豊かな緑に包まれて、ウイスキーを愉しむ。建築家・工藤桃子さんと巡るサントリー〈白州蒸溜所〉。
くどう・ももこ/多摩美術大学環境デザイン学科卒、組織設計勤務のち工学院大学藤森照信研究室修士課程修了。2016年に〈MMA Inc.〉設立。建築設計のほか、インテリアデザイン、展覧会の会場構成も手掛ける。
建築家・工藤桃子さんと訪ねる生まれ変わった〈白州蒸溜所〉。

日本初の本格的なモルトウイスキー蒸溜所として、京都に近い天王山山麓に〈サントリー山崎蒸溜所〉が建設されたのが1923年。ウイスキーの仕込みを開始した翌1924年と合わせ、ジャパニーズウイスキー誕生の瞬間として歴史に刻まれている。その後50年、拡大するウイスキー需要に応えるべく1973年に建設されたのが〈サントリー白州蒸溜所〉だ。標高約700メートル、山梨県北杜市の広大な自然の中に立ち「自然との共生」を標榜。現在は原酒を木桶槽だけで発酵させるなど〈山崎蒸溜所〉とは違うタイプのつくりを行うことで、日本のウイスキー文化の成熟を支えている。
2023年、50周年を機にリニューアル。工藤桃子さん率いる〈MMA inc.〉設計の「テイスティングラウンジ」と、レストラン〈Hakushu Terrace〉が「森の蒸溜所」の新たなシンボルとして訪れるゲストを迎えている。
初めて訪れた際の印象を工藤さんに訊くと「工場らしからぬ環境に驚きました」との答えが。「森の中の長いアプローチを経て、ようやく建物が見えてくる。森林の保存に取り組みながらものづくりをするという理念にも感銘を受けました」

二つの施設の設計も、「森の自然を感じる場」であることを第一に考えたという。
「テイスティングラウンジは、周囲の森林の緑を室内に美しく取り込む窓から考えました。加えてカウンター上部にも、外の光や色彩を取り入れるアルミ板を設置しています。〈HakushuTerrace〉は、外の景色に触れ、風を感じられる半屋外のスペースを広く取っています」
50年目の大改修ゆえ、「次の50年も見据えて考えた」とも。「〈Hakushu Terrace〉の外壁は、左官材と銅板材で。経年で変色し、周囲のカラマツの森となじむように考えました」
今回のリニューアルでは、施設の刷新に加え、品質向上に向けた新たな取り組みも始まっているという。中島俊治工場長にも話を聞いた。

「新たな取り組みの一例が、大麦を麦芽へと変化させる製麦工程の一つ、フロアモルティングの導入です。原酒づくりの原点に返る伝統的な製法で、より高い品質を追求しています」
〈山崎蒸溜所〉で技師長を務めていた中島工場長は、リニューアルと同時期の2024年に新工場長に就任している。
「この環境で仕事ができるのは、私たちの大きな誇りであり喜び。来場された際には、自然と技術が調和するものづくりを感じていただけたらうれしいです」
豊かな自然と、自然が育む味わいを愉しみつくす。






住所:山梨県北杜市白州町鳥原2913-1
TEL:0551-35-2211(受付9:30~16:30)
営業時間:9:30~16:30(最終入場16:00)
休日:年末年始、工場休業日休(臨時休あり)
HP:https://www.suntory.co.jp/factory/hakushu/
見学は公式サイトより要予約。
ストップ!20歳未満飲酒・飲酒運転
















