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「読んだはずなのに思い出せない」人へ。ビル・ゲイツ実践の読書術「マルジナリア」がすごい

たくさんの本が置かれている様子

会議資料を一生懸命読んだはずなのに、翌日の打ち合わせで内容をうまく思い出せない。ビジネス書を読み終えた直後は「目からウロコ」と感じたのに、一週間後には何が書いてあったか曖昧になっている……。

そんな「読んだのに覚えていない」というもどかしい経験、多くのビジネスパーソンが抱える悩みではないでしょうか。

これは、ただ「読んだだけ」で終わってしまう読書の典型例です。ただページをめくって「受動的読書」をしているだけでは、どんなに良質な知識も脳に定着せず、仕事や自己成長に活かすことができません。

本記事では、ビル・ゲイツも実践する「マルジナリア」という読書術を紹介します。本の余白にメモを取りながら読む「アウトプット読書」で、読んだ内容を確実に記憶に定着させ、ビジネスの現場で即活用できる知識に変える方法をお伝えします。

「受動的な読書」では覚えられない

読書の真の目的は単なる情報収集を超え、思考を深め、知識を自分のものにすることにあります。しかし、多くのビジネスパーソンが経験するのは、「読んだ直後には理解したと感じても、あとになると内容をほとんど思い出せない」というもどかしさです。

このような現象が起きる理由は、脳の記憶メカニズムに関係しています。単に目で文字を追う「受動的な読書」では、脳が情報を「重要」と判断せず、すぐに忘れてしまうのです。

文章を読むだけでは記憶に定着しにくいことについて、脳科学者である池谷裕二氏は、次のように述べています。

多くの人は「記憶」というと、詰め込むもの、覚えるもの、入力するものだと勘違いしています。しかし、記憶力は出力しないと鍛えられない。*1

つまり、記憶は「情報を頭に入れること」ではなく、「頭に入れた情報を取り出すこと」によって、はじめて強化されるのです。

この根拠として、同氏は雑誌『Science』に掲載された研究を挙げています。研究では、被験者を2グループに分け記憶テストを実施しました。

  • グループA:50個の単語を連続で見たあと、同じ単語リストをもう一度見る
  • グループB:50個の単語を連続で見たあと、思い出せる単語を自ら発話する

その結果、翌日のテストでは、能動的に単語を思い出して発話したグループBの成績が明らかに高かったのです。*1 繰り返し情報を見るだけよりも、「単語を思い出して言う」というアウトプットをしたほうが、情報が定着していることがよくわかりますね。この原理は専門書やビジネス書を読む際にも同様に働きます。

【例:マーケティングの新しい手法について学んだ場合】

  • ただ読むだけ:「なるほど、これは画期的な方法だ」と思っても、数日後には具体的な内容を説明できない
  • アウトプットする:読みながら「これは〇〇プロジェクトに応用できる」とメモしたり、同僚に説明したりすることで、内容が長期記憶に定着する

効果的な知識習得には、「読んで終わり」ではなく、「自分の言葉で言い換える」「実務と結びつける」「質問や疑問を投げかける」といった能動的な働きかけが不可欠なのです。

読書から得る知識を定着させる方法

🔄 受動から能動への転換

  • ただ読むだけではなく、自分の言葉で言い換える
  • 内容について考え、質問や疑問を投げかける

🔗 既存知識との結合

  • 新しい情報と自分がすでに知っていることを結びつける
  • 実務や日常生活での応用場面を想像する

📝 アウトプットの実践

  • 読んだ内容をメモしたり、他者に説明したりする
  • 学んだ知識を実際に使ってみる

こうした脳科学の知見を実践に活かす具体的な方法として、「マルジナリア」という読書法があります。次項では、このマルジナリアの具体的な実践方法と、ビジネスパーソンの知的生産性を高める効果について詳しく解説します。

本を読みながら書き込んでいる人物

マルジナリアとは?

 
📌 マルジナリアとは
本の余白に自分の考え、疑問、気づき、感想などを書き込む読書法です。語源はラテン語の「マルゴ(余白)」に由来します。

この手法の本質は「読書と同時にアウトプットを行なう」点。情報をただ目で追うだけでなく、自分の思考として言語化することで記憶の定着率が飛躍的に高まるのです。

成功したビジネスリーダーのなかにもこの手法を取り入れている人物は少なくありません。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏もその一人。読書中に閃いたアイデアや重要な気づきを余白に書き留める習慣があることで知られています。*2

ゲイツ氏は年間50冊以上の本を読むことでも有名ですが、ただ読むだけでなく、能動的な読書をしているのです。同氏の独創的なアイデアは、こういった読書習慣からきているのかもしれません。

実際、多くの成功者に共通するのは「情報の消費者」ではなく「知識の生産者」であるという点。マルジナリアは読書を単なる情報収集から、新たな価値を生み出すクリエイティブなプロセスへと変える効果的な手段といえるでしょう。

マルジナリアで何を書き込むのか?

「何を書けばいいかわからない」と思う方もいるかもしれません。マルジナリアに書き込む内容にルールはありませんが、以下の視点を参考にすると、より思考が深まります。

効果的なマルジナリアの書き込み内容

疑問や違和感

「本当にそうだろうか?」「この前提は正しいのか?」と感じた点をそのままメモします。疑問が生まれることで、自分で考えるきっかけになります。

気づきや発見

「初めて知った」「これは重要だ」と感じた情報には、なぜそう感じたのかも含めてメモしましょう。ポジティブな感情を伴った記憶は脳に定着しやすいとされています。精神科医の樺沢紫苑氏によると、「楽しい」と思うと、ドーパミンが分泌され、ドーパミンには記憶力増強作用があるのだそう。*3

キーワードや要約

重要だと思った箇所を短くまとめて書きます。キーワードを抽出することで、情報の本質がつかめるようになります。

マルジナリアを実践してみた

筆者は試験のための論文の参考書として『弁理士試験 論文式試験過去問題集』(早稲田経営出版)を持っているため、この本で実践してみました。

この参考書は以前から所有していましたが、一度読んだだけでは内容がほとんど定着せず、長文の専門的内容に取り組む心理的ハードルの高さから、十分に活用できていませんでした。そこで今回、改めてマルジナリアをしながら読んでいくことにしました。

マルジナリアを実践した様子

当初は書き込みによって本が読みにくくなるのではないかという懸念がありましたが、実際には逆の効果が得られました。余白へのメモ書きが「思考の視覚化」として機能し、重要ポイントが一目で把握できるようになったのです。

マルジナリアを実践した様子をアップで撮影した

特に効果を感じたのは以下の点です。

【マルジナリアで実感した4つの効果】

  1. 情報の整理と構造化:長文が続く専門書の内容が、自分なりのメモによって構造化され、わかりやすくなりました。
  2. 復習の効率化:後日読み返す際、自分の書き込みによって「ここが重要だった」というポイントがすぐに思い出せ、復習時間を大幅に短縮できました。
  3. 知識の連結と応用:「これは実務のこういう場面で使える」「以前学んだ概念とつながりがある」といった気づきをその場で記録することで、自分だけのオリジナルの参考書が出来上がっていく感覚がありました。
  4. 成長の可視化:最も印象的だったのは、後日再読した際に、初読時には難解だった専門用語や概念が自然に理解できるようになっており、「自分は確実に前進しているんだ」と成長を実感できたことです。

今後もこの読書法を続けて、自分だけの知の積み重ねを楽しみたいと思います。

明日から始めるマルジナリア 3ステップ

気軽に始める

  • 気になった言葉に〇をつけるだけでOK
  • 短い感想や疑問を書き留めるところから

自分なりの記号体系を作る

  • 重要な箇所、疑問点、応用アイデアなど
  • 後で見返したときに意味がわかる記号に

振り返りの習慣をつける

  • 定期的に書き込んだ本を読み返す
  • 自分の成長と知識の定着を確認する

***

「読んだだけで終わる読書」を卒業するためには、本と対話する姿勢が不可欠です。マルジナリアは、読書を「受動」から「能動」へと変えるシンプルながら効果的な技法。最初は気負わず、気になった言葉に〇をつけたり、簡単な感想を書いたりするところから始めてみてください。

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