アウディ「A6 e-tron(イートロン)」がアウディジャパンの手によって2025年7月に発売された。ポルシェと共同開発した車台を使うバッテリー駆動EVだ。
豊富なラインアップ BEVらしいスムーズな走り
モデルラインアップの豊富さも特徴のひとつ。日本には「A6スポーツバックe-tronパフォーマンス」、高性能の「S6スポーツバックe-tron」、車型の異なる「A6アバントe-tronパフォーマンス」と「S6アバントe-tron」が導入される。
乗った印象はスムーズ。加速がナチュラルなのは、回転に関係なく最大トルクをぱっと出すモーターの特性のせい。そこがBEV(バッテリー駆動EV)のよさで、A6 e-tronは走りやすい。ちょっとぜいたくなBEVを探しているひとは、いちど乗ってみる価値があると思う。
減速も特徴的だ。ブレーキの摩擦を利用して充電する回生ブレーキを使う。アクセルペダルを踏む足の力をゆるめると、ブレーキペダルを踏まずに強めの制動がかけられる。アクセルペダルの操作だけで加減速が行えるので、慣れるとかなり楽ちんだ。
カーブを曲がるときの、いわゆるコーナリング性能も、A6 e-tronにおいて感心した点。軽くアクセルペダルを踏むだけで力強く加速するトルク感と、車体の姿勢保持をするサスペンションシステムのおかげで、痛快、というかんじでカーブを抜けていける。
堅調な市場に対応 改良重ねて“操縦をたのしむクルマ”へ
車名にあるe-tronは、アウディが自社のBEVにつけたサブネーム。エンジン主体のマイルドハイブリッド車のセールスにも力を入れているアウディジャパンだけれど、BEVも出来の良さが光る。A6 e-tronも例外ではない。
欧州でもいっとき下火になるかと思われたBEVだが、世界的には市場は堅調という。
ロールス・ロイスのBEV「スペクター」は販売好調と、先日来日した本社のクリス・ブラウンリッジCEOは言っていたし、つい最近フェラーリが「量産前提」というBEVのシャシーとコンポーネンツを公開した。そういう時代なのだ。
アウディのA6に乗って感じられるのは、着実な進化ぶりだった。2019年発売の、その名も「e-tron」いらい、改良を重ねてきた結果、スムーズで、かつ操縦がたのしめるクルマになっている。
私が乗ったのは、A6スポーツバックe-tronパフォーマンス。クーペのように後方まで流れる流麗なシルエットが、スポーツバックの特徴だ。
アウディではステーションワゴンを意味するアバントはルーフの前後長が長めで、じっさい荷室容量は、後席を畳んだ際はスポーツバックより112リッター大きな1442リッターとなるなど、メリットもある。
スタイルからいえば、個人的にはスタイリッシュなスポーツバックのほうがより好みだ。セダンでもSUVでもないBEVとして、クーペ的なデザインがいい雰囲気のA6スポーツバックには存在感がある。
斬新な機能 大容量バッテリーも収める巧みなデザイン
アウディでうまいなと思うのは、室内の作りの質感の高さとともに、斬新な機能を採り入れる点。A6 e-tronでは、乗員を包み込むような「ソフトラップ」デザインとともに「MMIパノラマディスプレイ」が目をひく。
MMIパノラマディスプレイは、曲面デザインとOLED(有機発光ダイオード)技術を備えた11.9インチのAudiバーチャルコックピットと14.5インチのMMIタッチディスプレイで構成。スマートフォンの画面を操作するようなたのしさがある。
アウディとポルシェの共同開発による高性能BEV用車台を採用。最大で846kmの一充電走行距離を実現する100kWhの大容量バッテリーを床下に収める。
ボディーが厚く見えてしまうのを回避すべく、アウディのデザイナーは努力している。ヘッドランプやグリルまわり、加えて車体側面のキャラクターラインと、さまざまなデザイン処理をほどこしているのだ。
じっさいの全高も1470mmに抑えられている。床下のバッテリーの存在を意識するのは、後席シートに座ったとき。膝の曲がりかたで、床面がやや高いと感じるかもしれない。それぐらいだ。
ラインアップはスポーツバックが、280kWの最高出力と565Nmの最大トルクをもつ「A6スポーツバックe-tronパフォーマンス」(981万円)と、405kWと580Nmの「S6スポーツバックe-tron」(1440万円)。
荷室容量が大きめになるアバントが、「A6アバントe-tronパフォーマンス」(1012万円)と「S6アバントe-tron」(1471万円)。出力とトルクはスポーツバックに準じる。
【スペックス】
Audi A6 Sportback e-tron Performance
全長×全幅×全高:4930×1925×1495mm
車重:2220kg
ホイールベース:2950mm
電気モーター
駆動用バッテリー容量:100kWh
最高出力:280kW
最大トルク:565Nm
変速機:1速固定式
後輪駆動
一充電走行距離:769km(レンジプラスパッケージでは846km)
乗車定員:5名
価格:981万円〜
写真:アウディジャパン


















