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新内閣発足
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日本エネルギー経済研究所(東京都中央区、寺沢達也理事長)がまとめた2050年までの世界エネルギー需給見通しによると、50年の世界の発電量は最大で23年の2倍近くに激増する。データセンター(DC)需要と電気自動車(EV)の普及に途上国の経済成長が重なるため。脱炭素に向け、水素の利用や二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS)が始まることも電力消費を大きく押し上げる。 気候変動対策強化に向けた政策などが最大限、推し進められる「技術進展シナリオ」と、現在の趨勢(すうせい)が継続する「レファレンスシナリオ」の2通りで予測値を算出した。23年実績の約30ペタワット時(ペタは1000兆)に対し、技術進展シナリオでは92%増の約59ペタワット時まで増える。24年は約57ペタワット時と予測していたのを「新たにDC需要とEVの普及台数増を加味して上積みした」(遠藤聖也主任研究員)。水素・CCSによる増分は昨
住友商事と四国電力が出資するサントリニティー(東京都千代田区)は、イオンモール大和郡山(奈良県大和郡山市)で大規模な太陽光パネルを設置した車庫「ソーラーカーポート」の稼働を始めた。駐車場1004台分のスペースに整備し、出力は約3100キロワットで商業施設として日本最大規模。年間の建物消費電力の約20%をまかなえるという。 今回、サントリニティーが2024年1月にイオンモール(千葉市美浜区)と発表した「日本最大規模の包括ソーラーカーポート・オンサイト太陽光PPA契約」に基づく取り組みの一環で実施した。両社が推進している再生可能エネルギー導入の中心事業の一つとなる。 サントリニティーは出資比率が住友商事60%、四国電力40%で、日本国内で太陽光発電事業の開発・運営を手がける。
大手企業の間で、業績が好調でも人員削減に踏み切る動きが相次いでいる。背景には中長期的な競争力強化に向けて、事業構造の改革を目指す企業の姿と雇用に対する考え方の変化がある。(苦瓜朋子) 全社的には黒字でも、収益性の低いノンコア事業の撤退や縮小に動く企業が増加している。余力があるうちに事業ポートフォリオを見直し、成長が見込まれるコア事業に経営資源を振り向け、企業価値を高めるのが狙いだ。このような動きに合わせ、人員の適正化と若返りを図るのが「黒字リストラ」だ。 東京商工リサーチによると、2025年1―9月に早期・希望退職が判明した上場企業は34社。このうち、22社は直近の決算が黒字だった。 大手では、三菱電機やパナソニックホールディングス(HD)、三菱ケミカルグループの三菱ケミカルなどで実施。3社とも足元の業績は堅調で、パナソニックHD以外は削減人数を定めていない。日本総合研究所の林浩二プリンシ
日米共同でのスーパーコンピューター開発が始まった。理化学研究所のスパコン「富岳」の後継機「富岳ネクスト」を富士通と米エヌビディアを含む3者で開発する。富士通の中央演算処理装置(CPU)と米エヌビディアの画像処理半導体(GPU)はスパコンの開発競争を戦う上で補完関係にある。共同開発は電子産業やAI(人工知能)分野で日本が経済安全保障の戦略的自律性と戦略的不可欠性を確立する試みになる。(小寺貴之) 「スパコン向けCPUを設計できるのは世界に4社しかいない。米インテルと米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、米IBM、富士通だけだ」―。理研の計算科学研究センター(R―CCS)の松岡聡センター長は強調する。スパコン開発では汎用CPUとGPUを組み合わせたマシンが上位を席巻している。CPUだけで世界ランキングのトップ10に入っているのは富岳のみだ。 米ローレンス・リバモア国立研究所が開発した
2025年ノーベル賞自然科学3賞がでそろった。生理学・医学賞と化学賞で日本人が選ばれる快挙となった。2賞同時受賞は大村智北里大学特別栄誉教授と梶田隆章東京大学卓越教授らが選ばれた15年以来となる。25年に受賞するテーマはいずれも教科書に載るような各分野の基礎を作った研究だ。受賞候補者として長年、名が挙げられており、待望の受賞となる。(梶原洵子、小寺貴之) 生理学・医学賞/制御性T細胞発見 免疫学の常識覆す 25年のノーベル生理学・医学賞は、免疫を抑える免疫細胞の「制御性T細胞(Treg)」を発見し役割を解明した大阪大学の坂口志文特任教授、米民間企業研究者のメアリー・E・ブランク氏、フレッド・ラムズデル氏に贈られる。 私たちの体は侵入したウイルスなどを排除する免疫システムを持つ。T細胞による侵入者への攻撃は特に重要な機能だが、この攻撃を止めるTregも同様に欠かせない。Tregに異常が起きる
京都大学の原田布由樹大学院生と中村智也助教、若宮淳志教授らは、汎用性の高い高品質スズペロブスカイト薄膜の作製法を開発した。下地種類やペロブスカイトの組成によらず適用でき、大面積基盤にも均一に成膜できる。環境負荷の大きい鉛を使わないペロブスカイト太陽電池の開発加速が期待される。 開発した「結晶成長制御剤を用いた真空乾燥法(V―CGR法)」は、非晶質の中間相を経由することで均一なスズペロブスカイト薄膜を形成するもの。 まず、結晶成長制御剤としてイミダゾール誘導体を前駆体溶液に添加し、真空乾燥により溶媒を除去。これにより非晶質固体に覆われた平坦な中間体膜が形成される。その後、加熱過程でイミダゾール誘導体が脱離・放出されることで、緻密で均一なスズペロブスカイト膜が得られる。 従来のアンチソルベント法と比べて基板のぬれ性の影響を受けにくいため、これまで困難だったホスホン酸誘導体MeO―2PACzなど
「間違いなく産業製品として立ち上がっていくだろう」…全国45社で工業会設立、「蓄電コンクリート」とは? 会沢高圧コンクリート(北海道苫小牧市、会沢祥弘社長)など全国45社のコンクリートメーカー・関連企業は、「蓄電コンクリート工業会」を設立した。蓄電コンクリート技術を活用したプロダクツの企画開発と全国的な普及体制の構築を進める。蓄電コンクリートの供給体制を全国規模で確立することで、再生可能エネルギーの効率的な蓄積と供給、分散型エネルギー網の構築、自己発熱機能によるエネルギー消費低減などの実現を目指す。また、社会実装に向けた産業連携を加速していく。(福島・村上授) コンクリート内部にはセメントと水が反応する過程で生まれる、極めて小さな空隙(細孔)がまるで毛細血管のように広がっている。コンクリートに炭素微粒子であるカーボンブラックを添加すると細孔の周囲にカーボンブラックが集まり、連続的な導電ネッ
マツダ宇品工場(広島市南区)で稼働中の石炭火力発電所2基。出力計10.6万キロワットで工場電力の8割をまかなう マツダは30日、広島と山口の両工場で計画していた自営石炭火力発電所のアンモニア専焼発電への転換を断念すると発表した。技術確立や調達体制の遅れ、欧州の環境政策転換などを背景に方針を改めた。初期投資も抑制できる。2030年をめどに既存の発電所を廃止し、両工場で使う電力の大部分を外部からの調達に切り替える。これに伴い、30年度の二酸化炭素(CO2)削減目標を13年度比69%減から46%以上減へと引き下げた。 マツダは環境規制が厳しい欧州市場での販売継続には、脱炭素電源による車両製造が必要となると考えて、実用化されていなかったアンモニア専焼発電への挑戦を構想した。欧州が脱炭素への現実路線にシフトしていることを受け、操業を支えるエネルギーの安定供給を最優先とし、着実に脱炭素を実現していく計
通信品質・投資効率を両立 NTTドコモが通信品質対策強化と設備投資効率化の両立を進めている。商用網を担うネットワーク本部の組織体制を見直し、携帯通信網のエリア品質、コスト構造改革に特化した部署を新設した。2026年3月までに全国の第5世代通信(5G)基地局数を24年3月比4割以上増やす一方で、業務・調達工程の見直しにより26年度に5G基地局1基地局当たりの投資単金を23年度末比2割低減。27年度のネットワーク関連投資を25年度比300億円減らす。(編集委員・水嶋真人) 「26年3月までに全国主要鉄道動線の5G基地局数を24年3月比70%以上、全国主要都市中心部の5G基地局数も同2・2倍以上に増やす」―。NTTドコモの携帯通信エリアの品質改善を担うべく7月に新設したエリアマネジメント部の桂智一部長は、今後の基地局増設計画を示す。 ドコモはコロナ禍明けで人流が回復した23年春に表面化した通信品
古河産機システムズ(東京都千代田区、岩間和義社長)は、急傾斜に対応した密閉式吊り下げ型コンベヤー「SICON」を手がける。密閉式で土砂を搬送するため、ダンプトラックで運び出す通常方法と違って排ガスで周囲を汚染する心配がなく、騒音も少ない。この長所が住宅地の多い都市土木や夜間工事で注目され、ダンプトラックに代わる新たな輸送手段として脚光を浴びている。 「8年前、リニア新幹線の工事でシールドマシンで掘った大量の土砂を運び出す方法はないかと相談されたのがきっかけだった」。古河産機システムズプロジェクト営業部の永松孝志部長は、こう振り返る。 土木工事の場合、1件ごとに数十万立方メートルから百万立方メートル単位の大量の土砂が発生する。これをダンプで運び出す場合、数十台のダンプが必要になるほか、走行時の騒音や振動、排ガス問題が深刻化することは容易に想像がつく。加えて最近は新たな問題も発生している。ダン
低出力、企業の研究利用でも注目 脱炭素化へ向け、政府は第7次エネルギー基本計画で原子力の最大限活用へと方針を転換した。原子力発電所新設や立て替えが見込まれ、新型炉研究の加速が求められる。さらに宇宙や医療分野など原子力活用の幅は広い。重要性が高まる原子力人材だが、今、その教育の場が次々に失われている。存在感を増しているのが、近畿大学の教育用原子炉だ。出力わずか1ワットと世界でも最小レベルの原子炉だが、1ワットだからこその価値が見えてきた。(曽谷絵里子) 「ゼロ出力炉」。近大原子炉「UTR―KINKI」はそう呼ばれる。豆電球の発熱量以下で、冷却は不要だ。安全性が極めて高く、学生が起動から臨界調整、出力変更、停止まで一連の操作を自ら行える。 日本初の民間原子炉として1961年に稼働し64年を迎える。この間、東京大学など全国5大学に設置された原子炉は次々に運用を終了。2026年には京都大学の2基の
生成AI(人工知能)モデルの軽量化と高精度化を同時に実現―。富士通は8日、大規模言語モデル(LLM)の軽量・省電力を実現する生成AI再構成技術を開発し、同社のLLM「Takane(タカネ)」の強化に成功したと発表した。今回の成果をベースに金融や製造、医療、小売りなど、専門性の高い業務に特化したタカネから生まれる軽量AIエージェント群を開発・提供していく。 開発した生成AI再構成技術はAIのニューロン間の結合に割り当てられる重み(パラメーター)を極限まで圧縮・軽量化する「量子化技術」と、軽量化しながら精度を維持・向上させる「特化型AI蒸留技術」の二つのコア技術で構成する。 AI蒸留技術は汎用的なAIモデルから思考の要点だけを抽出・凝縮して、小さなAIモデルに詰め込む手法。今回は軽量化に加え、学習した元のAIモデル(教師モデル)を超える精度を実現し両立させた。 このうち、量子化技術をタカネに適
自動車に使われる半導体はAI(人工知能)向けなど最先端品とは異なり、製造プロセスも古い。完成車メーカー首脳は「半導体メーカーは旧世代品には投資してくれない。作れる間は作るが、設備が古くなり工場スペースがなくなれば設備を撤去する」と内情を明かす。過去には自動車メーカーが旧世代の半導体を確保できず、生産に影響が出た例もある。(総合1に関連記事、大川諒介、小林健人、編集委員・村上毅) 新型コロナウイルスのまん延で2020―21年に表面化した半導体不足は、自動車業界に打撃を与えた。20年後半から自動車需要が回復に向かうものの、パソコンや第5世代通信(5G)基地局向けの半導体需要が拡大して需給が逼迫(ひっぱく)。車載向けは供給不足に陥った。 こうした中、トヨタ自動車やホンダ、日産自動車など各社が減産に乗り出し、生産調整や生産車種の入れ替えを推進。だが、国内乗用車メーカー8社の21年度の世界生産台数合
著作物の不正利用を疑われる事例が後を絶たない。5月、都内のコンサルティング会社が新聞・出版社の記事約1万3000本を無断で複製し社員らと共有したとして著作権法違反容疑で東京地検に書類送検された。8月には全国紙3紙が記事の無断利用の差し止めと損害賠償を求め、AI(人工知能)検索サービスの米パープレキシティを東京地裁に提訴した。業務目的での新聞記事の複製には権利者の事前許諾が必要となる。企業内での対応のあり方を著作権関連団体や専門家に聞いた。(編集委員・水嶋真人、小寺貴之、大川諒介) 「2024年7月末ごろに(都内のコンサルティング会社である)ジェイ・ウィル・エックス(JWX)の社内システムで記事がコピーされ共有されているとの内部通報があった」―。月刊の総合情報誌「FACTA」を手がけるファクタ出版(東京都千代田区)の和田紀央副編集長は、JWXによる記事の無断複製を知った経緯をこう振り返る。
大気中の二酸化炭素(CO2)を直接回収するダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)の装置が、大阪・関西万博の会場で稼働している。地球環境産業技術研究機構(RITE)による国内最大級のDACの実証だ。大阪ガスやエア・ウォーターと連携して回収したCO2で合成メタンを製造し、会場内で使う「カーボンリサイクル」も展開中だ。万博の会期が後半に入り、RITEのチームは実証の成果に手応えをつかんでいる。 RITE、実証は着々 合成メタン製造→会場の燃料 来場者でにぎわう広場から離れたエリアに「RITE未来の森」がある。白いフェンス越しにダクト3本の先端が見える。内側に回ると下部に配管とタンクがある。上部のダクトが吸引口となっており、内部でファンが稼働して空気を吸い込んでいる。 空気は網目状の基材に通す。その基材にはCO2を化学結合する吸収剤が固定されており、空気中のCO2を捕まえる。蒸気を投入すると熱で
文化庁はクリエーターへの対価還元を実現するためにAI(人工知能)向けのデータセット流通環境の構築事業を始める。マンガやアニメなどの著作物をAIが学習できるようにデータを構造化する。AI事業者が活用しやすい形式や、著作権者に対価が支払われる契約を整備する。 2026年度予算の概算要求に新事業として3億円を盛り込んだ。初年度はAI分野とコンテンツ分野をつなぐ統括事業者を選定し、対価還元への調査や戦略策定を進める。マンガやアニメ、映像、文芸などの分野に応じたデータセット形式や契約例を整える。 次年度から分野ごとの標準となる仕組みや考え方を構築。モデル事例を作り、3―5年かけて他分野に広げる。クリエーターや権利団体はAI技術や契約の知見が乏しいため統括事業者にはコンサルティングができる事業者を選ぶ。各分野のプロジェクトを伴走して状況変化に対応していく。 文化庁は日本のコンテンツは世界で高く評価され
名古屋大学の天野・本田研究室とフォトエレクトロンソウル(名古屋市千種区、鈴木孝征社長)は、窒化ガリウム(GaN)系半導体材料を用いた光電子ビーム源(GaNフォトカソード)の共同研究成果を活用し、微細化や3次元(3D)構造化に対応する半導体検査・計測技術の有効性を確認した。半導体デバイス製造の歩留まり向上が図れるとする。キオクシア岩手(岩手県北上市、柴山耕一郎社長)が9月にも製造現場で導入評価を始める。 半導体フォトカソードは半導体材料に光を照射して電子ビームを取り出す技術。今回、GaN系半導体材料を採用することで産業利用上の課題だった脆弱(ぜいじゃく)性を高め、従来技術の20倍以上の高耐久性能を実現した。 さらに任意の場所、任意の強度で電子ビーム照射が可能。検査時間短縮、縦方向に集積化した深い穴構造の観察にも利用できる。検査、測定技術の革新につながる成果として、天野浩名大教授は「半導体開発
金沢大学の砂田哲教授と埼玉大学の内田淳史教授らは、小脳の情報処理を模したリザバー計算の光回路チップを開発した。電子回路の100倍以上の省エネ性能が期待できる。異常検知や認識などの人工知能(AI)処理を高効率で実行するための基礎技術になる。 光の配線である光導波路の中で複雑に干渉してパターンを作る現象を計算器として利用する。そこでスパイラル型の結合マルチモード導波構造を数ミリメートル角サイズのシリコンチップ中に形成した。この導波路中で生じる疑似ランダムなネットワーク構造をリザバー計算に用いる。 特殊な時系列データの予測問題に適用したところ、毎秒1ペタ(ペタは1000兆)回以上の積和演算に相当する処理ができた。1回の積和演算に必要なエネルギーは0・15フェムトジュール(フェムトは1000兆分の1)と試算できた。 まだ原理実証の段階だが、光でAI処理をする省エネチップなどの開発につながる。
ロボットをAI(人工知能)で動かすフィジカルAIの開発が日本でも始動する。経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が205億円を投じ、ロボット基盤モデルを構築し、製造や物流などの分野へ適用する。従来の作り込みでは対応できなかった多様な作業が可能になると期待される。課題はデータが生産されるビジネスモデルの構築だ。研究開発と並行してAIが育つ環境を作る必要がある。(小寺貴之) データ生産の継続課題 「データの生産やAIの学習が継続的に回るビジネスを作るところが最も難しい。言い換えるとアプリケーションやフィールド側から押さえていくチャンスでもある」―。早稲田大学の尾形哲也教授・AIロボット協会(AIRoA)理事長は説明する。AIRoAがNEDO事業に採択され、ロボット用の生成AI基盤モデルを構築する。 プロジェクトは3段階で進める。まずロボットの稼働データを取りながら高品質デー
次世代型太陽電池「有機薄膜太陽電池(OPV)」について農業分野での活用を模索する動きが広がっている。OPVは薄くて軽く曲げられるため、ビニールハウス屋根に設置できるほか、農作物の生育に必要な波長の光は透過し、光合成への寄与が少ない波長の光で発電する特性を材料合成によって持たせられる。同じく薄くて軽く曲げられる次世代型として注目を集めるペロブスカイト太陽電池(PSC)と比べてエネルギー変換効率は劣るが、OPVの特性に着目し、効果を検証する実証実験が複数の場所で始まっている。 「独自路線になる」 岡山県真庭市にある県立真庭高校にある農業用ハウス。そのビニール屋根には1m×40cmの有機薄膜太陽電池が24枚設置されている。農作物の生育に必要な青色光と赤色光は透過し、光合成への寄与が少ない緑色光で発電する「緑色光波長選択型有機太陽電池(OSC)」だ。大阪大学産業科学研究所の家裕隆教授らが開発し、真
住友重機械工業は次世代型ペロブスカイト太陽電池に必要な電子輸送層の新成膜技術を開発した。独自成膜方法の反応性プラズマ蒸着法(RPD法)を用いることで、電子輸送層に適した酸化スズ(SnO2)のみの膜を形成することに成功した。各メーカーで検討が進む電子輸送層の成膜方法と比べてコストを200分の1に抑えられる。成膜技術の量産装置化とペロブスカイト太陽電池の製造工程への適用を目指す。 RPD法は物理気相成長法(PVD)の一種で、低温・低ダメージや大面積・高速成膜などの特徴を持つ。また危険性がなく低環境負荷のガスを利用するため、ペロブスカイト層上への成膜や量産性、環境親和性に向く。 SnO2は安価に手に入る金属酸化物でPVDで成膜すると導電性を持つ膜になる。電気の通りが良くなり過ぎると電子輸送層として働かないが、住重のRPD法を用いることでPVD方式としては世界で初めて、電子輸送層として機能する適度
自動車メーカーのトヨタ自動車が手がける芝生とは―。トヨタはこのほど造園用ノシバ「TM―Cross(ティーエムクロス)」を開発した。葉の長さが一般的なノシバの半分以下のため、年に1―2回の芝刈りのみで、芝ならではの緑が映える状態を維持。刈り取りや運搬、焼却などの費用も低減しながら、芝による二酸化炭素(CO2)吸収効果も期待できる。高密度のため、芝生の上部を高頻度に歩行しない傾斜地や緑地帯などでの使用に適する。 ティーエムクロスは葉の密度が一般的なノシバの約3倍あり、雑草の種子などが地面に届きにくい。届いた場合でも地表面が暗いため、雑草種子の発芽防止につながる。実際に在来品種とティーエムクロスの芝生に雑草の種子を散布し、2カ月後の発芽数を比較したところ、ティーエムクロスの上で発芽した雑草の数はノシバの約3分の1だった。 トヨタは「アグリバイオ事業」として、自動車生産やバイオ技術開発で培った経験
300万台体制、供給網維持 日本のモノづくり復権に向けてトヨタ自動車が動き出した。本拠地の愛知県豊田市に、同社として国内で14年ぶりとなる車両工場を新設する。既存工場に老朽化の波が押し寄せる中、新工場に車の生産を移管しながら、既存工場の修復や建て替えを進めるとみられる。日本経済のけん引役であり外貨を稼ぎ、地域の雇用を支えるトヨタ。国内産業やサプライチェーン(供給網)を守りつつ「自働化」を取り入れるなど工場の新たな姿を模索する。(名古屋・川口拓洋) 国内の車両工場新設は2011年のセントラル自動車(現トヨタ自動車東日本)の宮城工場(宮城県大衡村)以来。新工場は機械設備を生産する貞宝工場(愛知県豊田市)の近隣の見通しで、30年代初頭にも稼働する計画だ。 グループの関連工場を含め、国内で14工場・28ラインを稼働するトヨタ。ただ、完成時期は「クラウン」や「bZ4X」「GRヤリス」などを生産する元
脱炭素へ民間投資呼び込み課題 国内で新たな地熱発電技術の実用化を目指す国の計画が今秋をめどに固まる。各地で稼働する従来型の地熱発電所に続き、地熱の有望区域や発電コストなどを精査し、民間投資を呼び込む施策を示すことが成否のカギを握る。カーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)の達成には、地熱発電の導入を増やす必要がある。海外でも新技術の実証などの計画が進みつつあり、国際的に開発が加速する機運が高まってきた。(孝志勇輔) 日本は地熱資源量が2347万キロワットで、世界最大規模の地熱地帯を持つ米国、火山島が多いインドネシアに次ぐ世界3位だ。東北や九州地方に地熱発電所が集積している。一方で、地熱発電設備容量では同10位にとどまる。米国やインドネシア、フィリピンとの差は大きい。豊富な地熱資源を生かし切れていない。 そこで経済産業省・資源エネルギー庁が重視するのが、次世代型の地熱発電だ。
成長軌道維持の正念場 ルネサスエレクトロニクスの経営が曲がり角だ。事業拡大を狙い、積極投資を実行したパワー半導体でつまずいたためだ。パワー半導体関連で損失を計上し、2025年1―6月期連結決算は当期損益が赤字に転落した。25年12月期通期でも13年3月期(1675億円の赤字)以来の水準の赤字に陥る可能性もある。大幅な赤字になれば、再度のリストラも避けられない。(小林健人) 7月中旬、ルネサス経営陣は従業員向けに今後の働き方についての説明会を開いたという。主な内容はリモートワーク中心の勤務から出社を求めるものと、一時金を年1回の支給に変更するというものだ。 特に出社方針は影響が大きい。26年1月からは週3回の出社が必要になるという。ある従業員は「リモートワークを前提にしている従業員には大きな変更だ。本社のある豊洲フォレシア(東京都江東区)に人数分のフロアがない。25年度中に別のビルに引っ越す
浜松ホトニクスとEX―Fusion(エクスフュージョン、大阪府吹田市、松尾一輝社長)は、レーザー核融合発電の実現に必要な大出力パルスレーザーの1時間連続照射実験を実施した(写真)。実験は浜松ホトの中央研究所産業開発研究センター(浜松市中央区)で実施。同社のレーザーとエクスフュージョンの実験チャンバーを組み合わせた装置を使用した。公的機関が関わらない「民間のみの実験としては世界初」(松尾社長)となった。 実験では、1秒間に10回の頻度でターゲットとなる直径1ミリメートルの金属を真空チャンバー内に投入。その位置を予測して、出力10ジュールのレーザーを連続照射した。レーザーとターゲットとの位置の誤差は約500マイクロメートル(マイクロは100万分の1)で、50%以上の確率でターゲットへの照射に成功する結果を得た。 レーザー核融合は燃料に大出力レーザーを照射し、原子核同士が融合する反応。その際に発
京都大学大学院農学研究科の宋和慶盛助教らと村田製作所、BioSerenTach(バイオセレンタック、京都市中京区)は、脂肪を燃料とするバイオ電池を開発した。脂質を加水分解する酵素リパーゼが入った極小の針を搭載し、脂肪の加水分解で生成するグリセロールを燃料とする。試作パッチを作製し、牛肉の脂肪分から出力0・1ミリワットで発電できると実証した。 バイオ電池は酸化還元酵素の触媒反応を利用し、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。燃料を参加する酵素を負極に、酸素を還元する酵素を正極に付けて電気を取り出す。今回は極小の針で脂肪分解酵素リパーゼを脂肪に注入して加水分解しグリセロールを生成後に、針からグリセロールを取り込み燃料として発電する仕組みとした。 今回は牛肉の脂肪を燃料に発電したが、将来はヒトの脂肪を使った安全な稼働の確立に取り組み医療分野への応用を目指す。利用する酵素を変更すれば脂肪以外の
パナソニックホールディングス(HD)の電子部品事業会社、パナソニックインダストリーは、2025年内に透明度の高い電磁波シールドフィルムを発売する。電磁波を遮断・減衰するシールド性能と透明度を両立したフィルムは開発が難しいとされてきたが、独自の透明導電フィルムを活用し実現した。電磁波ノイズ対策が必要な工場自動化(FA)機器向けなどで需要を見込み、28年度までに年間10億円超の売上高を目指す。 パナソニックインダストリーが発売する電磁波シールドフィルムは、厚さ50マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の透明導電フィルム「FineX」、同50マイクロメートルの光学用透明粘着シート(OCA)、剥離用保護フィルムで構成する。 フィルム状物質の電気抵抗を表し、値が低いほどシールド性能が高いことを示すシート抵抗は1・5オームパースクエア。電子回路やモーター、液晶、Wi―Fi(ワイファイ)、第5世代
三菱商事は17日、ノルウェーのサーモン養殖加工会社を買収すると発表した。買収額は継承する負債を含めて総額約1450億円。世界的な人口増加や新興国の経済発展を背景に良質なたんぱく質の需要が伸びており、サーモン養殖の需要が拡大すると判断した。養殖サーモンは生産適地が限られることを踏まえ、安定供給体制の構築につなげる。 三菱商事は子会社でノルウェーのサーモン養殖大手セルマックを通じ、同国のグリーグ・シーフードのノルウェー北部、カナダ西海岸、同東海岸のサーモン養殖事業を取得する。買収は10月をめどに完了する予定だ。買収と生産性向上により、セルマックの生産量を2027年度に現状比4割増の年間約28万トンに増やす計画。生産量は世界2位級に浮上する見込みだ。 セルマックはノルウェー、チリ、カナダでサーモン養殖事業を展開している。三菱商事は安定収益が期待できるノルウェー事業と需要が堅調な米国市場に供給する
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