ログミーBusinessでは「転職した理由・しなかった理由」をテーマに読者アンケートを行いました。その特集の続編として、アンケートの回答者に追加インタビューを実施。転職を決めた背景やキャリア観についてさらに深掘りました。 あわせて、転職が当たり前になりつつある現代において、マネジメント層はどのように組織運営やキャリア支援を行うべきかについてもお話をうかがっています。
今回は卸売業で働くヒデさんのインタビューをお届けします。前職では活躍の場が限られ成長実感を得にくかった一方、現職では未経験の領域にも踏み込み、自信と前向きさを取り戻しましたと語ります。また、マネジメント層として実際に行っている、メンバーのエンゲージメント向上を目指した取り組みも併せてご紹介します。
前回の記事はこちら 今回インタビューしたログミーBusiness読者
ヒデ(卸売業 50代)
マネジメント職を希望した転職の経緯
——キャリアアップのための転職で、具体的にどのようなスキルや経験、ポジションを求めて決断されたのでしょうか?
ヒデ氏(以下、ヒデ):自分が一貫して歩んできた法務の経験を活かせるポジションを求めて転職しました。その中でも、年代的に後進へのナレッジの共有や育成に携わりたいと希望し、マネジメント職のポジションの優先度を高く設定して転職活動をし、現職会社から内定を獲得。同社への転職を決断しました。
——転職前の職場で「ここでは成長が難しい」と感じたのはどのような場面や出来事でしたか?
ヒデ:業界柄、これまで積み重ねてきたキャリア・経験を活かすことが難しいと感じたからでした。
(配属されるまでは)これまでの経験を活かした業務遂行を期待されていたようでしたが、会社を取り巻く環境の変化などのため、実際にはそのような業務が思いのほか少なく、活躍や成長が難しいと感じました。
また、業界特有の知識・経験を得て、メインのいわゆるコンプライアンス業務において活躍に至るまでは、相応の時間・労力がかかる蓋然性が高いと感じたため、年齢との関係を考慮し、これまでの経験をストレートに活かせるポジションが望ましいと考えました。
仕事に前向きになり、新しい発想も生まれるように
——アンケートでは転職後に「仕事に前向きになり、自身の成長を感じる」と答えていただきました。具体的にどのような変化がありましたか?
ヒデ:マネジメント職ですので管理系の業務が多々ありました。子会社のとりまとめのほか、中には直接経験したことがない業務や、人間関係の構築から始めなければならないものもあり、かなり不安でした。
しかし、思い切って踏み込んだことでクリアし、かえって良い関係が構築でき、(仕事が)上手く回るようになりました。
こうして現職での仕事に自信を持つことができ、仕事に前向きに取り組むことができています。その不思議と(今までは)見えなかったものが見えてきたり、アイデアも浮かんできたりします。
“部下の声を聞き、突き放さない”ことが重要
——アンケートではマネジメント層へのアドバイスとして、メンバーの転職を防ぐために「声を聞き、寄り添うこと。突き放さないこと」が大切だと答えていただきました。そう考えられた理由は何ですか。
ヒデ:自分が「声を聞き、寄り添うこと。突き放さないこと」と逆のことをされ、その時の職務環境、ひいては仕事そのものに対するモチベーションが著しく低下する経験をしたからです。
トップダウンが過ぎ、従業員一人ひとりの声が全く活かされない経営がなされ(上場会社なので、従業員の声を聞くと言っていましたが、実態はまったく逆)、無力感を覚えていました。この点は、私だけが感じていたわけではなさそうで、他の部門を含めて離職が相次いでいました。
現職では、一人ひとりの声に耳を傾ける取り組みを始めています。道半ばですが、メンバーの心の声を垣間見ることができ、エンゲージメント向上につなげられそうです。
1on1は2週間ごとに実施しメンバーの声を把握
——マネジメント層がメンバーに寄り添うために必要な行動について、日常業務で実践できる具体的な方法を教えてください。
ヒデ:コミュニケーションに尽きると思います。
なかなかメンバーからは言い出しづらいことが多いので、場を作ることをこころがけており、2週間に1回、1on1の時間を設けています。部長も2週間に一回、メンバーとの1on1の場を設けてくださっているので、実質的に週一で、メンバーの素直な声や忌憚のない意見を聞く場がある状態です。
また、ことあるごとに「困ったことなどがあったら、いつでも声かけしてください」と伝えたり、気になる動向があればこちらから声をかけるようにしています。
このようにコミュニケーションを密にとり、メンバーの生の声を吸い上げることだと思います。
——マネジメント職として実践されている1on1や声を聞く取り組みは、まさに前職での経験を糧にした組織づくりですね。ヒデさん、貴重なお話をありがとうございました!
ヒデさんの事例は、これまで培ってきた法務の専門性を活かしつつ、後進育成にも関わるための“場の選び直し”が、前向きさと成長実感の回復につながったことを教えてくれます。
また、前職での“社員の声が届かない”経験を糧に、現在は密なコミュニケーションを通じてメンバーのエンゲージメント向上に取り組んでいます。人材の離職を防ぎ、パフォーマンスを最大化するためにも、マネジメント層が形式的な管理に終始せず、一人ひとりの声に真摯に耳を傾ける姿勢が求められているのではないでしょうか。
このほかにもログミーBusinessでは、
マネジメントや
キャリア形成に役立つ記事を多数掲載しています。転職する人もしない人も、納得できるキャリアを設計するためのヒントとして、ぜひご活用ください。