【特別企画】
植松伸夫氏が「FF3」のBGMの秘密を明かした「ff ~植松が音楽のことを語りたがってるんですけどよろしかったでしょうか?(仮) vol.2」イベントレポート
FCでは4音しか鳴らないはずが、何故か鳴らせてしまった5音目のキックドラムの謎に迫る
2025年9月10日 19:00
- 【「ff〜植松が音楽のことを語りたがってるんですけど、よろしかったでしょうか?(仮)〜」Vol.2】
- 日時:9月6日20時
- 料金:YouTube(Peatix経由)1,500円
スクウェア(現スクウェア・エニックス)より1990年4月27日にファミリーコンピュータ(以下、「ファミコン」)にて発売されたRPG「ファイナルファンタジーIII」(以下「FF3」)の音楽について、作曲家の植松伸夫氏が語るイベント「ff(フォルテッシモ) ~植松が音楽のことを語りたがってるんですけどよろしかったでしょうか?(仮) vol.2」が、2025年9月6日、自由が丘hyphenで開催された。
現地のチケットは発売開始から20秒と経たずに完売。今回はYouTubeで有料配信が行なわれたので、その模様をお届けしよう。なお、アーカイブ配信チケットは1,500円でPeatixにて購入可能だ。
□「ff〜植松が音楽のことを語りたがってるんですけど、よろしかったでしょうか?(仮)〜」Vol.2のページ
司会進行には前回(vol.1)同様、声優の戸塚利絵さんを迎え、ファンにとって大変に貴重なトークを聞くことができた。
ファミコンでは音を最大同時に「4音」鳴らすことが可能である、ということを知っている人も多いと思う。その「4音」の内訳は「矩形波×2」、「三角波×1」、「ホワイトノイズ×1」となっているのだが、「FF3」では偶発的に発見してしまった「5音目の音」をかなり駆使して作られている、という驚きの秘話も明かされているので、ぜひレポートに目を通してもらえれば幸いだ。
「中村君」なるサウンドプログラマーの出現によって大きく変わった「FF3」の音楽
まず「FF3」の音楽が「FF1」~「FF2」と大きく変わった点は、「中村君(中村博史氏)というサウンドプログラマーがついてくれたこと」だと植松氏は語った。
「FF3」のプログラムといえば、ナーシャ・ジベリ氏が有名だが、植松氏は英語が話せないことや、ナーシャ氏はあまり音楽方面には興味がなかったことなどもあって、植松氏の「こういうことがやりたい」という要望を伝えにくかったのだそう。
そこへ中村氏がついてくれたことで、「FF3」では大きくプログラムに手を入れることができたのだ。なので、「FF3」では音に細かい表情をつけることに成功し、ビブラートも「FF1」や「FF2」に比べてスムーズにかけられ、自由な音楽表現が広がっていったという。
なお、当時「FF3」はオリジナルサウンドトラックが発売されず、1990年に「悠久の風伝説」というアレンジアルバムを先に発売したのだが、それについては当時のスクウェアの社長だった宮本雅史氏が「他社との差別化をしたい」ということでオリジナルサウンドトラックを出さないという決断をしたためだったという。だが、ファンから「オリジナルの音が聞きたい」という声が多く届いたため、1991年にオリジナルサウンドトラックを出すことになったという経緯があったそうだ。
結果的にこのあとスーパーファミコンが出てハードが変わったため、「FF3」はPSG音源(※)最後の作品となったわけだが、「不自由だったけれど妙に魅力があった」と振り返った。
※PSG音源: 矩形波2系統、三角波1系統、ノイズ1系統の音を発生できる音源チップで、1980年代のゲームやPCなどに広く使われた
オープニングテーマ(メインテーマ)
ここからは、実際に当時の音を聞きながら植松氏の解説が挟まれているので、ぜひ曲をかけながら読んでほしい。
まずはおなじみの「オープニングテーマ」だが、当時植松氏は「FF」がシリーズ化されると思っていなかったという。だが、「FF1」と「FF2」がヒットして続けて「FF3」を作るということになり、この時にようやく「FF」がシリーズ化されるかもしれないと考えたのだそうだ。そこで「FF」の象徴的な音楽の顔として選んだのが「プレリュード」と「オープニングテーマ」だった。
「オープニングテーマ」を会場に流しながら、植松氏は「中村君と作ったビブラートのかかりがすごく綺麗」と、満足げに語った。会場では、4つのトラックのうちのトラック1だけを流してビブラートがより一層際立つように聞かせてもらえるという大サービスも。
ちなみにこの「オープニングテーマ」はシリーズごとにアレンジが違うのだが、それはわざと変えていた部分もあれば、どういうアレンジが合うのかをもがいていたのもあった、と植松氏は語った。
「特に中間部のメロディも動いている」と植松氏は述べつつ、話は植松氏が高校生のころの思い出話へ。植松氏が高校生の時に、作った曲を友人に聞いてもらったところ「伴奏がメロディを邪魔している」と指摘されたことがあったという。なかなか辛辣な指摘だが、植松氏は「今思えばそうだったんだろうなと思う」としみじみとしていた。
「でも」と植松氏は前置きし、「僕は美しいメロディが同時に2音鳴っている音楽が存在してもいいんじゃないかと思っている」と語った。
バッハの音楽などを例に挙げ、彼はどちらが主旋律なのかわからないような曲を作っている、と植松氏。「そこから意外と誰も発展させていない」と述べ、2音が美しい音楽ができたら次は3音の可能性もあるのではないか、3音の全く違う美しいメロディーが絡み合ってより美しい音楽を作る可能性があるのではないか、と熱い語りを聞かせてくれた。
ちなみに会場では、「オープニングテーマ」の主旋律を抜いたらどういう音が鳴っているのか、なども併せて紹介された。さらには植松氏がピアノで「これを半音あげたらどういう風に聞こえるのか」などの例も実際に弾いてくれた。
ダンジョン
植松氏いわく「これも中村氏の功績が大きい曲だった」という、「ダンジョン」。
とにかく不気味さを前面に出した曲だが、実はかなりこだわりがあって、特に和音のマイナーコードを多用することでプレーヤーの不気味感をあおるような曲にし、4音という有限な中でマイナーなコードでその有限さを補ったそうだ。
ファミコンのころは音色になかなか表情をつけにくかったものの、曲調で色んな表情をつけたという。
闇のクリスタル
続いて「闇のクリスタル」。特に13小節目からのトラック2を聞いてほしい、ということで、会場ではトラック2のみが流れた。これは拳というわけではないが、音楽に癖をつけられるという。オリジナルサウンドトラックではわかりにくいとおもうので、これはぜひ配信で聞いてほしい部分だ。
なおこれも中村氏がついてくれて、こういった癖の表現もできるようになったのだそうだ。
ちなみにこの「闇のクリスタル」というのはラストダンジョンの曲だが、このラストダンジョンが極悪すぎるので有名なのは「FF」ファンならば周知のことだろう。
このラストダンジョンが極悪になったのには、当時50~100人いたデバッガーのひとりである鈴木氏という人物が、「FF」の産みの親である坂口博信氏に「ラストダンジョン楽勝ですよ!」と話したことから坂口氏が激怒してセーブポイントを全部抜いたという、衝撃の秘話が明かされた。
なお、そのデバッガーの鈴木氏は、現在スクエニの「FF14」にて企画の仕事をしているそうだ。なるほどできる男は違う、ということだろうか。
海底神殿
「海底神殿」も音色だけではなく特徴でなんとか独特の表情をつけようとした曲のひとつだったと、植松氏は述べた。
トラック1を抜いた音が会場で流されたが、不安を募るにはやはり和音で、メロディを抜くと意外と面倒くさい音の選び方をしているのだそうだ。
「海底神殿」は不安感も募らせつつ、先ほどのずっと不気味感が続く「ダンジョン」とは違い、神秘さも入ってくるようにしているとのこと。それはマイナーコードのあとにメジャーコードがくるというのもあるのではないかという。
植松氏は「電子音3つでもそういうのを考えながら作り表情をつけることができたから、ファミコンの時代が終わってしまったのはちょっと残念だった」と語り、「FF4」のスーパーファミコンで表現の幅こそ広がったものの、PSG音源でどこまでいけたかをもう少しやってみたかったそうだ。
悠久の風
もはや今更語るまでもない「FF3」屈指の名曲「悠久の風」について、話は及んだ。
会場ではまずオリジナル音源が流れた。植松氏によれば「冒頭のエコーっぽい音が特に喜ばれた」という。このエコーは同じフレーズと音を小さくしてあとから鳴らすことで表現しているそうだ。
そしてトラック1とトラック2をステレオで左右に振り、メインメロディとエコーとなるディレイがかかった音を鳴らすという、音をリアルに聞けるイベントならではのサービスがあったのだが、これが震えるほど臨場感がすごく、筆者も鳥肌が立ってしまった。「悠久の風」が好きという人は、この部分のためだけでも配信を見てほしいレベルである。
このエコーっぽい表現についても、「やりたかったが、なかなかできなかった」という。できることが限られている中で色々試行錯誤をしながらこの手法で表現したとのことで、「今ならばエフェクトでエコーをかければ簡単にできてしまう」と、植松氏は試しにトラック1のメインメロディにエコーをかけてみせてくれた。
確かにほぼ同じなのだがでも何かが違う……、と感じていた筆者(と多分聞いていたファンの多く)だったが、MCの戸塚さんが「原曲のほうが音の粒が見えて美しい」と絶妙なコメントをしてくれ、筆者も思わず画面の前で拍手をしてしまった。
確かに現代ならば苦労せず表現できることは多いとは思うのだが、やはりファミコン時代だからこその苦労と工夫で作られた曲には、PSG音源だからこその良さがあると改めて感じた瞬間だった。
エンタープライズ海を行く
次は「エンタープライズ海を行く」。
イントロから始まり、メインメロディは不自然なところから入っているように見える不思議な曲と感じる時点で、「僕の術中にはまっています!」と嬉しそうに植松氏は笑った。いわゆる裏拍を取っている曲なので、イントロから手拍子をしてみるとわかりやすいだろう。実際植松氏も手拍子でこの曲の不思議な入り方について説明をしてくれた。
植松氏は「こんなあざといことをやっていた」と語っていたが、これぞ植松節とも言えるだろう。
オーエンの塔
「オーエンの塔」では、「ギミックというほどではないけれど、4拍子のトラックと5拍子のトラックをあわせている」と植松氏。これはミニマルミュージックの手法で植松氏が考案したものではないが、「オーエンの塔」ではこの技法を取り入れているのだそう。それによって、ちょっとふんわりとした音楽になるのだという。
ちなみに植松氏はピアノでこの4拍子と5拍子を再現しようとしたが、なかなかうまくいかず、「コンピュータってすげぇなぁ!」と会場を笑わせた。
ギサールの野菜
「FF3」からコミカルな曲も作るようになったという。それは40時間ほど遊ぶにあたってバリエーションを増やしたいと感じるようになったからとのことだ。
そこで「ギサールの野菜」がまずひとつめに取り上げられた。植松氏はこの曲の一部分の「トン」と音が上がる部分で、「これがあるのとないのとで間抜け感が違う」と称した。
こういったコミカルな曲についても、シリアスな曲の中にコミカルなものが入っていると比較対象としてお互いにお互いの曲の個性が浮かび上がるしゲーム全体のバランスもあった、と植松氏は述べた。ちなみに植松氏によれば「間抜けな曲は得意」とのことだが、確かに歴代の植松氏の楽曲を見ていくと納得だろう。
小人の村トーザス
次は「小人の村」。曲をかけながら植松氏は自信満々に「間抜けでしょう」と胸を張っていた。真ん中のパートは意外と普通だが、半音階っぽい伴奏をつけることで間抜け感を出したという。特に半音で小人のちまちました感じを出しているそうだ。
そして植松氏は「音楽は間違えていてもいいんですよ。伝えたいものが伝われば」と持論を語った。
チョコボのテーマ
次はおなじみの「チョコボのテーマ」。植松氏曰く「間抜けな曲の代表」ということだったが、戸塚さんが「でもチョコボは不変であってほしい」とこれまた絶妙な返しをしてくれた。「FF2」では短いメロディの繰り返しだったが、それでは少し足りないとおもってサビをつけたしたという。
「チョコボのテーマ」については「アレンジしやすい曲」と話し、実際、サンバやブラス、マンボなど様々なアレンジバージョンが登場している。
なおこの「チョコボのテーマ」は、三味線の吉田兄弟になんとかこの曲を演奏してもらおうと試みたことがあったそうだが、実現には至らなかったという。
このあと「しゃみおさんにやってもらうのはいかがですか?」という戸塚さんの案に「いいかも」と笑顔をのぞかせた植松氏。ちなみにしゃみおさんとは、狐面を被り演奏する正体不明の津軽三味線奏者で、YouTubeでゲーム音楽やアニメ音楽を中心としたカバー演奏動画をアップロードする奏者として演奏活動を行なっており、植松氏のアルバムにも参加している。
いつか「しゃみおdeチョコボ」が実現する日を楽しみに待ちたいところだ。
謎のキックドラム~ファンファーレ
ついに「4音までしかならない」と言われたファミコンの音源で謎の5音目を発見した話について、植松氏がその口を開いた。
ファミコンでは音を最大同時に「4音」鳴らすことが可能である、ということは前述の通りだ。改めて振り返ると、その「4音」の内訳は「矩形波×2」、「三角波×1」、「ホワイトノイズ×1」となっているのだが、「FF3」では偶発的に発見してしまった「5音目の音」が存在している。
これはPCM音源(サンプリング)用のトラックで、例えばどうしてもフルートの音色を使いたいという時に取り込んで鳴らすことができた”はず”だったのだが、誰もやらなかった。それはゲームの容量をかなり食ってしまうため、植松氏曰く「もしかしたらやっていたゲーム会社もあるかもしれないけれど、ほぼほぼ誰も使わなかったトラック」だという。
しかしある日、中村氏が「植松さん、なんか色々いじっていたら音が鳴るんですよ」と恐る恐る報告してきたのだそうだ。そこで実際に植松氏が確認をしたところ、何かキックドラムのような音が鳴っていたのだ。
植松氏は「FF」のバトル曲を作っていくなかで、もうひとつ先のドライブ感を持たせたかったとのことでドラムがほしいと思っていたのだが、当時のファミコンのリズミカルな音源はほとんどがホワイトノイズしか使っていなく、ハイハットとスネアみたいな音はどのメーカーも鳴らせてもキックドラムのようなアタッカーのある音を出せなかった。
植松氏は「中途半端なタッチだったらいらないなと思って、多分1も2もバトル曲にホワイトノイズは使っていなかったと思う」と当時の音源事情を振り返りつつ、「でも中村君が聞かせてくれた音がキックドラムみたいだった」と、「ファンファーレ」のリズムの音だけを会場に流したところ、実際それはキックドラムとハイハット、スネアの音に聞こえたのだった。
そこで植松氏は非常に興奮したのだが、肝心の中村氏は「プログラマーとして、この音がなぜ鳴っているのかがわからなくて怖い」と言い、植松氏は「でも鳴るんだから使おうよ」と中村氏を説得し、中村氏は「でもこれでバグが出たら怖い」となかなか首を縦に振らなかったそうだ。結局植松氏は、「だめだってバレたらやめよう」と半ば強引に中村氏をうなずかせたという。
ちなみに35年経った今でも「FF3」の音楽プログラムのせいでバグが出たという報告はないので、どうやらバグではないらしい。
なお植松氏は35年の間、なぜキックドラムが鳴っていたのかという気持ちが沸々とあったといい、中村氏に連絡を取ったが、中村氏は当時のことをさっぱり覚えていなかったという秘話も明かされた。「あれは宇宙人に記憶を消されてるね」と植松氏が腕を組むと、会場のファンは爆笑。筆者も思わず画面の前で笑ってしまった。
でも実際に鳴ってるということで、植松氏はスクエニの開発にいる矢島氏という植松氏の後輩に「このキックドラムはどうして鳴っているんだろう」と聞いてみたそうだ。
それに対して矢島氏からは「容量の関係でほとんど使われることはなかったけれど、実はファミコンにはふたつの矩形波と、三角波と、ホワイトノイズという合計4つのトラック以外にもPCM音源が使える5トラック目が用意されており、そこにキックドラムのサンプリングをしたのではないか」と返ってきたという。
しかし植松氏が「僕はその5つ目のトラックの存在を知らなかったし、仮に中村君が知っていたとしてもサンプリングしたなら彼になんの罪もないんですよ。バグを恐れる理由にならないわけです。だから、当時のプログラマーがバグを恐れてこのキックの音を鳴らしたがらなかったんだよ」と返したところ、再び矢島氏から「当時の技術者ではないので詳細はわかりかねるが、PCMチャンネルを使って何かしているのは事実です。取り込み波形のデータを使わずにあのような音を出せるとしたら、 PCMチャンネルのオンオフを利用したのではないかと推察できます。スピーカーにアンプを繋いで電源をいきなりオンオフした時にノイズが出るというのを経験したことがあると思いますが、あれではないかと思います」と返ってきたのだ。
植松氏としても絶対それだと言い切れはしない、とのことだが、おそらく矢島氏の推察があってるんじゃないかなと思っているとのことだ。ちなみにこの連絡は、開催日の数日前に届いたということで、ただの怪現象で終わる話になる可能性も高かったとのこと。
解決したとは言い切れない案件ではあるが、「ファンファーレ」を題材にして、まさかまさかのとても楽しい話を伺うことができた。
バトル1
その謎のキックドラムを使った「バトル1」が次に紹介された。
そして改めて植松氏がキックドラムだと思っていた部分だけの音を流したところ、筆者も確かにあのアンプがプツっと鳴る音に聞こえた。
「でもキック、スネア、ハイハットっぽくなって相当以前よりはマシになってると思う」と、植松氏も苦笑いを零した。
バトル2~最後の死闘
「バトル2」でもこのキックドラムは使われている。
「FF3」のバトル曲はキックドラムが入っているだけではなく、シンセドラムを使っているそうだ。「FF3」を作っている頃はすでにもう過去の楽器だったとのことだが、シンセドラムっぽい効果を狙って取り入れたという。
「最後の死闘」でも同様で、特に冒頭に矩形波でドゥンという下に下がる効果音をいれることでシンセドラムのような音色を狙って出しているそうだ。
「FF1」のころと同じ機材を使っていながら「FF1」のころとは全然レベルが違う音が出せていると思う、と神妙な面持ちで語った植松氏。中村氏がキックドラムを発見していれば、「FF1」でも「FF3」と同じ曲は鳴らせたはずだと植松氏は笑った。
そして植松氏は「最後の死闘」の冒頭4小節は「今聞いても分厚い」と、納得の出来栄えに満足げな表情を浮かべていた。
エンディング
植松氏は、「『エンディング』は初めて映画を意識した曲なので、ぜひ聴いてほしい」と語り、実際に「エンディング」を流した。
当時、坂口氏はもちろんのこと、周りでゲームを一緒に作っているチームに映画ファンがとても多く、映画に対する憧れがあったそうだ。そこで「映画みたいなゲームを作りたい」という思いがあったため、スタッフロールも長くなったのだという。
1曲では足りないので3つに分けて作られたという「エンディング」は、最初は静かめの音楽に導かれ、2つ目の曲で盛り上がりを見せ、ハリウッド映画のようなオーケストラのエンディングテーマをイメージして作られた。とはいえ4音しか出ないのでオーケストラに勝てるわけはないのだが、音数を増やして派手に派手にしようともがいてるのがよく分かる、と植松氏は当時を振り返った。その分メロディの展開を増やすことで対応しようとしたともいう。
最後の3つ目の曲は「無茶なフレーズが多いよね」と植松氏も当時を振り返って苦笑。
長いエンディングだったが、最後の曲は「プレリュード」から始まって「メインテーマ」で終わっているところからも、この先「FF」の音楽の顔はこの2曲でいきたいというのが現れていたと、植松氏は語った。
最後に「FF3」のBGMを振り返って
改めて最後に植松氏は、中村氏が入ってきてくれたことによって「FF3」の音楽で自分のアイディアを形にできるようになってきて、コミカルの音楽やギミックも様々なタイプの音楽が入った方がRPGは面白いと確信したあたりで、自分にとってのRPGのへの音楽の付け方の方向性が見えてきたきっかけになったのが「FF3」だったと振り返った。
植松氏は「実験とかチャレンジをしたほうが積極的に作品に関われる」とも述べ、やっていて楽しいと、ゲームと音楽の関わり方にも触れた。
なお、本稿では触れていないが、当日は「ドーガとウネの館」や「ノアのリュート」、「故郷の街ウル」、「4人組じいさんのテーマ」といった曲についても語られている。執筆現在は、本イベントのアーカイブ配信チケットが再販されているので、気になる方はぜひ見てみてほしい。
また、100円割引となるクーポンコードもご用意いただいた。購入時に下記のクーポンコードを入力すれば、1,400円で視聴できる。
※クーポンコード: GameWatch
そして次回のイベント「ff ~植松が音楽のことを語りたがってるんですけどよろしかったでしょうか?(仮) vol.3」では「FF4」について触れることを明かし、「FF4」でスーパーファミコンにハードが変わり、音源もサンプリングに変わって、よりリアルなことを目指すようになる話をするという。
だが、植松氏個人的にはファミコン時代のPSG音源はやっていて楽しく、PSG音源で4音しか出せなかったものを8音とか16音、100音も出せるバージョンのパソコンがもしもあったら面白いことになったのではないか、と思いを馳せた。
ちなみに、1万円以上の応援投げ銭をしたファンへのリターン動画なども別途あり、主にファンの質問に答えていく7分半ほどの内容となっているそうだ。こちらは詳細について触れるのは控えさせていただくので、気になる人はぜひvol.3などの際に投げ銭をしてみよう。
『ff ~植松が音楽のことを語りたがってるんですけど、よろしかったでしょうか?(仮)』vol.3 開催概要
開催日:2025年10月25日(土)
開場 19:00
開演/配信開始 20:00
・店内観覧チケット
5,500円+2ドリンクオーダー
・店内観覧チケット予約ページ
https://nobiyo-ff-3.peatix.com/view
※予約開始:2025年9月15日 19:00
・配信チケット
※アーカイブ視聴(1ヶ月)