ポルノグラフィティ「THE REVO」特集|「僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON」に響く革命の歌

テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」第1期を後押しした「THE DAY」から9年──ポルノグラフィティと「ヒロアカ」の再タッグが、再びお茶の間をにぎわせている。

日本のみならず海外でも高い人気を誇る「ヒロアカ」のアニメシリーズが最終章に突入するにあたって、岡野昭仁(Vo)と新藤晴一(G)は「THE REVO」なる楽曲を書き下ろした。「revolution(革命)」の略称である「REVO」をタイトルに冠したこの曲は、王者のような貫禄を漂わせるロックチューン。壮絶な展開を見せる物語と並走する力強い1曲だ。

「THE DAY HAS COME」という「THE DAY」との連動を感じさせるこの曲を、ポルノグラフィティとしてどのように作り上げたのか。岡野と新藤の2人に聞いた。

取材・文 / もりひでゆき

大きな縁を感じた再タッグ

──デビュー25周年を迎えた昨年9月から約1年が経ちました。その間は少しゆっくり過ごされていた感じですか?

岡野昭仁(Vo) そうですね。ただ、NHK広島さんとコラボレーションした「言伝 ―ことづて―」もありましたし、今回の楽曲のお話もいただいていたので、それを念頭に置いて曲はたくさん作ってました。海外に行っていたことで環境的な変化もありましたからね。そういう部分で制作意欲が増していたところもあります。

新藤晴一(G) 僕もまあ曲を作ったり、なんやかんやはしてました。でも基本的にはそんなにガツガツ動いていた感じではなかったですよ。そのうちまた忙しくなるだろうから、嵐の前にちょっと身を潜めているような感じの生活。何してたかなあ。ゴルフばっかりやってたんじゃないかな(笑)。

岡野 ここにきてだいぶ騒がしい感じになってきましたけどね(笑)。

──ポルノ関連のうれしいニュースが続々と届いていますからね。今回のお話のメインは、ニューシングル「THE REVO」について。表題曲は10月4日に放送がスタートしたテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON」のオープニングテーマとなっています。振り返れば「ヒロアカ」の第1期オープニングテーマがポルノの「THE DAY」だったので、約9年ぶり、2度目のコラボレーションとなります。

岡野 しばらく海外で過ごしていたこともあって、日本のアニメのコンテンツとしての強さを改めて感じていたんですよ。「ヒロアカ」に関しても、海外で大人気な作品ですし。そういう意味では、僕らの音楽が日本のみならず、アニメを通して世界に向けて広がっていくことへの期待はすごくありますよね。どう広がっていくかは未知数ではあるけど、「ヒロアカ」にまた関わることができるのは純粋にうれしかったし、いつも以上に気合いが入りました。

新藤 「THE DAY」は自分らのファンだけではなく、「ヒロアカ」ファンの方たちにもかわいがってもらっているんですよ。知り合いの息子さんが「THE DAY」を作った僕らのことをすごくリスペクトしてくれていたりもするし。そんな状況を身をもって体験していたので、今回またオープニングテーマのお話をいただけたことにはすごく大きな縁を感じましたね。本当にありがたいお話だなと。

──アニメの始まりと終わりをポルノ楽曲が担うというのも大きなことですよね。

岡野 本当にそう思います。「ヒロアカ」は第1期の頃からものすごく面白いとは感じていたけど、ここまで大きな作品になることまでは想像できていなかったというか。この前、King Gnuの井口(理)くんとたまたましゃべったときに、「近年であれほどまでにいい終わり方をしたマンガはない、最高の作品ですよ」と言ってましたけど、本当にそれくらいビッグコンテンツになっていますからね。作者である堀越耕平先生の気合いが、すべてのコマの絵から伝わってくる最終章のアニメ化なので、繰り返しになりますけど僕らも相当気合いを入れて臨みました。

岡野昭仁(Vo)

岡野昭仁(Vo)

原作者・堀越耕平がFINAL SEASONに込めた思い

──「THE REVO」の作曲は昭仁さん。楽曲の方向性に関しては、アニメサイドから何かオーダーはあったんですか?

岡野 制作にあたっては、まずアニメサイドの方とミーティングをしたんですけど、それがもうすごく熱を帯びていて。皆さん、最終章に向けて強い熱を持ってらっしゃったんですよね。その中で、堀越先生がおっしゃっていたというイメージを伝えていただいたんです。最終章として終わりを迎えるんだけど、そこでキャラクターたちの物語が終わるのではなく、その先も未来は続いていくという思いが込められているんだと。そのお話をお聞きしたときに、今回はテンポがすごく速くて、いかにもアニメのオープニングっぽい曲ではないほうがいいだろうなと感じました。BPM的には低いけど、これまで積み重ねてきたものが少しずつ爆発していくみたいな、そんなイメージを受けたんですよね。で、新藤とそれぞれ何曲か作った中で、僕の曲を選んでいただいたという流れです。

──今おっしゃった昭仁さんのイメージは、楽曲を聴くとすごく納得できますよね。全編に熱さは注がれているんだけど、いい意味で落ち着きがあって、どっしりとした覚悟や決意が見えてくるというか。

岡野 そうですね。けっこういろんなタイプの曲を作りましたけど、この曲はわりと始めに自分が感じたイメージに近かったというか。ミーティングを通して受け取ったトーンを強く意識して作ったので、選んでいただけてうれしかったですね。

──歌詞は晴一さんが手がけられています。作詞作業はいかがでしたか?

新藤 これは僕のやり方なので正解かどうかは置いておいて、自分の場合、タイアップのときは原作なり台本なりをあまり読み込まないで書いたほうがいいと思ってるんですよ。読み込むと作品の世界に引っ張られすぎてしまうところがあるから、作品と楽曲の関係が単純に“1+1”になっちゃう。それを掛け算にするためには、作品の世界と完全に一致しないほうがいいのではないかなと。「THE DAY」のときはそういうやり方をしながら、僕の中の“ジャンプ魂”を燃やして書いたんです。僕は昔から「週刊少年ジャンプ」がめちゃくちゃ好きで読んでたから、そのジャンプで連載されている「ヒロアカ」の世界も僕なりの解釈できっと理解できるはずだと。

──なるほど。でも今回はアプローチを変えたわけですか。

新藤 そう。アニメサイドの方とお話をさせていただいたときに、今回は堀越先生や制作陣の方々はもちろん、「ヒロアカ」ファンの方と同じテンションで書いたほうがいいだろうなと感じたんです。実は1回ボツになった歌詞もあるんだけど、それはそのテンション感がまだちょっと違ったみたいで。そういう理由でボツになることはあまり経験していなかったし、自分のやり方とは違う作詞のアプローチではあったから戸惑いはしたんだけど、やっぱり関係者の皆さんの熱量がすごかったので、それに感化されてがんばって書いた感じでしたね。

ポルノグラフィティ「THE REVO」期間生産限定アニメ盤ジャケット

ポルノグラフィティ「THE REVO」期間生産限定アニメ盤ジャケット

革命を表現するために

──「THE REVO」というタイトルが示す通り、“革命”がキーポイントになっている歌詞ですよね。

新藤 歌詞を書くにあたって原作を読ませてもらったんですけど、「THE DAY」の頃に読んだ1、2巻あたりと、最終巻付近ではまったく世界観が変わっているように感じたんですよね。僕としては、どんな進化を遂げてきたらこれほどまでに絵柄や世界観が変化するんだろうって、ちょっと想像できないくらいの衝撃だったんです。きっとそこには革命的な何かがあったはず。そう思ったところから革命、「THE REVO」に行き着いた感じでした。

──タイトルの表記もそうですが、「THE DAY」とのリンクを感じさせる歌詞でもありますよね。

新藤 「THE DAY HAS COME」というフレーズも使ってますからね。あれはね、「ヒロアカ」に対しての感謝の意味を込めて入れました。もしスタッフから「『THE DAY』のフレーズ入れたらどうですか?」みたいなことを言われてたら絶対イヤだって言ったと思うんですよ。そんなあざといのはイヤだって。でも誰も言ってこなかったから(笑)、じゃあ自分の思いとして入れるべきだなって。

──そういったリンクはありつつも、「THE DAY」からしっかり物語が進んだ先の、最終章にふさわしい歌詞になっているのが本当に素晴らしいと思います。

新藤 そうそう。「THE DAY」は完全に始まりの歌だったからね。曲も含めて、物語というのは同じ場所にい続けちゃダメなんですよ。物理的な場所なのか、精神的な部分なのか、主人公たちの関係性なのか、なんでもいいんだけど、とにかく絶対に移動はしないといけないんです。「ヒロアカ」という作品の中にも本当にたくさんの移動があったと思う。だからこそ「THE REVO」もそうでないといけない。今回は間違いなく、「THE DAY」のときとは違う位置にある歌詞だなと思っています。

──アレンジにはtasukuさんとポルノの名前がクレジットされています。ピアノが印象的なサウンドですが、どのように構築されていったんですか?

岡野 ピアノがまず始めに流れるというのは早い段階で決めてましたね。そのうえで、じゃあギターがどう入ってくればいいんだろうとか、細かい部分に関してはtasukuくんとかなり密に話をしました。インタビュー前にLINEのやりとりを見返したんですけど、申し訳ないくらいめちゃくちゃなリクエストをtasukuくんに投げたりもしていて(笑)。「ドラマティックなイントロにしてほしい」とか、「ギターの入りはハーフミュートにしてほしい」「Radioheadの『Creep』のサビ前みたいな雰囲気はどうだろう?」とか。それだけ気合いが入ってたということだとは思うんですけど、だいぶ右往左往している感じもありましたね(笑)。

──熱量を感じさせつつ、落ち着いたトーンで全体をまとめる難しさもあったでしょうし。

岡野 そうそう。派手さのある“THEアニソン”みたいなサウンドとは違うところにたどり着きたかったからこそ右往左往したんだと思う。ストリングスを入れたタイミングもあったんですけど、「この曲には合わないよね」という判断で省いたりもしましたし。

──とりわけタイアップ曲ではサウンド的な引き算をしていく怖さもありそうですが。

岡野 うん、それはすごくありました。でも、淡々とした中から感情が爆発していくというこの曲のアプローチには、キャッチーで派手なサウンドはやっぱり必要ではなかったんですよね。今回はtasukuくんとのやりとりも含め、アレンジを詰めていく作業に時間をじっくりかけることができたので、すごく楽しかったです。

新藤 結果的にはすごくバンドっぽい曲になりましたよね。レコーディングのときも、いつものミュージシャンたちと「せーの」で録りましたし。すぐにいいテイクが出せるミュージシャンばかりなので、それに負けないよう、がんばってギターを弾きました。