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製品開発に特化したワークスペースも間もなく登場

Miroが「AIワークスペース」として進化 キャンバスを“コンテキスト”にエージェントが働き、コード生成

2025年10月28日 17時30分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

 キャンバス型のコラボレーションスペースを提供するMiro。かつては「オンラインホワイトボード」としての活用が中心であったが、AI機能を充実させることで、チームとAIの協働を支援する「AIイノベーションワークスペース」へと進化している。

 2025年10月23日、年次イベントである「Canvas 25 Tokyo」にて開催された説明会では、キャンバス上のチームの思考やコミュニケーションを“コンテキスト”としてAI活用につなげる、ワークスペースの機能強化と製品開発チーム向けのAI製品群「Miro for Product Acceleration」を披露した。

 来日したMiroのCEO兼共同創業者であるアンドレイ・クシド(Andrey Khusid)氏は、「AIはチームワークが生まれる場所で機能すべき」と述べ、「キャンバスは、チームのビジョンであり、チームがどう考え、どうやり取りしているかが詰まった“コンテキスト”として働く」と強調した。

Miro CEO兼共同創業者 アンドレイ・クシド(Andrey Khusid)氏

キャンバスをAIに近づける「AIワークスペース」のアップデート

 Miroは、世界で1億ユーザーを突破、25万社以上の組織・企業が利用するコラボレーションツールだ。日本も注力市場のひとつであり、2026年はデータレジデンシーに対応するなど、ローカル向けの施策にも取り組む。

 同ツールは2024年に、チームのイノベーションの全プロセスを支援する「イノベーションワークスペース」としての機能強化を図った。そして今後は、チームとAIとの協働を推進する「AIイノベーションワークスペース」として進化していく。

 クシド氏は、「AIの登場により個人の生産性は向上しているが、チームワークは取り残されている」と指摘。「AIはチームワークが生まれる場所で機能すべきであり、チームコラボレーションの場こそがコンテキストである」と強調する。その場所こそが、チームの思考とコミュニケーションを映し出す「キャンバス」だとする。

 そのために、AIイノベーションワークスペースでは、キャンパス上の付箋の集まりや設計図、共同作業に伴うメモなどを「ビジュアルコンテキスト処理」によって、AIが活用できるようアップデートしている。

 そこに、キャンバスのコンテキストを基に、特定のタスクや業務をこなす対話型のAIエージェント「サイドキック」が加わる。あらかじめ用意されたエージェントに加えて、自身のタスクや業務にあわせてエージェントをカスタマイズすることも可能だ。

対話型のAIエージェント「サイドキック」

 さらには、キャンバス上のプロセスを視覚化して、それを接続・自動化する「フロー」機能も追加される。フローで視覚化された各ステップは、共同作業ができる点が特徴であり、キャンパス上でアジャイル的に試行を繰り返すのに役に立つという。

「フロー」機能のイメージ

 その他にも、Open AIやAnthropic、Geminiといった、AIモデルが自由に選択できるようになったほか、Amazon QやGemini Enterpriseなどのナレッジと接続して、AIが参照できるようになっている。加えて、公式のMCPサーバーも提供し、外部の生成AIアプリケーションもキャンパスのコンテキストを扱える。

 総じて、AIファーストなキャンバスでの協働、もしくはキャンバスでの協働をAIで活かすための仕組みが整えられた形だ。

製品開発チームの課題を解消する「Miro for Product Acceleration」

 そして、もうひとつの大きなアップデートが、製品開発チームに特化したAI製品群「Miro for Product Acceleration」だ。AIイノベーションワークスペースをベースに、「製品の開発ライフサイクル」における3つの課題を解決するAI機能が統合されている。

 ひとつ目は、製品開発における「何をつくるか」を見極めるためのAI機能群だ。

 「Miro Insight」は、社内に分散された顧客のインサイトを製品開発チームに提示してくれる。CRMやカスタマーサポート、セールスコール、タスク管理、チャットといった外部ツールも含め、顧客フィードバックを自動収集し、優先順位付けする。これらのインサイトは、キャンバス上の製品開発ドキュメントになどに、ドロップ&ドラッグで反映可能だ。

 「Miro Prototypes」は、プロトタイプによる試行を高速化する機能だ。ビジュアライズされたプロトタイプの候補をチームでレビューした後に、そのコンテキストからプロトタイプを再生成。チームのアイデアを活かしたイテレーション(短い期間で開発サイクルを回すこと)を効率化する。

キャンバスをコンテキストにプロトタイプの再生成

 ミロ・ジャパンのシニアソリューションズエンジニアである髙木智範氏は、「キャンバス上にAIが生成したものをチームで利用する、または、チームのアイデアを基にAIが再生成するという、AIと人とが1対n、n対1で協働する環境を提供する」と説明する。

ミロ・ジャパン シニアソリューションズエンジニア 髙木智範氏

 2つ目は、開発チームが「どう早く作るか」を支援するAI機能群だ。

 「Miro Technical Design」は、キャンバス上の情報から、技術ドキュメントや、ユーザーフロー、アーキテクチャ図、シーケンス図などを生成して、開発チームが意思統一を図るための場を提供する。

 「Miro Specs」は、キャンパスをコンテキストにAIコーディングするための機能だ。MCPを通じて、キャンバス上の仕様やデザインの情報や開発ガイドライン、JiraなどのタスクなどをCursorやGitHub CopilotなどのAIコーディングツールにわたす。コード側の更新内容は、Miroに自動反映されるため、常に最新版で開発プロセスを進められる。

キャンバスをコンテキストにAIコーディング

 最後の課題は、製品開発における「目標や戦略の反映」だ。チームのすべての目標を集約する「Miro Goals」やコラボレーション機能を備えたロードマップを共有する「Miro Roadmaps」、ポートフォーリオを集約する「Miro Portfolios」、コミットメントや進捗状況を追跡可能な「Miro Planning & Delivery」といった機能を提供する。

 ここまで紹介したAIイノベーションワークスペースの新機能は、登録制で順次アーリーアクセスが提供されている。Miro for Product Accelerationも間もなく登場予定だ。

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