はじめに 人類の歴史は「移動」と「交易」の歴史でもあります。道が整備されるよりも前から、川や海は自然の「道」として人々を運び、物や文化を結びつけてきました。私たち現代人が、見落としやすいところですが、船の発達は単なる輸送手段にとどまらず、文化の広がりそのものを支える基盤となったのです。それが交じり合い文明となりました。 現在では道路や鉄道といった陸上交通が主流ですが、それは産業革命以降、石炭を用いた機関車やエンジンが発明・発展した結果にすぎません。それ以前の長い時代においては、船こそが物流の中心でした。さらに、当時の川には堰もなく、海岸線も埋め立てや地殻変動によって今とは大きく異なっていました…