痩せサンマ 丸々干物
館長・若月元樹
海はエラい 廃校水族館通信
4月に入ってきた新人学芸員が「漁港に落ちていました」と未成魚のサンマを拾ってきた。高知でサンマは珍しいと思ったのかも知れない。私自身もかつては、高知でサンマというイメージは無かった。
室戸の定置網ではサンマがたまにとれる。しかし、脂がのっていない場合が多い上、他の魚種が目立っていることもあり、注目されていない。
2003年に室戸で調査していた頃、毎朝定置網漁に同行し、網持ちと呼ばれる漁獲作業や帰港してからの選別作業を手伝っていた。ある日、サンマが多くとれた日のことをよく覚えている。高知でサンマがとれたということ以上に、セリ値の安さに驚愕(きょうがく)したからだ。
漁師さんたちは「痩せたサンマには痩せたサンマなりの食い方がある」と価格の安さに怒り、自分たちでサンマを多く買い取っていた。
翌日、漁港周辺の各家でサンマが干されていた。痩せたサンマのおいしい食べ方は干物のようだ。サンマは胃が無いのでワタもおいしく食べられる。したがって、焼くときも開きにしたりせず、まるまる塩焼きにする。そのイメージがあって開いて干物にされている光景に驚いた。
残念ながら当時はサンマの干物を食べなかった。今度はぜひ食べたいところだが、20年の月日がサンマを高級魚に変身させてしまっていた。(館長・若月元樹)