絆(きずな)と権力―ガルシア=マルケスとカストロ [著]アンヘル・エステバン、ステファニー・パニチェリ[掲載]2010年6月20日[評者]柄谷行人(評論家)■文学と革命の「友情」 意味があった80年代 1982年ノーベル文学賞を受賞したガルシア=マルケスの名声は、スペイン語圏はいうまでもなく、世界中に広がった。“マジック・リアリズム”と呼ばれたその作風が、近代文学(リアリズム)の界域を一気に超えたのである。日本でも、80年代にあった文学の活気は、マルケスによって付与されたといっても過言ではない。たとえば、大江健三郎が『同時代ゲーム』を書き、中上健次も『千年の愉楽』を書いた。しかし、当時日本でほとんど知られていなかったのは、マルケスがキューバ革命とカストロの独裁を支持し続けたことである。本書が探究するのは、その謎である。 カストロはもともと共産党とは関係がなかったが、米国による経済的制裁のた