先生の声「聞こえた」 難聴児向けの補聴機器が進化中、高額化が課題

有料記事

伊藤未来 板倉大地
[PR]

 難聴の児童・生徒らが使う補聴器などの聞こえを助ける補聴機器が進化している。ただ、性能が高い機器は高額化しており、障害者手帳の有無によって国の補助を受けられるかや、居住自治体に貸出制度があるかどうかで、学びの質が左右されているのが現状だ。

 1月、福岡市西区の今宿小学校1年生の教室で先生が問いかけた。「お正月のななくさがゆ、知らない人」。増田絆杏(はんな)さん(7)が控えめに手を上げる。「草を食べます」と聞き、「えー」と声を上げた。

 増田さんは、できるだけ近くで話してもらわないと聞こえない中等度難聴。授業中、自分の耳には受信機、担任の柚木麻里教諭(42)の胸元には増田さんのもとへ声を届けるワイヤレスマイクが着けられていた。耳元に届いた音を大きくする補聴器と比べ、発言者の声をクリアに届けることができる。

 増田さんは0歳の時から入学前までは補聴器を使っていた。本格的な勉強が始まる小学校入学を機にこの機器を使用し始めた。

 使っているのはソノヴァ社(スイス)製のデジタル補聴援助システム「ロジャー」で、受信機とマイクを1台ずつそろえると25万円ほどになる。重度などで対象となる障害者手帳がない増田さんは購入補助の対象外だ。

 そのため市教育委員会の貸出制度を利用している。マイクは市教委の貸出品で、受信機は市教委が用意していない耳に着けるタイプを自費で購入した。出費はゼロではないが「ありがたい」と母の結香さん(43)は言う。

貸出制度、地域に格差 「何年も援助ない」嘆きも

 使用しないと言葉の聞き取りができないこともあり、柚木教諭は「授業を理解するために大切な道具」と指摘する。

 同小4年の高塩奏斗さん(9…

この記事は有料記事です。残り1019文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません