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Photo by iStock

男性の家事育児は当たり前?東大生が聞いた、「男女平等世界一」の国・アイスランドのリアルな姿

『女性の休日』東京大学トークイベント前編

世界経済フォーラムが2025年6月に発表した「ジェンダーギャップ指数」で、アイスランドは16年連続で1位になった。経済・教育・健康・政治、この4つの分野で男女の格差を測るこの指数。日本は148カ国中118位。G7の中では最下位だ。

なぜアイスランドでは男女格差がこれほど小さいのか。その背景には、50年前の「伝説の1日」がある。

1975年はまだアイスランドでは女性は弁護士や船長になれないと言われ、同じ仕事をしても女性は男性の6割しか賃金をもらえなかった。そこで10月24日、アイスランド中の女性の9割が、仕事も家事もすべてストップ。家を出て、街へ出て、「女性がいないと社会は回らない」と行動で示したのだ。それが「女性の休日(Women’s Day Off)」と呼ばれる歴史的なストライキ。この出来事が、アイスランドの男女の賃金格差を是正する法律制定につながり、ジェンダー平等を大きく前に進めるきっかけになった。さらに2023年までに6回同じようなストライキが繰り返され、「世界一女性が住みやすい国」と言われるまでになったのだ。

では1975年にそのような伝説の一日がなぜ実現したのか。その背景を描いたのがドキュメンタリー映画が『女性の休日』である。2025年10月25日にミニシアターで上映が始まった本作は、全国の各地でイベントが開催されたり、上映が延期されるなどムーブメントを起こしている。

10月23日には、東京大学でこの映画の試写会が開かれた。会場には、アイスランドの国会議員で未来会議議長のヨン・グナール議員、駐日アイスランド大使館の参事官ラグナル・ソルバルダルソンさんが登場。試写会後のイベントでは、東京大学 情報学環 学際情報学府 所属の学生たちが「どうしてそんな大きな行動を起こせたのか」「その後、社会はどう変わったのか」など率直に質問した。その様子をレポートする。

2025年10月23日、試写会の後、東京大学で行われたトークイベントの様子。
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男女が共に作ったアイスランドの平等

ラグナル・ソルバルダルソンさん:映画『女性の休日』の試写会に男性がいるということはとても重要なことだと思っています。ジェンダー平等についての会話の中に、男性がいるということは非常に重要だと考えているからです。ジェンダー平等は女性だけの社会問題ではなく、男性のものでもある。共に力を合わせて解決していかなければならない問題だと思っています。『女性の休日』でも描かれていましたが、女性の草の根運動が始まった当時はそれを支持しない男性もいました。しかし、長い年月をかけてアイスランドの男性のスタイルというのは全く変わりました。特にこの10年ほどは、政府が若い世代に向けて、ジェンダー平等に関する教育を積極的に進めています。

ドキュメンタリーの中でも描かれていますが、ストライキが行われたのは50年前ですよね。今年50周年ですが、アイスランドにおける女性の権利や男女平等を求める声が始まったのは、50年よりもっと歴史が長いです。紐解けば1175年からの歴史があります。初めて男女平等に相続権を獲得することができるようになったのが1850年のことです。それから女性が参政権を得て、投票ができるようになったのが1915年。その後、初の女性の大統領が誕生しました。今のアイスランドを見ても、市長や警察署長、それから外務大臣、大学長などを女性が担っています。長い歴史があって、ここまでやってきたのです。

映画『女性の休日』より©2024 Other Noises and Krumma Films.
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ヨン・グナール議員:私は政治家を勤めていて、現在は国会議員でもあります。私が生まれた1967年、アイスランドの国はとてもマッチョでした。男であれ、海賊であれと。男性間での話になると、とにかく海賊の話ばっかりという状況でした。「男であれば強くあれ」というふうに言われて育った世代です。

自分が子どもの頃のアイスランドは力のあるポジションは男性の方が多かったのですが、途中で変わりました。まず「女性の休日」のような女性のムーブメントの始まり。そして2年後にはヴィグディス・フィンボガドッティルさんが女性初の大統領になりました。彼女は世界で初めて民主的な選挙で選ばれた女性の大統領です。そういうこともあり、徐々に自分が生まれた国とはまた違う国になっていったんですね。その後は女性の政党がいくつか生まれて、本当に物事は変わったなと感じます。

小さい頃、自分が育ったアイスランドと比べて、今生きているアイスランドの方が私は大好きです。私は3党の連合与党の一員でもあるのですが、その全ての政党のリーダーは女性です。大統領も女性、そして国家警察のトップの方も女性で、皆さん非常に素晴らしい仕事をなさっている。自分にとっても良い環境だなと思っています。

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