浮世絵は印象派の先駆け 日本に移住したギリシア生まれの作家で『怪談』の著者として知られる小泉八雲こいずみやくもことラフカディオ・ハーンは、日本の浮世絵はフランスに印象派が登場する以前から印象派であったと書いている。 浮世絵は、影というものを描かないからである。 八雲は「日本の絵師は影に隠れた自然の普遍性を描いてみせる」とも書いている。 ヨーロッパ絵画が、対象の陰影を描写するのに対して、東洋絵画が、対象の形体を描写することを、正確に言い当てているのである。 八雲が日本で執筆した著書『東の国より』にこのことを書いたのが、ゴッホが亡くなって5年後の1895年。その15年前に、フランスの批評家テオドール・デュレも同様の指摘をしている。ヨーロッパの画家達は、風景の陰影ばかりを見ることで、事物の固有色を見ることを忘れているとモネ論に書いて、印象派の光に満ちた画風を擁護ようごしているのである。 デュレは