自由な帽子を愛した坂本龍一さん 政治的スタイリストとは対極だった

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連載コラム「by-line」 鈴木正文

 4月下旬の某日、自民党副総裁の麻生太郎氏は、ニューヨークのトランプ・タワー前に横付けした黒塗りのワンボックス車から降り立つと、黒いボルサリーノ帽を、例によっていくぶん右に傾け、憮然(ぶぜん)たる面持ちで報道陣を睨(ね)めまわした。その直後、ガラス張りの入り口ドア越しにトランプ前米大統領を認めると、一転、破顔して脱帽し、(屋内で客人を出迎えるのだから当然ながら無帽の)前大統領と握手した。

 トランプ氏もまた、帽子の人である。2016年の最初の大統領選挙戦以来、支持者の前に登場するときは、「MAGA」または「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」というスローガンを記章に張りつけた赤い野球帽を、決まって着用してきたからだ。

 現代の政治家ファッションにとって帽子は不要だ。そうであればこそ、日米きっての政治的スタイリストのふたりは、帽子に多くを語らせてきた。

ワークキャップなのにエレガント。その理由は…

 昨年3月28日に他界した坂…

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