伊豆半島沖地震から50年 最後の慰霊祭 「継承していかねば」

南島信也
[PR]

 静岡県南伊豆町内で30人が死亡した伊豆半島沖地震からちょうど50年を迎えた9日、大きな被害に見舞われた同町中木地区で慰霊祭が行われた。半世紀を節目に今回が最後の集いとなったが、遺族ら参列した約100人の関係者は災害の教訓を後世に伝えていくことを誓い合った。

 同地区では、半島沖を震源とする地震で大規模な土砂災害が発生。幅60メートル、高さ数十メートルにわたって裏山が崩れ、27人が犠牲になった。当時を知る人も少なくなった。

 慰霊祭では参列者の黙禱(もくとう)に続き、遺族を代表して父子を同時に失った萩原作之さん(79)があいさつに立った。郵便局に勤めていた萩原さんは山が崩壊するのを目撃した。息子清之さん(当時2)と父清次さん(同59)の安否がわからなかったが、消防団員として自衛隊の救助活動を懸命にサポートした。

 2人が見つかったとき、清之さんは清次さんに抱かれた状態だったという。「泣きながら息子にほおずりしていた妻の姿は一生忘れることはできない」と振り返った。妻の洋子さん(79)は「(息子は)義父とお使いに出かけて歩いているときだったの」と思い出すのは今もつらそうだった。

 慰霊祭は五十回忌となる昨年まで自治会主催で続けてきたが、遺族が高齢化していることから終了することになった。

 萩原さんは「50年もの長きにわたり遺族に寄り添っていただき、言葉では言い尽くせない感謝の気持ちでいっぱいだ」と話す。

 岡部克仁町長は「災害(当時)を知る人も数少なくなった。若い人たちに継承していかなければならない」と語った。(南島信也)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません