先行レビュー
「ARC Raiders」先行レビュー。“気楽にやられる”期待の脱出系シューター
製品版相当を体験。“負け続け”でもプレイできるシステムが良い
2025年10月30日 00:00
- 【ARC Raiders】
- 10月30日 発売予定
- 価格 Standard Edition:6,000円
- Deluxe Edition:9,000円
ネクソンは、スウェーデン・ストックホルムに拠点を置くEmbark Studiosが開発する、プレイステーション 5/Xbox Series X|S/PC(Steam)用のサード・パーソンシューティング「ARC Raiders」を10月30日に配信する。価格はStandard Editionが6,000円、Deluxe Editionが9,000円。
「ARC Raiders」は、謎の機械「ARC」の脅威に晒された世界を舞台とした三人称視点の脱出系シューター(エクストラクションシューター)。先日、10月17日に実施されたリリース直前最終テスト「サーバースラム」では、Steamの最大同時接続者数約20万人を記録し、Steamのグローバル売上ランキングでは3位、そしてウィッシュリスト登録数では4位を記録していることでも話題となった。
今回は、ゲームの配信直前に実施されたメディアプレビューにて、製品版相当の内容でゲームをPC版で試遊させていただく機会を得られた。本稿では、実際のゲームプレイを通して感じ得た、新たな脱出系シューターの感想をお届けしていきたい。
脱出系シューターの定石は踏襲しつつ、独自の“遊びやすさ”で差別化を図る!
「ARC Raiders」の世界は、突如出現した謎の機械「ARC」の脅威に晒された人類が、地下へと逃げ延びている近未来の世界だ。地上には大小さまざまな自立型殺戮マシンのARC(ドローンのような見た目をしているものが多い)が跋扈しており、人間を見つけ次第問答無用で排除しにやってくる。
ただ、そんな絶望的な世界であっても、人々が地下で慎ましく暮らす中、地上に残った物資と一攫千金の夢、そして無法地帯のスリルを求めて外の世界に繰り出す「レイダー」と呼ばれた者たちがいた。プレーヤーはそんな1人のレイダーとして、荒廃した地上を探索しながら物資を集め、ときには他のレイダーたちと共闘してARCと戦い、ときにはレイダー同士で物資を奪い合う、苛烈な競争社会に身を投じていくことになる。
まずはソロプレイを通した上で、ゲームジャンルの前提と本作の所感について紹介しよう。
マッチメイキング前の流れそのものは、既存のエクストラクションシューターを踏襲していると言って良い。プレーヤーは出撃前に自分が所有している装備や消耗品をインベントリに収納し、地上に出撃していく。前回のマッチで地上から持ち帰ることができたアイテムをそのまま次のマッチへと持ち込める一方で、マッチ中に倒されてしまうと、持ち込んできた所有物は全てロストする。
エクストラクションシューターの前提として、回復アイテムはもちろん、武器といった装備品はほぼ全てが消失する対象、あるいは消耗品と言える代物だ。そうした制約下でプレーヤーは、広大なマップから物資を回収し、自分のタイミングで区切りを付けて脱出を目指すことになる。
「ARC Raiders」もゲームの基本は同じだ。箱庭型のオープンワールドマップに最大21人のプレーヤー(レイダー)たちが集結し、マップ内にあるさまざまな資源を回収しながら各々は脱出を目指す。
集めた資源を持ち帰れば、装備を整える軍資金、あるいはより強力な装備を開発するための素材にもなる。地下都市とは違って地上はほとんど無法地帯なので、敵でも味方でもない他プレーヤーを襲い、彼らが集めていたアイテムを奪うことだって可能だ。逆に襲われることもあるし、お互いがその場にただ居合わせて、平和に解散できる可能性もある。
しかし、脱出するためには指定のポイントで地下行きのエレベーターを起動する必要があり、エレベーターの起動音でフィールドを徘徊するARC、さらにはこちらの所有物を略奪しようと目論むプレーヤーまでもが集まってくる。これをどうにかして切り抜けなければならないのが大きなポイントである。
物資を回収できても生還できなければ日銭は稼げない。始めたばかりのプレーヤーがセオリーを掴むまでは、上手いプレーヤーにひたすら搾取され、地上で冴えない装備を頼りにコソコソ探索することが起こりがち。タイトルごとにさまざまな差別化が図られてはいるが、エクストラクションシューターはまさに“弱肉強食”を体現したかのようなゲーム性だ。もっと言ってしまえば、スリルの比重が思い分、ハマる人はどっぷりハマれる一方、シューターの中では大いに人を選ぶという側面もある。
だが、「ARC Raiders」はこうした従来の構造をベースとしつつも、ジャンルに定着した“シビアなゲーム性”に切り込んできた。まず、物資を失い続けても中古装備がランダム支給される「無料ロードアウト」機能が備わる。これにより、敗北続きで起こり得る極端なジリ貧状態にわかりやすくブレーキを設けている。さらに出撃する度に鶏の「スクラッピー」が、地上の資源を自動で集めてくれる便利機能だったり、プレイに応じて自キャラクターの経験値が溜まり「スキルツリー」で成長できる要素も存在する。
始めたばかりのプレーヤーは確かにこのジャンル特有の洗礼を受けるのだが、マッチそのものが“無駄にならない仕組み”から、遊ぶだけで何らかの恩恵が享受できる。たとえ負け続けてもキャラクターは成長していくし、武器を失おうとも素材回収機能で最低限戦うための一式はそろえやすい。
また、初心者の「何をすれば良いのか分からない」という疑問は、地下で受けたクエスト依頼がひとつの目標として提示される。無論、クエストには銃や弾丸などの達成報酬も用意される。総じて無一文&ジリ貧からの脱却が容易い設計であり、既存作と比較してもカジュアル寄りだと言えよう。こうしたことから、ソロプレーヤーでもゲームプレイが積み重ねやすい。
今回のメディアプレビューにおいては、他プレーヤーとの邂逅時、PvPに発展するケースがほとんどだった。しかしながら、フィールドを徘徊しているARCの存在が変数になりやすく、物事がどう転ぶか予想できないから面白い。相手とのせめぎ合いの中、銃声を聞きつけたARCが襲来してくると、「共闘」と「逃走」のどちらかを選ぶことになる。この状況に応じた切り替えはプレイ中のアクセントになっている。
プレビューでの肌感としては、先にARCを倒すメリットはそこまで大きくないため、「敵の敵は味方」のような状況になりづらそうではある。それでもARCという第3勢力がいるからこそ、PvP中の不利な状況を打開する糸口は見つけやすいかもしれない。あるいはARCの攻撃で自分と相手が共倒れしてしまうことだってありそうだった。
理想で言えば、ARCの攻撃で混乱する場を利用して相手プレーヤーをキル……できたら良かったが、筆者はむしろやられてしまった。こうした機転を利かせた動きを、駆け引きの上手いプレーヤーたちから実体験として学び、自分のサバイバルの糧にする面白さを感じられた。
そう前向きに捉えられるのは、やはり負け続けても一定度合いのジリ貧から下回らない、救済措置の存在が根強いと思う。そのおかげで、恐らくジャンル初心者でもプレイ数をこなしやすく、やがて自分の立ち回りの欠点を自覚できるはずだ。標的をプレーヤーからARCに変え、倒したARCの残骸から資源回収と、脱出を図る本作ならではの稼ぎ方が身に付けられるようになる。同時にジャンルの性質も緩やかな心理負荷のもと、深く理解していけるのではないだろうか。
スクワッドで挑む無法地帯での激戦が楽しい。即興だから生まれるその場限りの連携がクセになりそう
「ARC Raiders」は、アイテムロストのリスクを孕んでいるからこそ発生するストレスを根本的に見直し、“気楽”に出撃できる構造にデザインしているかのようである。加えて、見知らぬ同志たちと協力しながら探索することができれば、プレーヤーはより心に余裕が生まれる。本作ではソロプレイのほか、最大3人のチーム編成で地上探索に向かう「スクワッド」モードがある。
ソロプレイと同じようにアイテムを準備して、数種類のロケーションマップから探索場所を選び、仲間が選出されていく。サーバースラムでは1種類しか選択できなかったが、本プレビューでは5つのマップが用意され、それらを一通り体験することができた。砂漠化が進む街、シャトルを打ち上げる宇宙港の跡地、険しい谷に囲まれた山岳地帯など、いずれも戦いの痕跡から作中世界の時代背景を物語る荒廃ぶりである。
ソロとは違い、共闘する仲間が2人いることは非常に心強い。一人無法地帯に放り出される心細さを仲間たちが穴埋めしてくれるし、自分の経験不足を仲間との連携でカバーしやすい。ARCが闊歩する過酷な地上世界にて、心理的な安心感は段違いと言える。
実は今回のプレビューでは海外メディアと合同でランダムマッチングされるため、小学生レベルの英語すら怪しい筆者は、ボイスチャットが大きな壁となっていた。しかし、「ARC Raiders」はエモートでの簡易的な意思疎通ができるので、ゲームの操作に慣れさえすれば、後は目的地の提案と最低限の意思表示だけでも、そのマッチを楽しむことができる。
ゲーム中は希少アイテムのあるエリア範囲が出撃直後からマークされている。エリアは黄色と赤色に分けられ、危険度が高い赤色のエリアは他のプレーヤーと接触しやすい反面、レアリティの高いアイテムが入手しやすい。ソロでもスクワッドでも基本的にはこのマークされたエリア範囲を探索するのが望ましいのだろう。スクワッド中に探索したいエリアがあれば、そういった場所を積極的に提案しても良い。
筆者と組んだメンバーたちは、即席チームということもあって、手探りながら危険度の低いエリアから順に見て回るパターンがほとんどだった。もう少し熟練してくれば、どうすれば効率的に探索し、生還できるのかを考えることができるだろう。
他プレーヤーとの戦闘では、どのマップもオブジェクトが入り組んでいるため、敵プレーヤーを視認したら即座にその位置を味方に伝えて、迅速に連携していかねばならない印象だ。前項でも触れた通り、相手チームと銃撃戦になれば、徘徊しているARCにも気を遣う。お互い見ず知らずのパーティメンバー同士ではあるが、その場でスリーマンセルとしての連携力が試されてくる。
スクワッドの戦果を挙げるなら、一方的に全滅した試合があればギリギリ辛勝を収めた試合、逃げる敵チームと、脱出用エレベーターの中で時間切れまで戦う試合(結果的には勝負が付かず両チーム脱出)もあった。体験としては、1人でサバイバルするスリリングなソロプレイとは根っこの部分から異なっている。エクストラクションシューターでありながら、“PvPゲームらしいチーム戦”が手に汗握る印象であった。
「ARC Raiders」は、プレーヤーが感じる敗北の痛みを和らげながらも、スリルを損なわない、紛うことなきエクストラクションシューターだ。最大3人で挑むスクワッドも即興的な連携から生まれる一体感が堪らない。チーム同士の戦いになると、これもまた、思いの外エキサイトして楽しい。
ただし、カジュアルに寄り添った仕組みと構造ゆえに、レアリティの高いアイテムを所有していなければ既存作ほどの緊張感は生まれづらいという側面も十分に考えられる。その辺りのゲームバランスをどのような方向性で調整していくのかは、サービス後に期待したいところだ。とは言っても、現時点でもARCによる混沌とした地上の物資争奪戦は刺激的だ。スリルと興奮が波状的にやってくる体験となっており、まずはここがゲームを続けるひとつの動機となりそうだ。
ARC RAIDERS (C) 2025 Embark Studios AB. ARC RAIDERS and EMBARK trademarks and logos are trademarks or registered trademarks of Embark Studios AB. NEXON trademark and logo are trademarks or registered trademarks of NXC Corporation.