「本社移転をきっかけに、できるだけ多くの社員に会社に来てほしい」。KDDIの最勝寺奈苗・最高財務責任者(CFO)は今後の働き方についてこう語る。

 同社は2025年4月から順次、東京・飯田橋から東京・高輪へと本社移転を進めてきた。出社義務は設けていないが、ほとんどの社員が出社して仕事をする見込みだという。「社内外の人々が日々集い、つながりを強化することでイノベーションが生まれる――新本社はそんな場所にしたい」と最勝寺CFOは意気込む。

 大企業を中心に、出社回帰の動きが加速している。パーソル総合研究所が25年8月に発表した「第十回・テレワークに関する調査」によると、従業員数1万人以上の企業の在宅勤務実施率は22年2月の46.9%をピークに減少し、25年7月は34.6%だった。「昨年から在宅勤務の頻度が減った」と回答した人は35.8%に上る。

 出社回帰の動きに合わせて目立ってきたのが、本社の移転やリノベーションだ。新型コロナウイルス禍では固定費を削減するためにオフィスを縮小する動きもあったが、足元ではKDDIを筆頭にオフィスへの投資に踏み切り、社員に出社を促す企業が相次いでいる。

出社はKDDI版ジョブ型の最終段階

 KDDIが出社回帰する背景には、20年に導入し始めたジョブ型人事制度がある。狙いは「専門能力」と「人間力」を兼ね備えた人材の育成にある。この新制度を浸透させるため、3段階に分けて取り組んできた。

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