今年の8月から始まった分子標的治療薬「フリュザクラ」による抗がん剤治療は、ちょうど3ヶ月が経過しました。
今週は、休薬を経ての再開からまもなく1週間。来週からは、再び1週間の休薬に入ります。今回は「フリュザクラ」の量が適正だったこともあり、心配していた副作用は今のところ見られません。身体のだるさや血圧の上昇といった症状はあるものの、食欲があり、自宅内での移動も問題ないように思います。
エンシュアやイノラスといった経腸栄養剤、そして補中益気湯などの服用も、少なからず効果を発揮しているように感じます。
治療開始当初の「フリュザクラ」は、これまで経験した抗がん剤とは違い、思いがけない副作用に悩まされました。
口内炎が悪化して歯槽膿漏となり、最終的に1本の歯を失うことに。食欲はあっても、食べるたびに痛みが走り、本当に気の毒でした。それでもエンシュアを摂取できたことで、栄養不足にはならなかったように思います。
ただ、身体の痛みとだるさは強く、ベッドから起き上がるのもやっとの状態。トイレに行こうとしても間に合わないこともあり、衣類の交換や後始末に追われることもありました。
副作用だと分かってはいても、このままでは通院も難しくなるのでは…と不安が募りました。訪問診療や訪問介護への切り替えも考えざるを得ず、介護する側としても気持ちが沈みかけた時期です。
直腸がんとの闘病生活はすでに5年以上になりますが、「フリュザクラ」開始直後の数週間が、これまでで最もつらい時期だったと思います。
そんな厳しい状況の中でも、夫は冷静さを失うことなく、自分の体調を詳細に記録するようになりました。
私も麻薬性鎮痛剤の服用時間などを簡単にメモしていましたが、夫のほうがむしろ主体的に記録を取るようになりました。
服用量はもちろん、痛みの度合いやエンシュアの摂取量、バイタル、排便・排尿の状況など――研究者としての経験を生かした、実に緻密な記録です。
夫は「記録しておくと、体の調子がよく分かるからね」と話し、自分の体を客観的に見つめていました。
特に、体内の老廃物がしっかり排出されているかどうかに強い関心を持っており、むくみを防ぐための利尿剤の効果なども丁寧にチェックしていました。
科学者としての姿勢が、闘病の中にも生かされているのだと、改めて感じます。
夫は過酷な治療も「自分の体で実験しているようなもの」と捉え、「こうした経験ができること自体がありがたい」と話します。
現在受けている分子標的治療薬「フリュザクラ」は、尿たんぱくが出やすく、腎機能への影響が懸念される薬剤です。
服用量と休薬のバランスを取りながら、どこまで継続できるかは分かりません。
それでも夫は、「少しでも長く治療を続けたい」と前向きであり、「自分の経験が、今後の治療に少しでも役立つなら本望だ」とも言います。
その言葉に、私もただ祈るばかりです。夫の願いが叶い、穏やかな日々が少しでも長く続きますように。
治療の道のりは決して平坦ではありませんが、夫の冷静な姿勢と前向きな言葉に、私自身も励まされています。
焦らず、今できることを大切にしながら、これからも共に歩んでいきたいと思います。