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2025年卒学生に卒業直前に聞いた意識・価値観・志向・活動と就職先満足度への影響

2025年卒学生に卒業直前に聞いた意識・価値観・志向・活動と就職先満足度への影響

宮地太郎
著者
キャリアリサーチLab主任研究員
TARO MIYAJI

はじめに

学生にとって満足する就職活動とはなんだろうか。
就職活動に成功や勝ち負けは存在せずそれぞれ各個人のストーリーがあり何かひとつの要因だけで決まるものではなく、様々なことが関係していることは想像に難くない。

このレポートは2025年卒の学生に自身の就職活動を振り返ってもらい、学生の意識・価値観・志向・活動などを明らかにし、それらの傾向をまとめたものである。

満足して就職活動を終えた人にはどのような傾向があるのだろうか。
今回の調査がこれから就職活動を行う学生のみなさんや、採用活動を行う企業の参考になれば幸いである。

問題

大学生の進路決定過程や就職活動の成功における影響要因など大学生のキャリアに関してはさまざまな研究がある。

「大学生の進路発達過程-社会・認知的進路理論からの検討-」
大学生を対象として社会・認知的進路理論 (Lent et al., 1994) で設定される進路発達プロセスについて検証している。
安達 智子(2001)教育心理学研究, 49, 326-336.

「大学生の就職活動および自己効力の縦断的研究」
就職活動開始時点における特性的自己効力の水準が就職活動を成功に導くことを示した。​
佐藤 舞 (2016) 教育心理学研究, 64, 26-40.

「大学生のインターンシップ効果測定尺度の開発―テキスト分析とパネルデータによる実証研究」
インターンシップの効果尺度として5つの因子を確認している。(初見康行, 梅崎修, & 坂爪洋美. (2021). 日本労務学会誌, 21(3), 18-42.)

その中でも、大学生の就職先への満足においては、インターンシップといったキャリア形成活動などによって得られた経験だけではなく、学生自身の価値観、内的資質、周囲の環境など、多様な要因が関与していると考えられる。​

今回の研究では就職先への満足に対して影響を及ぼす要因を検討し、それらとの関係性を明らかにすることを目的とし、探索的に調査した。​

就職活動の成功/マイナビキャリアリサーチLab
就職活動の成功/マイナビキャリアリサーチLab作成

方法

就職先への満足​

学生にとって就職活動の目標はただ単に就職先が決まることではない。その他にも「希望の仕事に就く」「自分に合った企業に就職する」など目指すゴールは学生の価値観によって多様である。そのため、学生自身が「良い」と感じる企業に就職できることこそが、学生にとっての“就職活動の成功”といえるだろう。​

また、就職活動のプロセスそのものも重要な意味を持つ。自己分析や企業研究などのキャリア探索行動は、学生のキャリア観や職業意識に大きな影響を与え、それ自体が有益な経験となる。したがって、就職活動の成功は学生によっての“良い”企業への就職にとどまらず、学生自身がその過程や結果に納得し、満足しているかどうかも重要な指標となりえる。​

以上を踏まえ、本研究では、学生の価値観に合致し、本人が満足していると感じられる就職活動および就職先の状態を、学生にとっての就職活動の成功と定義する。​

具体的には、就職活動の過程や就職予定先に対して納得感があり、満足度が高い状態を“成功”と捉え、以下の設問を作成した。また、回答について、「全くそう思わない」1点~「強くそう思う」7点とし、合計した際に得点が高いことが学生にとって“良い”状態であると捉え、これらを就活Goodと命名した。(α=0.94)

 設問文選択肢
1自身の就職活動は成功したと感じる
  1. 全くそう思わない
  2. そう思わない
  3. ややそう思わない
  4. どちらでもない
  5. ややそう思う
  6. そう思う
  7. 強くそう思う
2就職予定先に満足している
3就職予定先は自身にとって納得のいくものだ
4就職予定先は将来のキャリアを踏まえたファーストステップとしてふさわしいと思う
5就職予定先の価値観は自身の価値観と合っていると感じる
6就職予定先で自身が描くキャリアを実現できそうだ
7就職活動は自身にとって有意義なものであった
8就職活動は充実していた
9就職活動を頑張れた、熱心に取り組めた
10就職活動に後悔はない

就職先へのエンゲージメント

また、就職活動とは学生と企業のマッチングでもある。そのため、学生視点のみの成功だけではなく企業視点での成功という観点も必要であろう。企業にとっての学生の“良い”状態を考えるに、エンゲージメントが高い状態であると考えられる。よって、以下の設問を作成し、これらを「就職先へのエンゲージメント」とした。

回答については「全くそう思わない」1点~「強くそう思う」7点とし、合計値を利用した。

 設問文選択肢
1就職予定先で活躍できると思う
  1. 全くそう思わない
  2. そう思わない
  3. ややそう思わない
  4. どちらでもない
  5. ややそう思う
  6. そう思う
  7. 強くそう思う
2就職予定先で成長できると思う
3就職予定先に貢献したいと思う
4就職予定先で長く働きたい
5就職予定先での仕事のことを考えると、やる気がみなぎるように感じる
6就職予定先において自身が何を期待されているかを理解している

仮説

就職活動の成功へ影響を及ぼす変数

以降は就職活動の成功(「就職Good」、「就職先へのエンゲージメント」)へ影響を及ぼすであろう変数を検討していく。

就活Good、就職先へのエンゲージメント/マイナビキャリアリサーチLab
就活Good、就職先へのエンゲージメント/マイナビキャリアリサーチLab作成

プラス思考

就職活動中のさまざまな選択と判断を迫られる状況に対して、プラス思考で対処できるか、あるいはマイナス思考で対処するか、の違いの影響も考えられる。今回は「ストレス・コーピング・スキル尺度の作成 : その信頼性・妥当性の検討」(木島恒,2008)の「プラス思考」を参考にした。

7件法で聞いた4問について、それぞれの結果を得点として合算したものを「プラス思考」得点とした。

 設問文選択肢
1自分が困った状況に置かれてもその体験から何かを学びとろうとする
  1. 全くちがう
  2. ちがう
  3. ややちがう
  4. どちらでもない
  5. ややそう思う
  6. そう思う
  7. 非常にそう思う
2大きな苦労は、必ず将来の肥やしになる、と思う
3いやなことがあっても、悪いことはいつまでも続くことはない、と考えることにしている
4どんなにつらい問題に直面しても、自分ならそれを乗り越えられると思う

ストレス耐性

自分の今後のキャリアに向き合うこととなる就職活動は、さまざまな選択と判断を迫られるものであり、その判断には精神的な負荷が生じるであろう。そうした状況に対する耐性の高さが就職活動のより良い選択に影響するのではないかと考え、変数の1つとしてストレス耐性をあげる。

ストレス耐性を測る尺度については「ストレス耐性度チェックリストの検討(第1報)」(折津 政江, 村上 正人, 桂 戴作, 野崎 貞彦,1996)の「情動的ストレス耐性」を使用した。

7件法で聞いた10問について、それぞれの結果を得点として合算し、「ストレス耐性」得点とした。

 設問文選択肢
1失敗すると、気がくじけてしまう
  1. 全くちがう
  2. ちがう
  3. ややちがう
  4. どちらでもない
  5. ややそう思う
  6. そう思う
  7. 非常にそう思う

←※4のみ逆転項目
2大きな精神的ショックを受けると、落ち込んでしまう
3ささいなことでもいやなことがあると、それが頭にこびりついて忘れられない
4失敗しても、その失敗を繰り返さなければよいのだから、あまり気にしない
5必要以上に事態の進展について心配してしまう
6壁にぶつかると、自分はだめな人間だと思ってしまう
7悲しいことやつらいことに直面すると、何も考えられなくなってしまう
8つらいことがあると、泣き出してしまうことがある
9心配事があると、夜、寝つかれなくなる
10自分ではどうしようもできないことが起きると、落ち込んでしまい、何もしない

キャリア形成の6ステップ

学生の就職先決定においては、学生自身の意識、価値観だけでなく、キャリア形成活動へ参加したことによる影響も考えられる。

そのため、キャリア形成活動への参加状況や満足度なども分析の対象とすることにした。キャリア形成活動への参加状況・満足度を測る指標を検討するうえで、「キャリア・コンサルティング技法等に関する調査研究報告書の概要」(厚生労働省,2001)における、キャリア形成を構成する要素を6つのステップを参考にした。

6つのステップとは、1.自己理解、2.仕事理解、3.啓発的経験、4.キャリア選択に係る意思決定、5.方策の実行、6.仕事への適応に分類される。個人のキャリア形成はこれら6つのステップにより構成され、キャリアコンサルティングはこれらのステップにおける個人の活動を援助するものをしている。

今回の研究ではこの6ステップを学生のキャリア形成に当てはめ、これらの各ステップに対する学生の活動状況・満足度を調査することにした。

キャリア形成の6ステップ/マイナビキャリアリサーチLab
キャリア形成の6ステップ/マイナビキャリアリサーチLab作成

各変数においての算出方法については以下とした。

キャリア形成の6ステップ 1.自己理解(自己分析の充実度)、2.仕事理解(業界研究・企業研究の充実度)
マルチアンサー設問の回答個数を5段階にわけ、それぞれを1点~5点と得点化した。5件法で聞いた残りの2問を含め、それぞれの得点を合算したものを各変数の得点とした。

キャリア形成の6ステップ 3.啓発的経験(キャリア形成活動の充実度)
数値での回答を求めた設問について回答を5段階にわけ、それぞれを1点~5点と得点化した。5件法で聞いた残りの2問を含め、それぞれの得点を合算したものを各変数の得点とした。

キャリア形成の6ステップ 4.キャリア選択に係る意思決定、 5.方策の実行、 6.仕事への適応
5件法で聞いた各設問について、それぞれの結果を得点として合算したものを各変数の得点とした。

キャリアアンカー

以下の8つのキャリアアンカータイプ別に5件法で5問ずつ計40問聞き、それぞれの合計点を集計。またそのうち最も当てはまると思う設問3つをそれぞれの8タイプに加点。最も合計得点の高いタイプをキャリアアンカータイプとして決定し、カテゴリ変数とした。​

  1. 専門家・エキスパート・職人タイプ
  2. 管理・経営・マネジメントタイプ
  3. 自分のペースを乱したくない、自律・独立タイプ
  4. 将来の保証や安定性重視タイプ
  5. 創造性がある起業家タイプ
  6. 奉仕・社会貢献を大切にするタイプ
  7. 何事にも挑戦していきたいタイプ
  8. ワークライフバランスを重視するタイプ​

※本来は対話を通じて最終的なキャリア・アンカーを決定するが、今回は単純集計の結果を採用した。​また複数のキャリア・アンカータイプが出現する場合があり、単一の結果のサンプルのみを有効回答とした。

タイプ診断

現在、若者においてはタイプ診断によるコミュニケーションが流行している。今回の研究においても学生が理解を示しやすいようにいくつかのタイプ診断を作成した。選考研究があるわけではないが選択したものでその学生の価値観がわかりやすいものを作成している。これを1つのタイプ診断として今回は活用する。また、分析では各タイプの回答結果をカテゴリ変数とした。

  1. 宝くじがあたったら
  2. 将来の自分と今の自分
  3. 戦国三大武将
 設問文選択肢
1宝くじで100万円当たったらどうしますか散財する(パーッと使う)
慎重に使う
できるだけ貯蓄に回す
すべて貯蓄あるいは投資・運用に回す
2将来の自分よりも今の自分を優先したいと思いますかその通りだ
まあその通りだ
そんなことはない方だ
そんなことはない
3戦国三大武将を表す川柳のうち、あなたが一番共感するのはどれですか「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス(織田信長)」
「鳴かぬなら 鳴かせてみよう ホトトギス(豊臣秀吉)」
「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス(徳川家康)」

以上より、就職活動の成功(「就職Good」、「就職先へのエンゲージメント」)に対して、以下の変数がどのように影響を及ぼしているかを探索的に検証していく。

就活Good、就職先へのエンゲージメント/マイナビキャリアリサーチLab
就活Good、就職先へのエンゲージメント/マイナビキャリアリサーチLab作成

設問

<目的変数>
・「就活Good」
・「就職先へのエンゲージメント」

<説明変数>
・プラス思考
・情動的ストレス耐性
・キャリア形成の6ステップ 1.自己理解(自己分析の充実度)
・キャリア形成の6ステップ 2.仕事理解(業界研究・企業研究の充実度)
・キャリア形成の6ステップ 3.啓発的経験(キャリア形成活動の充実度)
・キャリア形成の6ステップ 4.キャリア選択に係る意思決定
・キャリア形成の6ステップ 5.方策の実行
・キャリア形成の6ステップ 6.仕事への適応
・キャリア・アンカー
・タイプ診断(宝くじが当たったら、将来の自分と今の自分の優先度、共感する戦国三大武将)

<その他>
・希望した職種での採用だったか
・あなたにとっての就職活動の成功とは

※設問票は巻末を参照

調査概要

内容 就職活動終了後の状況に関するアンケート
調査期間 2025年2月21日~3月10日
調査対象

2025年3月卒業予定の全国の大学生、大学院生

調査方法 マイナビ2025会員(退会者含む)にWEB DMを配信し、インターネットアンケートより回収
有効回答数

2,040名

※重複回答、不正回答、キャリア・アンカー診断の結果が複数となった場合は除外

回答者内訳 文系男子:376 文系女子:829 理系男子:450 理系女子:385
集計方法

クロス集計(※)、重回帰分析

※全体の数値を算出するにあたり、文理男女別の構成比を2025年3月卒業予定の大学生・大学院生の構成比と等しくする為、文部科学省の学校基本調査を基に、ウエイトバック集計を行っている。基準数値は令和5年度学校基本調査(2023年12月公表)の大学3年生・院1年生在籍数を参照し、文理男女比を算出している。
※ウエイトバック集計とはアンケート回答者の属性構成比率が実際の属性比率と乖離している場合、構成比に合わせるように重み付けして集計すること。

プレ調査

「就活Good」の検証(テキストマイニング)

今回の研究では、目的変数として「就活Good」と「就活エンゲージメント」の2つを設定しているが、仮説を検証するにあたり、目的変数が適切であるかを検証した。方法としては、以下の設問においてフリーアンサーを求め、テキストマイニングを行った。

設問)就職活動を振り返ってどのような状態となっているのが、あなたにとって理想的ですか

共起ネットワーク図

就職活動を振り返ってどのような状態となっているのが、あなたにとって理想的ですか・共起ネットワーク図/マイナビキャリアリサーチLab

共起ネットワーク図から頻出語の関連グループとして、以下が見られた。

  1. 「納得」ー「就職(予定)先」ー「満足」
  2. 「企業 または 会社」ー「自分」ー「納得」
  3. 「後悔がない」ー「就職活動」ー「感じる」ー「成功」

以上より、「就活Good」の要素として想定していた「満足」「納得」といった文言が含まれていたことがわかる。そのため、学生にとっての理想な状態とは就職予定先に納得していたり、満足していたりする状態であるため、「就職Good」の得点が高いことは学生の理想的な状態を示しているといえる。

分析の概要

今回の研究の目的は、就職活動の成功に対して影響を及ぼす要因を検討し、関係性を明らかにすることである。

分析の概要:就活Good/マイナビキャリアリサーチLab
分析の概要:就活Good/マイナビキャリアリサーチLab作成

「就活Good」、「就活のエンゲージメント」を目的変数とし、各説明変数との関係性をみていく。
分析方法としては、重回帰分析を用いて各説明変数による、「就活Good」、「就職先へのエンゲージメント」を表す回帰式を求めた。また、目的変数の予測に最も寄与する説明変数の組み合わせについては変数減少法を用いることで最適なモデルを構築した。

変数減少法による重回帰分析にて最適な回帰式を求めた。キャリア・アンカー限定欄で、タイプが書かれてあるものは、それぞれ記載のキャリアアンカータイプの学生のみを分析対象とし、最適な回帰式を求めている。回帰式の当てはまりの良さを示す自由度調整済決定係数(補正R2)が0.5以上(四捨五入して0.5以上となるものを含む)の結果について、以降で説明する。

※自由度調整済決定係数とは、モデルの説明力を評価する指標で、数値が高いほど信頼性の高いモデルとなる。労務・人事分野では、社会的・心理的要因が複雑に絡むため、0.5程度でも意味のあるモデルとされることがある。​

結果

就活Good

「就活Good」を目的変数に置いた場合は、キャリアアンカータイプ別の結果でしか、あてはまりの良い回帰式(自由度調整済決定係数>0.5)が導き出せなかった。キャリアアンカータイプ別の結果のうち、あてはまりの良い回帰式が導き出せたのは、

  •  パターン14:4.将来の保障や安定性重視タイプ(インターンシップ・仕事体験経験者のみ)
  •  パターン17:7.何事にも挑戦していきたいタイプ(インターンシップ・仕事体験経験者のみ)

の2つだった。

パターン14(自由度調整済決定係数0.45
※キャリア・アンカータイプ 4.将来の保障や安定性重視タイプのみ
「就活Good」=2.708274655(切片)
+0.889319074×プラス思考
+0.160201814×キャリア形成の6ステップ 1.自己理解(自己分析の充実度)
+0.469252933×キャリア形成の6ステップ 2.仕事理解(業界研究・企業研究の充実度)
+0.023579679×キャリア形成の6ステップ 4.キャリア選択に係る意思決定
+0.363815206×キャリア形成の6ステップ 5.方策の実行
+タイプ診断3共感する三大戦国武将(信長1.234286139 or 秀吉0.944419244 or 家康0)

パターン17(自由度調整済決定係数0.51
※キャリア・アンカータイプ 7.何事にも挑戦していきたいタイプのみ
「就活Good」=-9.545831924(切片)
+1.06873117×プラス思考
+0.074380519 ×情動的ストレス耐性
+0.513482814×キャリア形成の6ステップ 2.仕事理解(業界研究・企業研究の充実度)
+0.547362909×キャリア形成の6ステップ 5.方策の実行
+タイプ診断1宝くじが当たったらの結果(散財0.317322801 or 慎重0 or 貯蓄1.19418555 or 投資3.053585979)
+タイプ診断3共感する三大戦国武将の結果(信長3.7924663 or 秀吉0 or 家康2.649848446)

そのほかのパターンでは、今回設定した説明変数では「就活Good」を説明できる回帰式が導き出すことができず、そのほかの変数を検討していく必要がある。今回の説明変数は、就職活動における過程や、個人の価値観タイプなどについて着目し、選定しているが、「就活Good」には、就職先の配属予定やもともとの志望度など、それ以外の最終的な就職活動の結果に関する要素が影響している可能性も考えられる。

就職先へのエンゲージメント

「就職先へのエンゲージメント」を目的変数に置いた場合は、2つのパターン(23、41)であてはまりの良い回帰式(自由度調整済決定係数>0.5)が導き出せた。ただし2つとも、インターンシップ・仕事体験を経験している学生に限定した結果となっている。そのためすべての学生にあてはまるものではないが、近年では8割以上の学生がインターンシップ・仕事体験を経験しており、ある程度汎用的であると言えるだろう。この2つの回帰式に共通する変数は、

  • プラス思考
  • キャリア形成の6ステップ 2.仕事理解(業界研究・企業研究の充実度)
  • キャリア形成の6ステップ 4.キャリア選択に係る意思決定(キャリア形成活動によるキャリア選択への効果)
  • キャリア形成の6ステップ 5.方策の実行(キャリア形成活動によるキャリア観の醸成)
    で、これらは就職先へのエンゲージメントに影響していることがわかった。ただし、この2つの回帰式では、インターンシップ・仕事体験の参加回数や日数などについて聞く
  • キャリア形成の6ステップ 3.啓発的経験(キャリア形成活動の充実度)

が重回帰分析の結果、回帰式から外れ、就職先へのエンゲージメントには影響しないことがわかった。

パターン23(自由度調整済決定係数0.46
就職先へのエンゲージメント=9.960647269(切片)
+0.796021245×プラス思考
+0.252985031×キャリア形成の6ステップ 2.仕事理解(業界研究・企業研究の充実度)
-0.003860996×キャリア形成の6ステップ 4.キャリア選択に係る意思決定
+0.362885289×キャリア形成の6ステップ 5.方策の実行
+タイプ診断1宝くじが当たったらの結果(散財0 or 慎重0.479980085 or 貯蓄0.789811163 or 投資0.234898098)
+タイプ診断2将来の自分と今の自分の優先度(将来優先0.378001409 or 今優先0)
+タイプ診断3共感する三大戦国武将(信長0 or 秀吉1.714064941 or 家康1.073353279)

パターン41(自由度調整済決定係数0.47) 
就職先へのエンゲージメント=9.49378029(切片)
+0.807967691×プラス思考
+0.287942214×キャリア形成の6ステップ 2.仕事理解(業界研究・企業研究の充実度)
-0.004584156×キャリア形成の6ステップ 4.キャリア選択に係る意思決定
+0.356704471×キャリア形成の6ステップ 5.方策の実行
+キャリア・アンカータイプ(①3.190319787 or ②1.79207983 or ③0.557379713 or ④2.44261797 or ⑤0 or ⑥3.18658536 or ⑦1.994983597 or ⑧1.498301364)

またキャリアアンカータイプ別で、あてはまりの良い回帰式が導き出せたのは、

  • パターン26:3.自分のペースを乱したくない、自立・独立タイプ
  • パターン30:7.何事にも挑戦していきたいタイプ
  • パターン35:4.将来の保障や安定性重視タイプ(インターンシップ・仕事体験経験者のみ)
  • パターン38:7.何事にも挑戦していきたいタイプ(インターンシップ・仕事体験経験者のみ)

の4つだった。

パターン26(自由度調整済決定係数0.47
※キャリア・アンカータイプ 3.自分のペースを乱したくない、自立・独立タイプのみ
就職先へのエンゲージメント==10.8536050652658(切片)
+1.22627565016413×プラス思考
+0.355266781916431×キャリア形成の6ステップ 2.仕事理解(業界研究・企業研究の充実度)
+タイプ診断2将来の自分と今の自分の優先度(将来優先2.28808392330685 or 今優先0)

パターン30(自由度調整済決定係数0.50
※キャリア・アンカータイプ 7.何事にも挑戦していきたいタイプのみ
就職先へのエンゲージメント=13.4124158709977(切片)
+1.22592109385706×プラス思考
-0.10511628870546×情動的ストレス耐性
+0.37557162589674×キャリア形成の6ステップ 2.仕事理解(業界研究・企業研究の充実度)
+タイプ診断1宝くじが当たったらの結果(散財0 or 慎重1.85916427674318 or 貯蓄2.43277549799053 or 投資3.30806463879363)
+タイプ診断2将来の自分と今の自分の優先度(将来優先0 or 今優先1.99555726915315)

パターン35(自由度調整済決定係数0.53
※キャリア・アンカータイプ 4.将来の保障や安定性重視タイプのみ
就職先へのエンゲージメント=8.41031568767584(切片)
+0.870899000144625×プラス思考
-0.0342796538005793×情動的ストレス耐性
+0.166016187855583 ×キャリア形成の6ステップ 2.仕事理解(業界研究・企業研究の充実度)
+0.0106252558618131×キャリア形成の6ステップ 4.キャリア選択に係る意思決定
+0.41320268217895×キャリア形成の6ステップ 5.方策の実行
+タイプ診断3共感する三大戦国武将(信長0.11565983313328 or 秀吉1.42759627391117 or 家康0)

パターン38(自由度調整済決定係数0.53
※キャリア・アンカータイプ 7.何事にも挑戦していきたいタイプのみ
就職先へのエンゲージメント=9.761301497(切片)
+1.082755588×プラス思考
-0.093464815×情動的ストレス耐性
+0.341616866×キャリア形成の6ステップ 5.方策の実行
+タイプ診断1宝くじの結果(散財0.414602296 or 慎重0or 貯蓄1.642181601 or 投資2.079674291)
+タイプ診断2優先の結果(将来優先0 or 今優先1.401059465)

これらの結果は目安基準となる自由度調整済決定係数>0.5ではあったものの、それ以外の要因の影響も大きく関係していることが推測される。より詳細に学生のエンゲージメントへの影響を説明するには、就職活動の過程や学生の価値観タイプだけではなく、入社予定先の企業との関わりについても検討する必要があるだろう。

クロス集計:「就活Good」について

重回帰分析では、「就活Good」と「就職先へのエンゲージメント」の2つを目的変数に、各種説明変数との関係を示す回帰式をもとめた。その結果、「就職先へのエンゲージメント」についてはあてはまりの良い回帰式(自由度調整済決定係数>0.5)が導き出せたものの、「就活Good」についてはあてはまりのよい回帰式を導くことはできなかった。

そこで、以降は「就活Good」について値が高いグループと低いグループに分け、クロス集計をおこない、「就活Good」の高低による学生の行動や意識の差を検証した。

グルーピングについては以下のように行った。
中央値=44(中央値は高群に含めた)
高群:1,083名
低群:957名

「就活Good」と「プラス思考」との関係

「就活Good」高群・低群と、「プラス思考」高群・低群とでクロス集計を行ったところ、「就活Good」高群ほど、 「プラス思考」についても高群の割合が高くなった。「就活Good」が高い学生ほど、よりプラス思考であることがわかる。

就活Good」 × 「プラス思考」

「就活Good」 × プラス思考/マイナビキャリアリサーチLab

以下の質問項目について、「全くちがう」~「非常にそう思う」の7件法で質問。
回答された選択肢を数値化し、中央値をもとにプラス思考高群・低群に分けた。

【質問項目】
Q.自分が困った状況に置かれてもその体験から何か学びとろうとする
Q.大きな苦労は、必ず将来の肥やしになる、と思う
Q.いやなことがあっても、悪いことはいつまでも続くことはない、と考えることにしている
Q.どんなにつらい問題に直面しても、自分ならそれを乗り越えられると思う

【選択肢】
全くちがう
ちがう
ややちがう
どちらでもない
ややそう思う
そう思う
非常にそう思う

「就活Good」と「情動的ストレス耐性」との関係

「就活Good」高群・低群と、「情動的ストレス耐性」高群・低群とでクロス集計を行ったところ、「就活Good」高群ほど、 「情動的ストレス耐性」についても高群の割合が高くなった。「就活Good」が高い学生ほど、よりストレス耐性があることがわかる。

「就活Good」 × 「情動的ストレス耐性」

「就活Good」 × 情動的ストレス耐性/マイナビキャリアリサーチLab

以下の質問項目について、「全くちがう」~「非常にそう思う」の7件法で質問。
回答された選択肢を数値化し、中央値をもとに情動的ストレス耐性高群・低群に分けた。

【質問項目】
Q.失敗すると、気がくじけてしまう
Q.大きな精神的ショックを受けると、落ち込んでしまう
Q.ささいなことでもいやなことがあると、それが頭にこびりついて忘れられない
Q.失敗しても、その失敗を繰り返さなければよいのだから、あまり気にしない(逆転項目)
Q.必要以上に事態の進展について心配してしまう
Q.壁にぶつかると、自分はだめな人間だと思ってしまう
Q.悲しいことやつらいことに直面すると、何も考えられなくなってしまう
Q.つらいことがあると、泣き出してしまうことがある
Q.心配事があると、夜、寝つかれなくなる
Q.自分ではどうしようもできないことが起きると、落ち込んでしまい、何もしない

【選択肢】
全くちがう
ちがう
ややちがう
どちらでもない
ややそう思う
そう思う
非常にそう思う

「就活Good」と「キャリア形成の6ステップ」との関係 

1.自己理解(自己分析の充実度)

「キャリア形成の6ステップ」のうち、自己分析の充実度に関わる下記設問に対する回答結果(選択肢)を数値化し、その値を学生の自己理解の充実度を示す指標とした。中央値をもとに自己理解高群・低群に分けた。

【質問項目】
Q.自身の就職活動を振り返って、自己分析は時間をかけられたと思いますか
・全く時間をかけなかった
・あまり時間をかけなかった
・どちらともいえない
・まあまあ時間をかけて行った
・とても時間をかけて行った

Q.自身の就職活動を振り返って、自己分析はどのくらいできたと思いますか
・不十分だった
・やや不十分だった
・どちらともいえない
・まあまあできた
・十分できた

Q.どのように自己分析を行いましたか。行ったものをすべてお答えください。
・アセスメントを受ける(マイナビ「マルチアンサーTCH plus」など)
・長所短所を分析する(マイナビ「長所短所診断」など)
・友人や家族に他己分析を依頼する(マイナビ「お願い!他己分析」など)
・自分史をつくる
・モチベーショングラフ(人生グラフ)をつくる
・マインドマップをつくる
・ジョハリの窓をつくる
・1000の質問リストをつくる
・Will Can Must分析をする
・SWOT分析をする
・大学の主催する自己分析講座に参加する
・大学のキャリアセンター職員に相談する
・就職情報サイトの運営会社(マイナビ等)の主催する自己分析講座に参加する
・企業の主催するの主催する自己分析講座に参加する
・Youtubeの就活系チャンネルを視聴する
・その他
・自己分析は行わなかった

「就活Good」高群・低群と、「キャリア形成の6ステップ 1.自己理解(自己分析の充実度)」高群・低群とでクロス集計を行ったところ、「就活Good」高群ほど、「キャリア形成の6ステップ 1.自己理解(自己分析の充実度)」についても高群の割合が高くなった。「就活Good」が高い学生ほど、自己分析の充実度も高いことがわかる。

「就活Good」 × 「自己理解」

「就活Good」 × 自己理解/マイナビキャリアリサーチLab

「就活Good」高群・低群で、行っている自己分析の手段・手法について大きな違いは見られなかったが、「自己分析に時間をかけられたと思うか」については、高群の方が「時間をかけて行った(まあまあ/とても)」と答えた割合が高く、また「自己分析はどのくらいできたと思うか」についても、高群の方が「できた(まあまあ/十分)の割合が高くなった。

自己分析は時間をかけられたと思うか

自己分析は時間をかけられたと思うか/マイナビキャリアリサーチLab

自己分析はどのくらいできたと思うか

自己分析はどのくらいできたと思うか/マイナビキャリアリサーチLab

2.仕事理解(業界研究・企業研究の充実度)

「キャリア形成の6ステップ」のうち、業界研究・企業研究の充実度に関わる下記設問に対する回答結果(選択肢)を数値化し、その値を学生の仕事理解の充実度を示す指標とした。中央値をもとに仕事理解高群・低群に分けた。

【質問項目】
Q.自身の就職活動を振り返って、業界研究・企業研究は時間をかけられたと思いますか
・全く時間をかけなかった
・あまり時間をかけなかった
・どちらともいえない
・まあまあ時間をかけて行った
・とても時間をかけて行った

Q.自身の就職活動を振り返って、業界研究・企業研究はどのくらいできたと思いますか
・不十分だった
・やや不十分だった
・どちらともいえない
・まあまあできた
・十分できた

Q.どのように業界研究・企業研究を行いましたか。行ったものをすべてお答えください
・合同企・業説明会に参加する
・インターンシップ・仕事体験に参加する
・オープン・カンパニー、キャリア教育プログラムに参加する
・大学の主催する企業研究・業界研究講座に参加する
・企業の主催する企業研究・業界研究講座に参加する
・四季報、業界誌などを読む
・OBOG訪問
・マイナビなどのインターンシップ・キャリアサイトの企業情報を調べる
・企業の採用HPやマイページを調べる
・企業の決算報告書、IR資料を調べる
・SNSの就活系アカウントや企業アカウントをフォローする
・Youtubeの就活系チャンネルを視聴する
・業界研究・企業研究は行わなかった

「就活Good」高群・低群と、「キャリア形成の6ステップ②仕事理解(業界研究・企業研究の充実度)」高群・低群とでクロス集計を行ったところ、「就活Good」高群ほど、「キャリア形成の6ステップ 2.仕事理解(業界研究・企業研究の充実度)」についても高群の割合が高くなった。「就活Good」が高い学生ほど、業界研究・企業研究の充実度も高いことがわかる。

「就活Good」 × 「仕事理解」

「就活Good」 × 仕事理解/マイナビキャリアリサーチLab

「就活Good」高群・低群で、行っている業界研究・企業研究の手段・手法について大きな違いは見られなかったが、「業界研究・企業研究は時間をかけられたと思うか」については、高群の方が「時間をかけて行った(まあまあ/とても)」と答えた割合が高く、また「業界研究・企業研究はどのくらいできたと思うか」についても、高群の方が「できた(まあまあ/十分)の割合が高くなった。

業界研究・企業研究は時間をかけられたと思うか

業界研究・企業研究は時間をかけられたと思うか/マイナビキャリアリサーチLab

業界研究・企業研究はどのくらいできたと思うか

業界研究・企業研究はどのくらいできたと思うか/マイナビキャリアリサーチLab

3.啓発的経験(キャリア形成活動の充実度)

キャリア形成の6ステップのうち、キャリア形成活動の充実度や活動量・活動内容に関わる下記設問に対する回答結果(選択肢)を数値化し、その値を学生の啓発的経験を示す指標とした。中央値をもとに啓発的経験・低群に分けた。

【質問項目】
Q.インターンシップ・仕事体験に何社参加しましたか

Q.インターンシップ・仕事体験に何日参加しましたか。複数社参加した方は累計日数をお答えください

Q.1社あたり最大何日間のインターンシップ・仕事体験に参加しましたか

Q.最も熱心に取り組んだインターンシップ・仕事体験は、どの程度実務に近い内容でしたか
・実務とは全く異なる内容だった
・実務とはやや異なる内容だった
・どちらともいえない
・実務にやや近い内容だった
・実務にとても近い内容だった

Q.自身のキャリア形成活動を振り返って、どの程度充実していたと感じますか
・不十分だった
・やや不十分だった
・どちらともいえない
・まあまあできた
・十分できた

Q.これまでに参加したことのあるインターンシップ・仕事体験のプログラム内容をすべて選んでください
・現場を社員の説明で見学する「職場見学」
・現場の社員に交じって業務を体験する「実際の現場での仕事体験」(同行体験)
・業務を疑似的に体験する「ロールプレイング」※研修施設での業務体験など
・実際の業務と同等の課題やタスクに取り組む「シミュレーション」
・架空の課題や問題解決に挑む「グループディスカッション・グループワーク」
・企業や業界について知識を深める「座学講座」
・働いている社員と話せる「社員インタビュー」
・若手社員に限定して話せる「若手社員インタビュー」
・社会人の基本や将来に役立つ内容のセミナーがメインの「ビジネススキル研修」

「就活Good」高群・低群と、「キャリア形成の6ステップ③啓発的経験(キャリア形成活動の充実度)」高群・低群とでクロス集計を行ったところ、「就活Good」高群ほど、「キャリア形成の6ステップ③啓発的経験(キャリア形成活動の充実度)」についても高群の割合が高くなった。「就活Good」が高い学生ほど、キャリア形成活動の充実度も高いことがわかる。

「就活Good」 × 「啓発的経験」

「就活Good」 × 啓発的経験/マイナビキャリアリサーチLab

インターンシップ・仕事体験の参加日数(複数社参加した場合はその累計日数)については、「就活Good」高群と低群で平均日数に若干の差が見られた。より差が見られたのは1社あたりの最大参加日数で、「就活Good」高群では平均9.64日、低群(4.50日)の倍近くとなった。

インターンシップ・仕事体験 平均参加日数

インターンシップ・仕事体験 平均参加日数/マイナビキャリアリサーチLab

インターンシップ・仕事体験 1社あたりの平均最大参加日数

インターンシップ・仕事体験 1社あたりの平均最大参加日数/マイナビキャリアリサーチLab

参加したインターンシップ・仕事体験の内容が実務体験に近いものであったかどうかについては、「就活Good」高群の方が、「実務に(やや/とても)近い内容だった」の割合が高くなった。特に「実務にとても近い内容だった」の割合は、高群が低群の倍近くになった。

自身のキャリア形成活動の充実度についても、「就活Good」高群の方が「できた(まあまあ/十分)」の割合が高くなり、「就活Good」の高い学生ほどキャリア形成活動の充実度も高くなっていることがわかる。

最も熱心に取り組んだインターンシップ・仕事体験は、どの程度実務に近い内容だったか

最も熱心に取り組んだインターンシップ・仕事体験は、どの程度実務に近い内容だったか/マイナビキャリアリサーチLab

自身のキャリア形成活動を振り返って、どの程度充実していたと感じるか

自身のキャリア形成活動を振り返って、どの程度充実していたと感じるか/マイナビキャリアリサーチLab

4.キャリア選択に係る意思決定

キャリア形成の6ステップのうち、キャリア形成活動による​キャリア選択への効果​​に関わる下記設問に対する回答結果(選択肢)を数値化し、その値を学生のキャリア選択に係る意思決定を示す指標とした。中央値をもとに高群・低群に分けた。

「就活Good」高群・低群と、「キャリア形成の6ステップ 4.キャリア選択に係る意思決定」高群・低群とでクロス集計を行ったところ、「就活Good」高群ほど、 「キャリア形成の6ステップ 4.キャリア選択に係る意思決定」についても高群の割合が高くなった。「就活Good」が高い学生ほど、キャリア選択に際してキャリア形成活動による効果を感じていることがわかる。

【質問項目】
Q.興味のある業界・企業、仕事内容の範囲が広がった
Q.志望する業界・企業、仕事内容の魅力を、複数あげることができるようになった
Q.これまで知らなかった業界・企業、仕事内容に興味が出てきた
Q.社会には私が思っている以上に多様な選択肢があることが分かった
Q.就職活動には、自分の可能性を試すチャンスがたくさんあることが分かった
Q.就職活動は自分の視野を広げてくれるものだと分かった
Q.社会人のアドバイスは、将来のキャリアプランに新たな視点を与えてくれた
Q.他のインターンシップ参加学生との情報交換は、自分の就職活動に役立つことが分かった

【選択肢】
・全くそう思わない
・あまりそう思わない
・どちらでもない
・ややそう思う
・非常にそう思う

「就活Good」 × 「キャリア選択に係る意思決定」

「就活Good」 ×キャリア選択に係る意思決定/マイナビキャリアリサーチLab

5.方策の実行

キャリア形成の6ステップのうち、キャリア形成活動による​キャリア観の醸成​に関わる下記設問に対する回答結果(選択肢)を数値化し、その値を学生のキャリア選択に係る意思決定を示す指標とした。中央値をもとに高群・低群に分けた。

「就活Good」高群・低群と、「キャリア形成の6ステップ 5.方策の実行」高群・低群とでクロス集計を行ったところ、「就活Good」高群ほど、 「キャリア形成の6ステップ 5.方策の実行」についても高群の割合が高くなった。「就活Good」が高い学生ほど、キャリア観の醸成に際してキャリア形成活動による効果を感じていることがわかる。

【質問項目】
Q.将来のキャリアプランが明確になった
Q.自分が本当にやりたいことが分かった
Q.社会に出たら達成したい、具体的な目標ができた
Q.社会人として、あの人のようになりたいと思う人ができた
Q.将来のキャリアに向けて、やるべきことが分かった
Q.就職活動に向けて、やるべきことが分かった
Q.興味のある業界・ 企業、仕事内容の絞り込みができた
Q.働きたい業界・企業、仕事内容のイメージが、明確になった
Q.社会人3年目として働く、自分の姿が想像できるようになった

【選択肢】
・全くそう思わない
・あまりそう思わない
・どちらでもない
・ややそう思う
・非常にそう思う

「就活Good」 × 「方策の実行」

「就活Good」 ×方策の実行/マイナビキャリアリサーチLab

6.仕事への適応

キャリア形成の6ステップのうち、キャリア形成活動による​就職活動への効果​や社会人生活へのレディネスに関わる下記設問に対する回答結果(選択肢)を数値化し、その値を学生の仕事への適応を示す指標とした。中央値をもとに高群・低群に分けた。

「就活Good」高群・低群と、「キャリア形成の6ステップ 6.仕事への適応」高群・低群とでクロス集計を行ったところ、「就活Good」高群ほど、 「キャリア形成の6ステップ 6.仕事への適応」についても高群の割合が高くなった。「就活Good」が高い学生ほど、就職活動に際してキャリア形成活動による効果を感じており、また社会人生活へのレディネスが高い状態であることがわかる。

【質問項目】
Q.社会人として早く働き始めたいと思うようになった
Q.社会人になる準備・覚悟ができた
Q.「仕事・働くこと」に対する意欲が高まった
Q.就職活動に対する意欲が高まった
Q.就職活動を上手く進めるために、大学のキャリアセンターなど、自分の周りにある施設・機会を積極的に活用しようと考えるようになった
Q.就職活動を上手く進めるために、OB・OG訪問を主体的に行おうと考えるようになった
Q.就職活動を上手く進めるために、周りの社会人に積極的にアドバイスを求めていこうと考えるようになった
Q.就職活動を上手く進めるために、周りのインターンシップ参加学生と積極的に情報交換をしようと考えるようになった
Q.希望するキャリアの実現に向けて、必要な活動を始めた
Q.就職活動の時間を確保するために、自分なりの工夫をするようになった
Q.キャリアに関するセミナーやイベントに、積極的に参加するようになった
Q.現在志望している業界・企業の分析を、積極的に行うようになった
Q.これまで知らなかった業界・企業の分析を、積極的に行うようになった

「就活Good」 × 仕事への適応

「就活Good」 × 仕事への適応/マイナビキャリアリサーチLab

「就活Good」と「キャリアアンカー」の関係

キャリアアンカー別に 「就活Good」高群・低群でクロス集計を行ったところ、「就活Good」高群が多い割合は上から「奉仕・社会貢献(社会貢献志向) 」が65.2%、「専門・職能別コアコンピタンス(専門能力志向) 」60.4%となった。

逆に「就活Good」高群が低い順は、「起業家的創造性(起業家志向)」が最も低く、30.5%、次点で「自立・独立(自立志向)」41.2%となった。

「就活Good」 × 「キャリアアンカー」

「就活Good」 × キャリアアンカー/マイナビキャリアリサーチLab

クロス集計・まとめ

クロス集計によって「就活Good」高群と低群を比較した結果は以下のようになった。

「就活Good」が高い学生ほど、
・プラス思考である
・ストレス耐性がある
・自己分析の充実度も高い(自己理解)
・自己分析に時間をかけたとする割合が高い
・業界研究・企業研究の充実度が高い(仕事理解)
・キャリア形成活動の充実度が高い(啓発的経験)
・インターンシップ・仕事体験の参加日数は多い
・参加したインターンシップ・仕事体験の内容が実務体験に近かった
・キャリア選択に際してキャリア形成活動による効果を感じている(キャリア選択に係る意思決定)
・キャリア観の醸成に際してキャリア形成活動による効果を感じている(方策の実行)
・就職活動に際してキャリア形成活動による効果を感じている(仕事への適応)
・社会人生活へのレディネス(心構え)が高い状態である(仕事への適応)

「就活Good」が高い学生がもっとも多いキャリアアンカーは「奉仕・社会貢献(社会貢献志向)」

一方で、インターンシップ・仕事体験への参加有無は「就活Good」高群と低群で大きな違いは見られなかったが、インターンシップ・仕事体験の参加日数や1社あたりの参加日数は、「就活Good」高群の方が多く、また参加したインターンシップ・仕事体験が実務体験に近かったとする割合も高かった。

このことからも、単にインターンシップ・仕事体験に参加すれば「就活Good」が高くなるというわけではなく、より多くの日数参加し、1社あたりの参加日数が長く、実務体験に近いプログラムに参加することが、学生のキャリア形成にプラスに働き、「就活Good」にも良い影響を与えたと考えられる。​

しかし、自己分析のために行った手段・手法や、業界研究・企業研究の手段・手法などは、「就活Good」高群と低群で違いは見られなかった。これは今回の研究では明らかになっていないが、自己分析や業界研究・企業研究いずれも、さまざまな手段・手法を多数実践すれば良いということではなく、あくまで自分自身に合った手法を実践できたかどうかということが、学生の「就活Good」に影響しているという可能性が考えられる。​

総括

本研究は「就職予定先(内々定先)への満足度」「就職活動自体への満足度」など学生にとっての就職活動の成功に影響する要素を見出すことで、学生がより良い就職活動を行うための示唆を行いうことと、「就職予定先への帰属意識」や「貢献意欲」に影響する要素を見出すことで、企業にとって学生のモチベーションや入社後の活躍可能性などを考える際の検討材料を提供することを目的としてきた。前者を「就活Good」、後者を「就職先へのエンゲージメント」とし、それぞれを目的変数とした重回帰分析を行った。

結果、学生がより良い就職活動を行えたかどうかを表す「就活Good」を向上させるための要素は今回想定した変数の中では導き出せなかった。一方で「就職先へのエンゲージメント」については、インターンシップ・仕事体験を経験した学生限定ではあるが、仕事理解やキャリア選択に係る意思決定、方策の実行等が影響し、「就職先へのエンゲージメント」を向上させることがわかった。​

また、分析対象者をキャリアアンカータイプごとに絞りこんだ場合は、一部のキャリアアンカータイプにて「就活Good」や「就職先へのエンゲージメント」などへの影響がみられる回帰式を得ることができた。よって、価値観といった内的要因ごとに影響が異なることが示唆された。​

一方で、「就活Good」の高群・低群に分けて行ったクロス集計では、「就活Good」高群の学生ほど、自己理解、仕事理解、キャリア形成活動などほとんど項目においても充実度が高いという結果が得られた。

また、インターンシップ・仕事体験への参加有無そのものには「就活Good」の高低別でそこまで大きな違いが見られず、その参加日数、1社あたりの参加日数、プログラム内容が実務体験に近かったかどうか、などで差が見られたことから、キャリア形成においては行動の有無・行動量も重要であるが、それ以上にキャリア形成活動においてどのような内容を経験したかという、内容(質)が重要であるということが示されたといえる。

近年、企業によるインターンシップ・仕事体験実施率が増加傾向にあり、また学生の参加率も8割を超えており、多くの学生が自身のキャリア形成においてインターンシップ・仕事体験を活用しているという状況である。学生にとっては、大学・企業によって提供される数々のキャリア形成活動の中から自分自身がどのようなプログラムに参加すべきかを検討・判断する際の参考にしてもらいたい。

キャリアリサーチLab主任研究員 宮地 太郎・井出 翔子
キャリアリサーチLab研究員 石田 力・長谷川 洋介・中島 英里香・服部 幸佑

詳しくは「PDFデータをダウンロードする」をご覧ください

井出 翔子
担当者
キャリアリサーチLab主任研究員
SHOKO IDE
長谷川洋介
担当者
キャリアリサーチLab研究員
YOSUKE HASEGAWA
中島英里香
担当者
キャリアリサーチLab研究員
ERIKA NAKASHIMA
服部幸佑
担当者
キャリアリサーチLab研究員
KOUSUKE HATTORI
石田 力
担当者
キャリアリサーチLab研究員
CHIKARA ISHIDA