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「ハイキュー!!」TCG、セカンドシリーズ 「ハイキュー!! バボカ!! BREAK」シリーズ。(C)古舘春一/集英社 (C)古舘春一/集英社・「ハイキュー!!」製作委員会 (C) TOMY
コロナ禍で急成長した市場、近年は1回に100万円使うインバウンド客も
2025年9月に開催された「探偵サミット2025」にて『名探偵コナン』のTCGを楽しむ女性プレイヤーたち。
こう語るのは、全国に26店舗を展開するトレカ専門チェーン店・MINT(ミント)の冨永仁さん。同店では野球やサッカー、バスケットボールの選手カードを中心としたトレーディングカード(以下トレカ)と、アニメやゲームのキャラクターを描いたトレーディングカードゲーム(以下TCG)の2つを柱に販売しているが、いずれも需要が拡大しているという。中でも近年の特徴は、TCGを楽しむ「女性」「親子連れ」「インバウンド」の増加だ。
「コロナ禍以前は、女性のお客様はまったくと言っていいほど来店されませんでしたが、最近は非常に多くなっていると実感しています。土日にはお子様向けの大会を店舗にて開催しているのですが、親子連れでごった返すことも。日本のIPの世界的な人気を背景に、インバウンド客も増えており、1回で100万円近く買って帰られる方もいます」(冨永さん)
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清潔感あふれるMINT池袋店
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対戦を楽しむスペースもカフェのような雰囲気。MINT池袋店
女性人気を背景に再登場する“バボカ” 復活告知の投稿に120万再生の反響
「HV-D01 ハイキュー!! バボカ!! BREAK スターターデッキ 烏野高校」(2025年10月25日発売)
バボカのファーストシリーズは、『ハイキュー!!』がアニメ化された2014年に発売された。当時、TCGの主な購買層は男性で、「女性客に買われてヒットとなったのは異例のことだった」と、発売元のタカラトミー・白鳥男也さんは振り返る。
ファーストシリーズはアニメ「ハイキュー!!」第3期終了後に終売(2017年)となったが、今回は以前から女性にも人気の高かったバボカを、市場の盛り上がりに応える形で再発売することになった。また、『ハイキュー!!』の世界的人気も背景にある。昨年公開された『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』は日本で115億円、全世界で200億円を突破する興行収入を記録した。「女性を含むTCGユーザー増加や市場の盛り上がりを受け、再びバボカを届けられるのは非常にうれしい」と白鳥さんは話す。
注目度の高さは、公式SNSでも現れている。今年3月、バボカ公式Xで『ハイキュー!!バボカ!!BREAK』10月発売の告知が投稿されると、再生回数は120万回を超え、「え!私たちのバボカがっ??」「待ってました!」「絶対買う!」「懐かしすぎてむせび泣いてる…」など発売を待ちわびるコメントが相次いだ。
120万回表示を超える反響があったリブート(再始動)を知らせる投稿。(ハイキュー!!バボカ!!BREAK公式Xより)
従来のTCGは、手持ちのカードを使った対戦が中心で、カードバトルが主な楽しみ方となっている。一方で、バボカの最大の特徴は、カードを通じてバレーボールを再現した遊びが体験できることだ。自分だけのチームを編成し、キャラクターたちと一緒にコートに立ち、実際の試合のような臨場感を味わいながら対戦できる。カードを並べて戦うのではなく、スポーツの躍動感まで感じられるゲームシステムは、従来のTCGにはない新しい魅力となっている。
「基本的なベースはバレーボールのルールと同じなので、このルールの明快さもTCGビギナーの女性ユーザーに受け入れられたのではないでしょうか」(白鳥さん)
“推し活”とコレクションの融合、TCGが「新しい趣味文化」に
白鳥さんは、TCGの魅力についてこう語る。「TCGにはコレクションの楽しみもありますが、やはりカードで遊ぶことが一番の楽しみです。実際に対戦相手と向き合い、大会でさまざまな人と交流できる。共通の趣味を持った仲間とつながれることも、リアルならではの楽しさです」
「ハイキュー!! バボカ!! BREAK」シリーズ、キャラクターカード
「ハイキュー!! バボカ!! BREAK」シリーズ、名場面カード
古舘春一氏オリジナル描き下ろしイラスト
「弊社のビジョン『Everybody Needs a Hobby』の通り、TCGやトレカは趣味です。人気カードには高額なものもありますが、根本には『デザインがかっこいい』『自分のカードの選手が活躍してうれしい』『このカードで遊ぶのが楽しい』といった純粋な楽しみがあります。その楽しさを伝え、『いい趣味だね』と感じてもらえるよう、店作りにも力を入れています」(冨永さん)
近年、人気カードの買い占めも問題となっているが、冨永さんによると、「人気作は抽選販売を行ったり、ボックス売りではなくパック単位での販売に制限を設けるなど、購入しやすい工夫をしています」とのこと。
バボカの復活は、女性をはじめ世界中のユーザー層のさらなる拡大にもつながると期待される。今後も市場の動向から目が離せない。
(取材・文/河上いつ子)