日本を代表するIT(情報技術)企業として、官民の情報システムを支える富士通。祖業の通信機器からコンピューター、システム開発へと事業の軸足を移してきた。そして人工知能(AI)が台頭する今、90年の歴史で3度目の大変革期を迎えた。2019年に就任した時田隆仁社長の下、事業構造と人事制度にメスを入れた。「目指す方向性は定まった」と語る時田社長が見据えるのは、日本のAIリーダーだ。富士通の変革の成否は、日本のIT競争力そのものを左右する。今が正念場だ。(写真=ロイター)
シリーズ
未完の富士通、時田改革の実相
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9回
第9回
富士通、メインフレーム終了で乗り越える「2025年の崖」 日本のDX加速へ
日本をITで支えてきた富士通だが、その変革の遅れが日本のDX停滞を招いた面がある。創立100年を迎える2035年、長く屋台骨だったメインフレーム事業を保守を含めて終了する。業態変化を成し遂げ、AIや量子コンピューターで世界をリードする存在になるか。
第8回
富士通、成果主義の失敗から得た3つの教訓 平松CHRO「制度の肝は一貫性」
富士通は1990年代から、成果主義や目標管理評価制度などの人事施策を導入してきた。日本の大企業として先駆的に取り組んできたからこそ、現在に生かせる教訓もある。富士通の平松浩樹CHRO(最高人事責任者)に聞いた。
第7回
富士通、業態転換支える平均58歳のエンジニア集団 定年後に給与アップも
ITサービス事業を軸とした富士通の業態変化を支えているのが人事制度改革だ。20代で部長級になったり、定年後に給与がアップしたりする例もある。経営戦略と人事戦略を連動させ、変化のスピードをさらに上げる考えだ。
第6回
富士通、マイクロソフト出身副社長に託す脱「売り切り」 継続課金率8割へ
ソニーや日本マイクロソフトを経て2021年に富士通に入社し、同社の事業ブランド「Uvance(ユーバンス)」をけん引する高橋美波副社長。海外売上高比率5割を目指すが、グローバルを見据えた商材開発や体制づくりに危機感を抱く。
第5回
富士通、「人月商売」からコンサル強化へ 立ちはだかるアクセンチュア
AIの普及でITベンダーの必要性が薄れる中、富士通は労働集約型だった従来型SI(システムインテグレーション)からの脱却を目指す。コンサルティング機能を強化し、課題解決力で顧客との結び付きを強める狙いだが、アクセンチュアなど新たなライバルが立ちはだかる。
第4回
「富士通が要らなくなってもいい」 時田社長が語るSIモデル脱却の覚悟
従来型システムインテグレーション(SI)モデルからの脱却を進める富士通。非主力事業のカーブアウト(分離・独立)を進め、事業ポートフォリオが大きく変わりつつある。富士通はどこへ向かっているのか。時田隆仁社長に聞いた。
第3回
富士通の改革は「選択と集中」にあらず 富岳に見るソニー・日立との違い
「単純な『選択と集中』ではない」。時田隆仁社長の下で構造改革を進める富士通について、専門家はこう評価する。業態が変化しても技術を軸とした経営は不変。量子コンピューターやCPU(中央演算処理装置)設計といったコアを残したからこそ、エヌビディアとの提携も実現した。
第2回
「富士通はこのままではダメになる」 時田社長がメインフレーム依存に抱いた危機感
「富士通はこのままじゃダメになる」。時田隆仁社長は2019年に社長に就任した頃、集った国内外の幹部を前にそう檄(げき)を飛ばしたという。官公庁や大企業を顧客とした事業基盤に慢心していないか。こうした危機感が富士通の大改革の原点となった。
第1回
[新連載]富士通、エヌビディアと電撃提携 密会したファン氏と描くAIの未来
10月に米エヌビディアとの電撃的な提携を発表した富士通。発表の半年前、時田隆仁社長はジェンスン・ファンCEOと極秘に会談。協業内容をホワイトボードに書き込み、ウィスキーを酌み交わした。社長就任から7年。時田改革の全貌が見えてきた。
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