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朝日新聞デジタル

大切なことは、みんなニノが教えてくれた。SNSとの距離感も、チームビルディングも、仕事の選び方も。人生のお守り『独断と偏見』

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2025.10.28

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  • 佐藤友美
    ライター・エッセイスト

    書籍ライターとして、ビジネス書、実用書、教育書等のライティングを担当する一方、独自の切り口で、様々な媒体にエッセイやコラムを執筆している。さとゆみビジネスライティングゼミ主宰。卒ゼミ生によるメディア『CORECOLOR』編集長。 著書に『書く仕事がしたい』(CCCメディアハウス)、子育てエッセイ『ママはキミと一緒にオトナになる』(小学館)、『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)など。1976年北海道知床半島生まれ。

インターネットで検索すれば瞬時に欲しい情報が得られ、様々な動画があふれている。こんな時代に、こんな時代だからこそ、本と向き合いたい。ライター・エッセイストの佐藤友美(さとゆみ)さんが、おすすめの本を紹介します。

そろそろ「今年の一番」を聞かれる時期になってきた。

「2025年、一番よかったビジネス書は?」
「2025年、一番面白かったエッセイは?」
「2025年、一番インスピレーションを受けた本は?」
「2025年、一番多くのふせんを貼った本は?」
「2025年、一番人に勧めたいと思った本は?」

毎年聞かれるこれらの答え、今年は今のところ全部、全部、同じ。

二宮さんの『独断と偏見』。
二宮さんとは、もちろん、「嵐」の二宮和也さん。ニノのことだ。

こんにちは。ライターのさとゆみです。

仕事がら、本をよく読むし、本について書く仕事も多い。だから、おすすめ本を聞かれる機会も多いのだけれど、今年、2025年10月下旬現在、私のMVPは『独断と偏見』である。

それこそ私の独断と偏見で決める今年の書籍、①ビジネス書部門、②エッセイ部門、③自己啓発部門、④クリエイティブ部門、⑤新書部門の全部で『独断と偏見』を推したい。

何がそんなによいのか。

私にとって「この本を読んでよかった!」と思える瞬間は、たとえば「こんなこと、考えたこともなかった!」となるときだ。
今までの人生で、こんなことを言ってくれた人いなかった。もっと早く知っていたかったよ。うわあ、見える世界が変わっちゃうじゃん。そんなパラダイムシフトがある本が、素晴らしい本だと思う。

ひざを打ったり、目からうろこが落ちたりはしないけれど、私はこういうとき、座っていた椅子からちょっとおしりが持ち上がって半腰になる。
本を読んで「うわあ! そう考えればよかったのか!」と驚いて思わず立ちあがろうとするのだけれど、あ、やべ、ここカフェだった(or ここ電車の中だった or ここ飛行機の中だった)となって、あわててお尻を椅子に戻すのだ。

こんな瞬間が訪れる本はそれほど多くない。だから、1冊に1カ所でもこんな「半腰体験」ができたらモトが取れたと思うのだけれど、『独断と偏見』は、そんな瞬間が、28回くらいあった。ちょっと多すぎる。多すぎて、もはや、ずっと立ちっぱなしで読んだほうがいいんじゃないかと思ったくらいだ。

たとえば、
・仕事を断ることはむしろ、引き受けるよりも愛情がかかっているという考え方
・10の力を出せるけれど3を求められた時にどうするかに対する答え
・遺作は自分で決めたいというクリエイティブへの姿勢
・チームに最適な人数や距離感に関する考え方
・鬼スケジュールの中での優先順位のつけかた
・私利私欲にならないのはなぜかへの明確な回答

もう、どれをとっても「そんなふうに考えるのか!」の連続だった。すごい、すごすぎる。この人、ナニモノ?と思い、そうだよニノだよ、二宮和也さんだよ、と思い直す。
日本で多くの人の心を動かすグループの一員で、世界中の人の心をつかむ俳優で、数多くの大企業に指名されるタレントで、独立した今となっては、それら億単位のお金が動くビジネスの中心にいる経営者なのだ。
超一流のメンバーの中で超一流のアウトプットを求められ続けてきた人。凡人に見えない世界が見えていて当然じゃないか! 

おしむらくは、あまりに画期的なことが書かれすぎていて、密度が濃すぎる。2、3ページ読んでは興奮してヒートする脳を落ち着かせ、でも先を読みたいから読み進めるのだけれど、ああやっぱりこの本はもっとゆっくり読んだほうがいい、でも先を読みたい!とジタバタしておりました。

ひざから崩れ落ちた「あとがき」

この本は、二宮さんと長年のお付き合いになる編集者さんが、「あなたの言葉を文字化し、一冊の本にし、お守りとして持っていたいのです」とオファーしたところからスタートしたと「はじめに」に書かれていた。
お守りかあ、と思う。たしかに、お守りみたいな本だ。人間関係に悩んだとき、自分を信用できなくなったとき、何を大事にすればいいか迷ったとき。私はきっとまたこの本を読むだろう。

素晴らしい本だったと思いながら、「おわりに」までたどり着いた。そこにも再び「この編集の人(長い付き合い)とじゃなきゃ」できなかった本だと書かれていた。だから私は、その編集者さんに向かって、心の中で頭を下げる。
誰だかわからないのですが、この本を世の中に送り出してくれた編集者さん、ありがとうございました。二宮さんにオファーしてくれてありがとうございました。そう思って本を閉じカフェを出ようとして。
……ん? あれ? となった。

「おわりに」のあとに、まだページが続いている。
そこには「編集者によるあとがき」があった。

ひざから崩れ落ちるとはこのことだった。伝票を持ってきたカフェの店員さんにぎょっとされた。私、ぼろっぼろと涙をこぼしていたのだ。

ああああ、そうなのか。「はじめに」を読み返し、もう一度「編集者によるあとがき」を読み返し、「おわりに」を読み返し、だから二宮さんはこの本を作ったのだと知る。この本そのものが、二宮さんの仕事の仕方、人との関わり方の姿勢をそのまま体現したものだったのだ。

やっぱり、これから先の人生で、何度も読みます。お守りにします。この本を、作ってくださったお二人。ありがとうございました。 

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