ハダカ姿まぬがれて
館長・若月元樹
海はエラい 廃校水族館通信
ハダカイワシをご存じだろうか。魚は当然服を着ないし、裸が普通だ。魚の体はウロコに覆われている場合が多い。ハダカイワシは水揚げされる時にはほとんどのウロコが落ちていることから“ハダカ”とされている。
“ハダカ”というネーミングに衝撃を受ける人も居るかも知れない。実は“ハダカ”と名の付く海の生物は割と存在する。ハダカハオコゼやハダカオオカミウオ、ハダカホテイエソなどの他、妖精のような姿で一時期人気のあった「クリオネ」も本当の名前はハダカカメガイという名前である。
先週、学芸員が三津漁港で定置網の水揚げ時の選別で捨てられていたヒカリボヤの仲間の中に何か入っていることに気付いた。学芸員が中身を確認するとハダカイワシの仲間のヒロハダカが出てきた。なんと、ウロコがしっかりと付いている状態だ。ヒカリボヤがヒロハダカを優しく包んでウロコの剝離(はくり)を阻止したようだ。ハダカではないハダカイワシは初めて見た。
ハダカイワシが生息するのは深い場所で、本来の生息場所ではこのような姿で泳いでいるのかと思いをはせることができた。
それにしても、学芸員は漁港でヒカリボヤによく注意を払ったものだと感心する。ボヤッとしていたらこの発見は無かったであろう。(館長・若月元樹)