【本屋の奥さん】 駒込に住んでいた頃、近くにあった行きつけの本屋の奥さんと懇意になった。歳は今風に言うとアラフォー後半といったところだ。小さな本屋さんで奥さん1人が切り盛りしていた。奥さんには息子さんと2人の娘さんがいるのだが御主人はいない。理由は知らない。 その日も、何か面白そうな本がないものだろうかと、そこに立ち寄った。 「こんにちは!ちょっと本見せて下さいね~」 「あら~いらっしゃい!今日はバイト休みなの?こんな時間に来るなんて珍しいわねぇ。彼女とデートにでも行きゃいいのに~」 奥さんが声を掛けてくる。 「はははっ!貧乏人の僕なんかに彼女なんかいませんよ」 「あらっ、女はお金だけじゃない…