美香(おおむら・みか)朝日新聞記者
1991年4月朝日新聞社に入り、盛岡、千葉総局を経て96年4月に東京本社学芸部(家庭面担当、現在の生活面にあたる)。組織変更で所属部の名称がその後何回か変わるが、主に食の分野を取材。10年4月から16年4月まで編集委員(食・農担当)。共著に「あした何を食べますか?」(03年・朝日新聞社刊)