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「援助縮小」が子どもたちの未来を止める サヘル・ローズさんが見た支援の現場

更新日: 公開日:
イラクの難民の女性から贈られたバラの飾りとワンピースを手にするサヘル・ローズさん=関口聡撮影

幼少期に母国イランで戦争を経験し、8歳で養母とともに来日した俳優のサヘル・ローズさんは長年、イラクやヨルダンにいるシリア難民の子どもたちを支援し、日本でも児童養護施設の支援を続けている。人はどうして助け合い、外国への援助はなぜ必要なのか。その思いを聞いた。(聞き手・竹下由佳)

昨年6月、国際協力機構(JICA)の活動視察の一環で訪れたタジキスタンで、アフガニスタンから逃れてきた子どもたちに教育や経済的な自立支援のための職業訓練をする施設を訪れました。難民となり、異国へ来ても働かないと生きていけません。みんな働きたい。だからJICAや国連児童基金(ユニセフ)などが支援していました。

でも、トランプ米大統領が援助縮小を決めた後、中心だった米国からの支援がピタッと止まり、学ぶために必要な資材や材料が届かなくなっていました。米国の決断で、物乞いをしたいわけでもない、自立したいと思っている人たちの未来すら止められてしまったんです。

世界から「忘れられてしまう人々」と出会って

昨年2月には、国際NGO「難民を助ける会(AAR Japan)」とともに、初めてアフリカ・ウガンダに行きました。隣国のコンゴ民主共和国などから逃れてきた約13万人が暮らす難民居住地では、ウクライナなど世界で戦争や紛争が続く中で、支援が届かなくなっていました。

そこで出会った子どもたちは、無我夢中で私の手を触った後、自分の顔に塗るように触れるのです。「何をしているの」と聞くと、自分たちよりも白い皮膚に触って塗れば肌の色が明るくなるんだ、自分たちの肌の色が黒いから忘れ去られているんだ、と。肌の色が白くなれば命の順位が上がる、と子どもたち自身が感じていたのです。

コンゴ民主共和国から逃れてきた人々が、ウガンダの難民キャンプで列に並んでいる=2018年3月19日撮影、ロイター

アフリカの紛争などは、日本ではなかなか継続的にニュースになりません。まだ終わっていないのに、世界から忘れられてしまう人がいる。取り残された人たちは、自分たちは見放されている存在だと思っている。この感情は、世界の戦争や紛争に関わってきた欧米諸国の無責任な放棄が引き起こしたものだと思います。だから、米国が援助の縮小を決めたことは「すごく身勝手」だと感じています。

援助がストップすると、貧しさも戦争も増え、世界は悪化していくと思います。それぞれの国が「自分たちさえよければいい」と壁を築いてしまったら、人間社会は崩壊してしまうでしょう。それぞれの国が責任を持ち、互いを考えて行動し、共存することが必要だと思うんです。

優しいまなざしをもらったからこそ

私は、日本の方々にたくさんの優しい言葉とまなざしを幼少期にもらったからこそ、自分にできることは「優しさの橋渡し」だと考えています。支援されてきて今の自分があるので、そういう人を増やしたい。次の世代にバトンを渡したい一心でやり続けています。

支援というのは、社会をよりよくするために、自分ができるアクションではないでしょうか。例えば、近所の人でもいい。その人に優しくする。その1人が自分も誰かに何かしたいって思えるように。お金だけじゃなく、寄り添うことや言葉も含めて支援だと思います。

独りよがりと言われても全然かまわない。独りよがりでも、何かアクションを起こして誰かをハッピーにしている人って素敵です。目の前にいる人に対してじゃなくてもいい。例えば、チョコレートやコーヒーで、フェアトレードのものを買うことで誰かの人生を搾取するのではなく、応援できます。募金やボランティアに参加することでもいい。何かに関わること、人と会うことを放棄しないで欲しいと思います。

サヘル・ローズさん。難民の子どもたちや女性たちの支援を続けている=関口聡撮影