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失われた10年の元凶は「大手町・丸の内不況」だった!? 時価総額101位以下の企業をベースにすれば日本は確実に成長している!

〔PHOTO〕gettyimages

毎月4日、14日、24日と3回書くと約束した「ふっしーのトキドキ投資旬報」が最近は月1回ペースが常態化してしまい、あまりに"トキドキ"過ぎると怒られております。ごめんなさい。

非大手町・非丸の内には元気な企業が多く存在する

じつは最近また、暇でもないのに暇なことを調べました。東京の中心部である千代田区・中央区に本社がある会社(上場企業)に投資をしたら儲からないということを証明しよう、と。前々からこのコラムでも主張している通り、日本のここ10年間の問題は大企業の劣化にあるということを別の側面から表現できないかと考えたわけです。要するに日本は「大手町・丸の内不況」である、と。

東京の千代田区・中央区に本社のある上場企業は全部で654社あります。多いですね。県によっては上場企業が10社に満たないところが少なくないことを考えると、この2つの区だけでこれだけの上場企業を抱えているというのはすごいことだと思います。

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そこで、この654社の株価を調べてみました。予想は的中、平均で「+31.9%」でした。2003年12月から2013年12月までの10年間で東証株価指数(以下TOPIX)は「+39.8%」でした。つまりTOPIXに対して「約8%」もマイナスなんです。

一般的には、「東京は元気で地方が暗い」という印象があり、事実そのように感じられることも少なくありません。しかし、私は東京にも地方にも両方出歩いているのでよくわかっていたのですが、少なくとも上場している会社についていえば、地方でも東京でも、非大手町・非丸の内には元気な企業が多く存在するのです。この結果は私の実感と合致しています(ぜひみなさんも追試してみてください! きっと同じ結果が出てくるはずです)。

そしてさらに、全上場企業から千代田区と中央区を除いた会社群(2,896社)の株価を調べてみたら、なんと10年間で「+49.0%」とTOPIXを「10%」も上回っていたのです。

みなさん、どうですか? これは私の実感とぴったり重なっているのですが、みなさんの実感と合っていますか? 千代田区・中央区銘柄を「帝都銘柄」と呼ぶとすると、非帝都銘柄の10年間の成績は「+49.0%」、それに対して帝都銘柄が「+31.9%」ですから、じつに「17.9%」も非帝都銘柄の株価が上回っているのです。

「TOPIX CORE30」と非帝都銘柄の圧倒的な差

以下は日本の時価総額上位30社です。

日本たばこ産業/セブン&アイ・ホールディングス/信越化学工業/武田薬品工業/アステラス製薬/新日鐵住金/小松製作所/日立製作所/パナソニック/ソニー/デンソー/ファナック/日産自動車/トヨタ自動車/本田技研工業/キヤノン/三井物産/三菱商事/三菱UFJフィナンシャル・グループ/三井住友フィナンシャルグループ/みずほフィナンシャルグループ/野村ホールディングス/東京海上ホールディングス/三菱地所/三井不動産/東日本旅客鉄道/日本電信電話/KDDI/NTTドコモ/ソフトバンク

みなさんにはこの会社群がどう見えるでしょうか? 立派な会社だなあ、就職したいなあ、投資したいなあ、と思われるかもしれませんね。

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これら時価総額上位30社に投資をするインデックスとして「TOPIX CORE30」という指数があります。この指数の同時期2003年12月から2013年12月の成績はというと、「+20.5%」です。TOPIXの「+39.8%」に比べると、じつに「20%」も引き離されています。さきほど挙げた帝都銘柄の「+31.9%」に比べてもダメダメです。非帝都銘柄は「+49%」ですから、圧倒的な差がついています。

もちろん全部がダメダメなわけではないですよ。よい会社もたくさん含まれています。しかし、総じてみるとやっぱりダメだったんですね。

私は日本経済がここ10年間ダメなように見えていたのは、帝都不況、特に時価総額上位30社の業績や株価がダメだったからだと見ています。そしてその原因は主に「老害」だと思っています。老害をなんとかしたい、若い経営者にどんどん挑戦してもらいたい、と思っています。しかし、時価総額上位企業の老人が支配する経営陣の力は強すぎて、株主も組合も従業員も対抗できない(クビにできない)ので、老人経営者の天国になっている。その現状こそが問題なのです。

時価総額上位30社だけではなく、時価総額上位100社を除いた日本の全上場企業(3450社)の10年の株価の成績をみると、なんと「+54.9%」になります。圧倒的ですよね。私が常日頃からこの上位100社を除いたインデックスを作るべきだと言っているのは、このような理由からなのです。

意識改革と若返りを断行しさえすれば成長の余地はある

国内の年金資金や投資信託では、日本株への投資の場合、時価総額上位100位の会社にざっと全体の7~8割の資金が割り当てられています。特に時価総額上位30社には4割ほどが投入されているのではないでしょうか。よって、アナリストやファンドマネジャーの時間の大半がこれらの企業の調査にあてられているわけです。

この10年間、ずっとダメだった会社群に時間が割かれている。これでは付加価値が出せるわけがないですよね。実際に著名な電機セクターのアナリストと話をしてみると、何度言ってもまったく変わろうとしない社長や経営陣に最近は辟易しているようです。そのような頑固でわからず屋の社長とは丁丁発止のやりとりにもならず、もはや四半期決算のチェックをするだけの「数字のチェック屋さん」になっていると自嘲されていました。

最近、NHKの籾井会長がかなり問題発言を重ねて失笑を買っていますが、あそこまで酷くはなくても、残念ながら同じような経営者が多すぎます。そして社長、会長を歴任した後に相談役などで禄を食む人たちがたくさんいます。

あらゆる角度からどのように考えてみても、少なくとも電子メールを秘書に打たせている段階で論外ではないでしょうか。高度な判断業務が経営者の仕事ですが、グローバル化が進み、どのような産業であれIT化が必須ななかで、電子メールも自分で打てない人たちが経営判断をしていてはどうにもなりません。

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こういうことをいうと、「いや、大企業は現場の人たちが優秀で、彼らが業務を回しているのだ」という人がいるのですが、いくら優秀な現場の人たちでも、自分のいる部署を廃止することはできないし、したいとは思わないでしょう。

今、必要なのはグローバルな見地から今後の日本や世界の動向を見定めて、不要な部署を廃止して、今後必要とされるであろう分野や事業ドメインに経営資源を集中することですが、その判断については非常に遅いと言わざるを得ません。

私は「ひふみ投信」「ひふみプラス」という日本株投信のファンドマネジャーです。私たちのは国内の日本株の運用ではトップクラスの成績を出しています。私たちが投資するときは、①非帝都企業②時価総額上位100社「以外」③オーナー経営④わかりやすい商品やサービスを展開している⑤過去増収増益トレンド、という基準で会社を選んでいます(もちろんたくさんの例外も存在しますが)。

日本の大企業を変えるためには、決算短信や有価証券報告書に元役員で現在顧問や相談役の名前で会社から報酬が出ている人たちの開示を義務付けるといいでしょう。それだけで日本はかなりよくなります。顧問や相談役の人数が多いところを投資対象から除外するだけで運用成績は格段とよくなるに違いありません。まあ、経団連が大反対してまず実現しないでしょうが・・・。

私が考えるよい経営陣とは、

1)会社のホームページの社長挨拶文に「私」ないし「私たち」という主語が使われている
2)会社のホームページで、社長も役員もすべて写真付きで紹介をされている
3)役員の平均年齢が55歳以下(時価総額上位100社)もしくは50歳以下(時価総額101位以下の会社)
4)役員の数が10名以下

この4つの条件を満たす会社に投資すれば、TOPIXを大きく上回る可能性は極めて高いと思います。業種は関係ありません。

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日本は非帝都企業、もしくは時価総額101位以下の全企業をベースにしてみると、確実に成長しています。そして、時価総額101位以下の会社は全部で3450社もあるのです。

私は日本企業の成長や未来をぜんぜん諦めていません。もし日本の大企業の経営陣も大きな意識改革と若返りを断行しさえすれば(あと10年はしないでしょうけど)、まだまだ大きく成長する余地があると信じています。