中国が高市早苗首相の発言にこれだけ強烈な反発を示した原因について、さまざまな見方が語られているが、日本国内の議論の中で安全保障論が先行し、「台湾」というファクターの本質的問題がやや見過ごされている感がある。つまるところ、この件は台湾問題に関わるから中国がこれだけ強硬に反発しているという点は、基本事項として抑えなければならない。 毛沢東は敵と敵との間に矛盾を作り出すことを戦術の基本とした。矛盾を作り出すとは、分断を生じさせることだ。今回の中国の過剰にも見える対日制裁と批判の言辞には、日本と台湾、台湾内部、そして日本内部の三点に鋭く楔を打ち込み、分断を作り出す狙いがあるとそれぞれ分析できるだろう。 中国が警戒する「日台関係」 タイミングも悪かった。現在、台湾の頼清徳・民進党政権と中国・習近平政権との関係は最悪レベルにある。しかも、台湾はヨーロッパに対して外交攻勢をかけており、蔡英文前総統のドイ