新たな「指示権」、国と地方が「上下関係」に逆戻り 片山善博氏

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聞き手・千葉卓朗
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 国の自治体に対する権限を強化する地方自治法改正案が4月にも国会で審議入りする。大規模な感染症や大災害などで想定外の事態が起きた時に、国が具体的な対応を自治体に指示できるようにする規定の新設が柱だ。地方分権改革が実現した2000年前後に鳥取県知事を務め、「改革派」と呼ばれた片山善博・大正大特任教授は「時代が逆戻りする」と懸念を示す。

 ――新たな「指示」は必要だと考えますか?

 何か困ったことを解決するために新たな指示が必要となるはずだが、現行制度で困ることがあるのかが分からない。

 ――新たな指示の新設を提言した「地方制度調査会」(地制調)は、コロナ禍で起きたダイヤモンド・プリンセス号の集団感染の時、既存の法律が想定しない事態が起きて自治体が混乱したと指摘しました。

 現場が混乱したのは、国に指示権がなかったからではないと思います。国は法的根拠がないまま、患者の受け入れについて近隣自治体との調整に乗り出しましたが、協力を拒んだ自治体はなかったはずです。

 ――国の指示は現在、災害対策基本法や感染症法といった個別の法律で規定されていますが、行使されるのはまれで、「抜かずの宝刀」と呼ばれています。

 11年の福島原発事故の時、私は総務相でした。原子炉への放水のため、当時の石原慎太郎都知事東京消防庁の出動を要請しました。法的根拠のない要請でしたが、石原知事は引き受けてくれました。東京消防庁は、被曝(ひばく)のリスクを十分に勘案した上で出動を判断しました。そうしたリスク判断は、国側にはできなかったと思います。国の指示で強権的に出動させていたら、リスクを判断する余地はなかったでしょう。

 大事なのは、国と自治体が腹…

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