ヒロシマめざしてのそのそと 作者:ジェイムズ・モロウ竹書房Amazonこの『ヒロシマめざしてのそのそと』は、ジェイムズ・モロウによる怪獣をテーマにしたSF長篇だ。2009年に刊行された作品で、元々は2011年にSFマガジン誌上で翻訳を連載していたが、それが近年になって企画が(早川書房じゃなくて竹書房で)動き出し、改訳と謝辞などを追加の末に単行本化されることになったという。 どのような理由から企画が動き出したのかは不明だが、太平洋戦争戦末期に怪獣が実在するアメリカを舞台にした歴史改変SFというのもあって、今読んでも一切古びておらず、ただひたすらにおもしろい。のちに紹介するあらすじは荒唐無稽なものながらも、裏テーマとなっている〝ヒバクシャ〟の苦悩、反核のテーマ性の強さは本物で、世界情勢が著しく悪化している昨今、作品の重要度は増しているともいえる。 とはいえ、本作の基本は痛快娯楽怪獣コメディであ