たとえ大切な人がいなくなっても 喪失と回復で揺れる先に見る景色は

有料記事ダイバーシティ・共生

臨床心理士・みたらし加奈=寄稿
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Re:Ron連載「みたらし加奈の 味方でありたい」第8回

 【4年前に家族が亡くなりました。ささいなことで思い出してしまいナーバスになります。時間をかけて乗り越えていくものだと思いますが……。落ち込んだ時の対処法が知りたいです。この4年間、加奈さんが発信するメッセージにたくさん助けられてきました。また一つ生きるための手がかりのようなものを教えていただけるとうれしいです】(相談者・くも)

 大切なことを打ち明けてくださり、ありがとうございます。最初に少しだけ、くもさんからいただいた言葉から連想したことを書き留めさせてください。

 先日、東京・竹芝の対話の森という場所で行われている「ダイアログ・ウィズ・タイム」というアクティビティーに参加しました。75歳以上の案内人の方とともに、老いをさまざまに体感することを通じて、限りある命や生き方、時間について対話するソーシャルエンターテインメントです。

 アクティビティーは90分で、初対面の人を合わせた数人のグループでさまざまな体験をしていきます。私がその中で一番深く感じたのは「別れへの感情」でした。

【みたらし加奈さんへの相談はこちらから】

「味方でありたい」は、読者の皆様からの悩みやメッセージに答えるかたちでみたらしさんが考えます。6月は性的マイノリティーの権利を祝う「プライド月間」。LGBTQ+の当事者、支援者の方からもお待ちしています。 (相談は記事で紹介する場合があります)

 どのような内容なのかは、体験をしてみてほしいこともあり、割愛をさせてもらいます。機会があれば足を運んでみてください。

 その時わき起こった自分自身の動揺に、私は強く揺さぶられました。なぜなら、私はその別れに「死」を連想したからです。その上、私はそれを誰かにシェアすることができませんでした。これまでの人生の中で、自身が見送ってきた「死」があまりに鮮明に呼び起こされ、言葉にすることができなかったのです。

 しかし、それは私がその「死」をいまだに受け止められていないからなのかもしれません。いや、受け止めなければならないのかどうかもわからなかった。受け止めてしまったら、その人との関係を手放さなければならないような気持ちになったのです。そんなことはないとわかっていたはずなのに。

 くもさんは、そのご家族の方を想うとき、なにを連想するでしょうか。笑った顔、怒った顔、よくやる癖、話していた言葉……。それらの多くは、生前のその方かもしれない。あるいは、最後のお別れの瞬間かもしれません。

 私はいつも「できなかったこ…

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    中川文如
    (朝日新聞スポーツ部次長)
    2024年5月20日17時0分 投稿
    【視点】

    私の父と祖母が亡くなったのは、もう10年以上も前のことです。かなり早い段階で、その死と折り合いをつけることができたのではないかと思っています。それでも、2人とも、たまに夢に出てきます。夢なので、その舞台設定は、「なかった時間」であることがほ

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