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新内閣発足
maga9.jp
10月21日、日本で初めて女性の総理大臣が誕生した。 女性閣僚は2人。財務相の片山さつき氏と、経済安保相に起用され、外国人政策担当などを兼務するという小野田紀美氏である。 片山さつき氏といえば、2012年の生活保護バッシングを主導した人である。 13年、第二次安倍政権の下で生活保護基準が引き下げられたことは、この連載でも触れてきた通りだ。 きっかけは、12年に起きた、芸能人の母親が生活保護を利用していた問題。不正受給でもなんでもないのだが、片山さつき氏ら自民党議員が国会で取り上げるなどしてオオゴトに。それが生活保護バッシングにつながり、野党だった自民党は「生活保護プロジェクトチーム」を立ち上げ。座長は世耕弘成氏、メンバーには片山さつき氏や小泉進次郎氏がいたのだが、このチームが「生活保護1割削減」を掲げる。 12年12月の選挙で自民党は政権に返り咲いたのだが、そんな第二次安倍政権が真っ先に手
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第735回:高市新総裁の誕生と相談現場に溢れる悲鳴、そしてまた一人命を落とした「生活保護引き下げ訴訟」の原告。の巻(雨宮処凛) 「30代女性。派遣の仕事を転々としている。今月、契約が終了する。電気代も高く、エアコンもつけずに生活をしている」 「50代女性。職場で怪我をしたが労災認定されず納得できない。生活・ガス代がとても高く生活が苦しい。心身の不調があり、視力も低下し、体重は10キロ減った」 「70代男性、単身。昨年妻が亡くなり年金収入がグッと減る。物価高で生活していけないので生活保護の相談に行ったが基準をギリギリ超えているから利用できないと言われた。医療費も2割負担になったので糖尿病や歯の治療も控えている」 「70代女性。同年代の知人について。月12万4000円の年金。がんで治療中。光熱費上がっているしやりくりできない。食べるものもない。水道止められ援助した」
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第734回:ヘイト合戦の様相の自民党総裁選〜「〇〇バッシング」という、何もしなくても「何かしてる感」が出せる魔法。の巻(雨宮処凛) 自民党総裁戦が見るに堪えないことになっている。 まずは茂木氏。 総裁選数日前にはスーパーを視察。「庶民派アピール」なのだろうが、わざわざそれを狙ってスーパーに行くところ、しかも高級車で乗り付けるなどがかえって「特権階級アピール」となっていた。0点。 9月20日には埼玉県川口市を訪問。「違法外国人ゼロ」を掲げ、クルド人による交通事故の現場やクルド人が行くというコンビニ視察と聞いて耳を疑った。 もちろん、痛ましい交通事故について、その現場を視察することに大きな意味はあると思う。 しかし、6月から突如としてこの国に排外主義が台頭し、またクルド人ヘイトが渦巻く中、わざわざこのタイミングでそのような現場に足を運んだことに驚いた。 自民党総裁選候
ホーム マガ9対談 雨宮処凛さん×中島岳志さん:なぜ「日本人ファースト」は人々の心を捉えたのか? 2025参院選を振り返る──日本政治の現在地 自民党が大きく議席を減らすとともに、「参政党の躍進」が注目を集めた参議院選挙から2カ月。石破首相が退陣を表明し、自民党総裁選の投開票日もまもなくです。多くの人が「日本人ファースト」などの参政党の主張に共感し、票を投じたのはなぜだったのか。そして、ここから日本の政治はどこへ行くのか? 作家の雨宮処凛さん、政治学者の中島岳志さんのお話から、「日本政治の現在地」を見据えます。 「ピストルの弾」は、ずっと前から込められていた 雨宮 では、まず7月の参院選の振り返りから。……と言いつつそこから少し遡るのですが、私が「今回の参院選は参政党が票を伸ばすんじゃないか」と感じたのは、参院選1カ月半前の6月10日でした。 その日、何気なくSNSを眺めていたら、いつもは
灰色の空から時折り霧雨が降っていた。猛暑の中休みのような7月のある日、私は府中刑務所見学の機会を得て、最寄り駅まで迎えに来てくれた職員のあとについて門をくぐった。 東京ドーム5.6個分と言われてもドームに行ったことがなくてピンと来ない私だが、262,187平方メートルの敷地には職員が居住する団地が何棟もあり、立派な講堂がある。塀で囲まれた敷地内は1850人(7月時点)を収容する収容棟、運動場、いくつもの作業場を内包し、まるで町のようだった。 府中刑務所の収容対象は、刑期10年未満で再犯リスクが高い日本人受刑者で、高齢または知的や精神障害を抱えている方、薬物依存傾向などが強い方、そして外国人受刑者たちだ。受刑者の数だけ背景があり、被害者もいる。 被害者がいると書いたが、覚醒剤や大麻は使っている本人に健康被害はもたらしても、他者にはほとんど被害をもたらさないと言われているのだが、法に反するとい
9月10日、アメリカで保守活動家のチャーリー・カーク氏が殺害された。 逮捕された男性についてはまたまだわかっていない部分が多いが、事件を受けて、アメリカではもともとあった分断がさらに深まっている。 SNS上などでカーク氏の生前の言動について言及するなどしたジャーナリストや教職員が仕事を解雇されたり停職となったりと怒涛のキャンセルが続いているのだ。 事件に関する司会者の発言で、アメリカの人気テレビ番組も無期限休止の事態に。それだけでなく、トランプ大統領は反ファシスト運動の「アンティファ」をテロ組織に指定すると発表。また自身に批判的なテレビ局の免許剥奪を示唆するなど、「やりたい放題選手権」があったらぶっちぎりで優勝という無双状態に入っている。 そんなものを見ながら、あっという間に日本もこんなふうになるのだろうな、と思った。 何しろトランプ氏が大統領に就任してからわずか9ヶ月でこれほど変わったの
これまでのこと、そしてこれから起きることを記録しておかなければ。 日々、そんな衝動に強く駆られている。それくらい毎日のように、この国が少しずつ変質しているのを突きつけられることが起きているからだ。 まず確認したいのは、2023年、入管法改正案の話が出てくる前まで、この国には「クルド人ヘイト」は存在しなかったことだ。日本に来るようになったのが30年ほど前で、23年時点で3000人ほどと言われたクルド人。しかし、2年前まではSNSで誹謗中傷を受けるどころかその存在さえ知られず、知っていたとしてもさして関心も持たれず日本社会で暮らしていた。 もうひとつ、記録しておきたいこと。 それは25年5月には、クルド人以外で外国人がことさら敵視されるような空気はそれほどなかったということ。 もちろん、在特会などのデモはあった。が、そのようなデモに参加したりヘイトを撒き散らす人々はごくごく一部ということは共有
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第731回:「不法滞在者ゼロプラン」の裏で、存在自体が「違法」とされてしまう子どもたちに今、起きていること。の巻(雨宮処凛) 「小さい頃から入管に、『国へ帰れ』『頑張っても無駄だよ』『諦めな』と暴言を吐かれてきました」 「なぜ、私だけ夢を諦めなければならないのか。なぜ、私の家族だけ一緒に生きていけないのか、そう問い続けてきました」 この言葉は、8月27日に開催された省庁交渉(出入国在留管理庁=入管庁・文部科学省・こども家庭庁)と緊急院内集会「子どもの権利は私たちになぜ適用されないのですか 入管庁による子どもと親の送還を今すぐやめてください」で発されたものである。 入管庁などに声を届けようと集まったのは、今まさに「強制送還」への不安に怯える小学生、中学生、高校生、専門学校生、大学生など10人以上の当事者たち。日本生まれだったり、幼少期に親に連れられ日本に来た外国籍の
もし、2020年からのコロナ禍がなかったら、日本の、そして世界の政治状況は全く違ったものになっていたのではないか――。 そんなふうに考えさせられる一冊と出会った。 それは『陰謀論 民主主義を揺るがすメカニズム』(中公新書 秦正樹)。今から3年前の22年に出版された本だ。 本書の「あとがき」にて著者は、執筆依頼を受けたのが19年末であることに触れ、以下のように書いている。 「当時、確かに欧米圏では陰謀論が社会を席巻していたが、日本では、さほど大きな問題となっていなかった」 それがどうだろう。 わずか6年で、この国の空気は明らかに変わった。 19年、まだまだ「対岸の火事」だった「陰謀論」は、未知のウイルスに対する恐怖やワクチンへの不安を原動力としてここ数年、この国で猛威を振るっているのは周知の通りだ。 その間の世界に目を転じれば、「Q アノン」による「ディープステート」論を盲信する者たちが現れ
ある「社説」 8月15日、「戦争を振り返る」というマスメディアの一斉報道は、とりあえず終息した。大切なものも、どういう意図か分かりかねるような記事や番組も含めていろいろあったけれど、ぼくはそれなりに注意して読んだり見たりした。 中では、NHKのドラマ『八月の声を運ぶ男』(本木雅弘、阿部サダヲ 演出・柴田岳志)がかなり面白かった。 そんな「8月報道」には関係ないが、とても憤りを覚える出来事があった。「週刊新潮」のヘイトコラム事件(!)である。 毎日新聞がその件を8月14日の「社説」で取り上げていた。メディアが他のメディアを「社説」で真っ向から批判するというのは、なかなか珍しい。同じメディアとして、黙ってはいられなかったということだろう。いいことだ。 週刊新潮の差別コラム 新潮社の人権感覚を疑う 自分と意見が異なる外国ルーツの人を標的にした排外的なコラムである。掲載した大手出版社の人権感覚を疑
衝撃の参院選から1週間以上が経った。 選挙以来、メディアは参政党の話題で持ちきりだ。 先週は参政党による神奈川新聞記者の取材拒否が大きな注目を浴びたが、今後、支持率はどうなっていくのだろう。 個別のスキャンダルや「危ない」という報道は続きそうだが、私はあまり影響はないように思う。 なぜなら、それよりも人々の「古い政治への忌避感」の方が大きい気がするからだ。 たとえば自民党の裏金に象徴されるような問題。世襲議員たちによる権力闘争にまみれた「永田町」に独占された政治には、1ミリたりとも「付け入る隙」などない。 が、参政党にはあるように見える。そういう演出に成功している。 私は毎日新聞のインタビューで、参政党のやり方を漫画の『ワンピース』にたとえたが、この国の多くの人は永田町の利権政治より『少年ジャンプ』の方が馴染み深く、「好き」なものだと思う。 「利権渦巻く金権政治」というドス黒い物語(しかも
戦争って、こういうふうに始まるんだろうな――。 この1、2ヶ月での日本社会の急激な「空気の変化」に、ただただ呆然としている。 特にこのひと月、日本社会はとんでもないスピードで、ありえない角度への急旋回をしつつある。 原動力は、「外国人の脅威」だ。 最初は、新興勢力による真偽不明な扇動だった。 そこに、本来であればそれを諌めるだろう立場の政権与党がお墨付きを与えるような形で乗っかり「違法外国人ゼロ」とブチ上げた。 さらには勢いのある政党も「外国人に対する過度な優遇を見直す」と追従した。 すべては、選挙で票を稼ぐため。そのために、「外国人」を標的にした。 この二大勢力の「補完」によって、「外国人の脅威」は一気に正当性を帯びてしまった。 私は今年で物書きデビューして25年、そして反貧困運動を始めて19年。その間、数多くの「バッシング」を目にしてきた。 2000年代初頭の公務員バッシング、12年の
参院選が始まった。 3年にわたる物価高騰、そして「失われた30年」の停滞から日本はどう脱却するのか。非正規雇用問題については? 公示前までは話題となってたロスジェネ対策は? そしてすでに「経済大国」ではなくなった日本の10年後30年後、50年後のビジョンは? などなど気になることは山ほどあるのに、メインテーマが「外国人」になっている気がする参院選。 自民党は「違法外国人ゼロ」を掲げ、国民民主党は「外国人に対する過度な優遇を見直す」とブチあげる(のちに微修正)。一方、参政党は都議選に続き「日本人ファースト」を掲げ、「外国人生活保護の厳格化」を公約に掲げる(しかし、前の原稿でも書いたように外国人は永住・定住等のみの在留資格が生活保護の”準用”の対象で、外国人利用者は全生活保護利用者の3%程度)。 思えば昨年の衆院選、「外国人」についての公約を目にすることなんてなかった。それなのにここに来て、「
参院選を前に、「日本人ファースト」をスローガンとする参政党の支持拡大が伝えられています。一方で、その排外主義的・前時代的な政策や党首発言に「危ない」と警鐘を鳴らす声も。では、具体的に何が、どんなふうに「危ない」のか? その手がかりとなりそうなのが、今年5月に同党が発表した「新日本憲法(構想案)」(以下「新日本憲法」)。「明日の自由を考える若手弁護士の会」で、「憲法カフェ」などの活動を続けてきた弁護士3人に読み解いてもらいました。 ※國本さん作成の、参政党「新日本憲法」と日本国憲法の比較表をこちらからダウンロードできます。ぜひ、見ながらお読みください。 太田啓子●おおた・けいこ 弁護士。2002年弁護士登録。著書に『これからの男の子たちへ』(大月書店)、『100年先の憲法へ:『虎に翼』が教えてくれたこと』(太郎次郎社エディタス)など。 國本依伸●くにもと・よりのぶ 弁護士。2002年弁護士登
「逆転勝訴」 「だまってへんで これからも」 「司法は生きていた」 「保護費引き下げの違法性認める」 「勝訴」 2025年6月27日午後3時半すぎ、最高裁判所正門前に、そんな旗が掲げられた。 この日、生活保護引き下げを違法として利用者らが国を訴えた裁判、通称「いのちのとりで裁判」の判決が最高裁で下されたのだ。 結果は、原告の勝訴。こうして書きながら、しみじみと嬉しさを噛み締めている。 この日の午後2時、最高裁の南門には26枚の傍聴券を求めて334人が炎天下、行列を作っていた。人生3度目の最高裁の法廷で、私は勝訴の瞬間に立ち会うことができた。 ということで、この連載でもずーっと書いてきたように、第二次安倍政権下の13年から段階的に引き下げられた生活保護基準。 その背景には、野党時代の自民党議員らが焚きつけるような形で12年から苛烈になった生活保護バッシング、そしてその年の選挙でやはり自民党が
都議選が終わった。 私の注目はやはり参政党の結果だったのだが、0議席から3議席獲得という結果になった。しかも、立候補した4人のうち3人が当選したのである。この事実を、非常に重く受け止めている。 ということで、そのことにも、来たるべき参院選にもものすごく関係あることなので、前々回の原稿「あの『炎上』を通して、参政党が躍進しそうな予感に包まれた選挙前」 を書いた経緯について、書きたい。 あの原稿を書いたのは、6月10日。 11日更新のマガジン9の締め切りはとうにすぎていて、前日に「今週お休みにします」と連絡していた。バタバタしていて書く時間がなかったのだ。 で、その日は急ぎの締め切りもなかったのでベッドでダラダラとスマホで複数のSNSを見ていたのだが、頭の中でパズルのピースがひとつひとつ、カチッカチッとハマっていくような感覚に囚われた。 え? これってどういうこと? 何が起きてる? 嘘でしょ?
京都の瞑想センターで、2度目のヴィパッサナー瞑想10日間合宿に参加してきた。2019年に行った1度目の瞑想合宿の体験記は、書籍『なぜ僕は瞑想するのか』(ホーム社/集英社)にまとめた。今回、1度目とは異なる様々な発見があり、瞑想体験も格段に深まったので、その体験をまたどこかに詳しく書くつもりだ。 瞑想合宿の期間中は、スマホもパソコンもセンターに預け、外部との連絡を完全に断つ。だから合宿を終えて牛窓に帰る途中、スマホでニュースを10日ぶりにチェックして、衝撃を受けた。 イスラエルがイランの核施設を攻撃し、イランも報復を開始して、新たな「戦争」が始まっていたのである。そして数日後に米国もイランの核施設を攻撃し、戦争に参戦してしまった。なんと無益で、悲惨な事態であろう。 こうした出来事について、ジャーナリズムの世界や論壇では、「米国には××といった狙いがあり……」「欧州と米国の力関係が……」などと
先週(2025年6月11日)、「あの『炎上』を通して、参政党が躍進しそうな予感に包まれた選挙前」という原稿をアップした。 これが非常に多くの人に読まれたようで、反響の多さにびっくりしている。 私が目にしたコメントは一部のものだと思うが、どれもが頷き、考えさせられるものだった。改めて、この場を借りて感謝したい。 共感の声もあったが、中には「差別については堂々と声を上げなければいけないのだから甘い」という声もあった。 それはまったくその通りで、指摘を受けてまず書いておきたいのは、世の中には、決して許されない差別があるという当たり前のことだ。 大久保(東京)や川崎(神奈川)、そして最近は川口や蕨(埼玉)で開催されてきたヘイトデモなどはその最たるもので、それについては私自身も最大限の抗議をしたい。また、今この瞬間も差別によって命を、そして生活を脅かされている人たちが存在すること。これは厳然たる事実
声優・林原めぐみさんのXでの炎上を見ながら、次の選挙では参政党が票を伸ばすかもしれないな……という思いが浮かんだ。 知らない人は各自検索してほしいが、問題となったのは、『興味がない、わからない、知らない』というタイトルのブログ記事。 現在は修正されているが、このブログを巡って「当たり前のことしか書いてない」という人もいれば、「排外主義で極右で差別主義者」という批判もある。修正前・修正後、どちらに対してもだ。 ちなみに私はどう思うかと言えば、まず共有したいのは、現在、多くの人が不安を抱えているということだ。 「失われた30年」の中、先進国で唯一賃金が上がらず、先行きも不透明なジャパン。 そんな中、3年にわたって物価高騰が続き、主食の米さえ手に入らない。 貧しくなった日本には大勢の外国人観光客がやってきて、日本人にはとても手の出ない値段のものを「安い安い」と喜んで消費していく。 そうして少し前
2019年に公開された映画『主戦場』を、あなたは観ただろうか? 慰安婦問題をめぐるこのドキュメンタリー映画を観た時、「ここまで来てるのか……」と愕然としたことを覚えている。 何に愕然としたかといえば、いわゆる右派と左派の間で、ここまで見えている世界も使う言葉も何もかもが違うという現実だ。 同じ国に生きて同じことについて語っているのに、ひとつも重なりあうところがない。どこまで行っても決して混じり合うことのない平行線上にそれぞれがいて、互いを嫌悪し合っている構図。そのことに、気が遠くなったのだ。 翻って、私は1990年代後半、右翼団体にいた身。 SNSもない時代、時に右翼と左翼が「反米」や「反自民党」を掲げて共闘するような光景もある中で生きてきた。そんな時代を知っている身からすると、「何がどうして一体いつからこうなった?」と、その分断の前で立ち尽くすような思いだ。 さて、そんな私は新右翼団体・
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第718回:気がつけばある分野で異様な自己責任論者になっていて、それを押し付ける快楽とそのメカニズムが初めてわかった件。の巻(雨宮処凛) このところ、また就職氷河期世代=ロスジェネが注目されている。 それは4月、石破総理大臣が就職氷河期世代を中心とした就労支援を充実させるため、関係閣僚会議を設置すると発表したからだ。 この連載ではロスジェネ問題についてずーっと書いてきたが、改めておさらいすると氷河期世代とは1993年から2004年頃に社会に出た層。ざっくりいうと現在の40代から50代前半で、数にして1700万人ほどといわれている。1975年生まれで現在50歳の私もその一人だ。 そんな氷河期世代はこの30年、辛酸を舐め続けてきた。非正規雇用率で見ると、35〜44歳で26.4%。45〜54歳で30.0%(24年、労働力調査)。 特に女性の非正規雇用率が高く、35〜44
自分はどうも電車に乗るのが苦手で、普段から極力乗らないようにしてる。特に都会の電車。謎の箱に閉じ込められる感じとか、嫌だね〜、あれ。ましてや満員電車に至っては、ギュウギュウの上に、なんだかみんな機嫌悪そうにしてるし、ああいう景気の悪い負のオーラが蔓延してるところにずっといるとこっちの運気まで下がってきそうな感じだ。くわばらくわばら。 実際、自分は高校生の時以来、日常的に電車に乗る生活はしていない。大学に入ったら大学の近くのアパートを借りたし、卒業後もバイト先からチャリ圏内に引っ越した。独立して自分の店を持ってからは、駅にして3駅分の通勤になったが、近所のラーメン屋の店主の爺さんに「店やってるんだったら近所に住まなきゃダメだよ! 通勤に30分かかるんだったら、その30分多く店開けなきゃダメでしょ、なにやってんだ!」と叱られて、なるほどそりゃ一理あると思いたち、すぐ店の近くに引っ越して、今に至
トランプ関税で世界が翻弄される中、米国国内で、途轍もないことが起きつつあることをご存知だろうか。日本ではほとんど報道されていないので、ご存知ない人の方が多いかもしない。 僕が「途轍もないこと」というのは、米国の民主制が急速に崩壊へ向かい、ドナルド・トランプによるファシズム独裁体制に移行しつつあるということである。 また想田が大袈裟なことを、と笑うだろうか。 しかし、少なくとも『ファシズムはどこからやってくるか(原題:How Fascism Works)』の著者として知られる、ファシズム研究の専門家で米国イェール大学教授のジェイソン・スタンリー氏は、まったく大袈裟な認識ではないと考えているようだ。 3月25日付けのDaily Nousによれば、彼は米国がファシズム体制に向かっていることを理由に、今年の秋からカナダのトロント大学へ移ることを決めた。スタンリー氏の祖母と父親も1939年、ナチス・
「生活保護制度の崇高な理念を身勝手な解釈で捻じ曲げ、組織風土の中に形成された悪しき慣行や極めてずさんな事務処理の数々について、福祉事務所という他部局にはない組織構造とはいえ、問題発覚まで一切気づけなかった私どもの責任は重く、心から恥じております。 制度利用者並びに相談者の皆様に対して、堪え難い苦痛や不利益を与えてしまったこと、また、桐生市民の誇りを著しく傷つけてしまったことに対しまして、心よりお詫び申し上げます」 この言葉は、3月28日、群馬県桐生市長のコメントとして発表されたものの一部である。 群馬県桐生市で、生活保護を巡ってトンデモないことが起きていると発覚したのは一昨年11月。 最初に報道されたのは、利用者が受け取る保護費が「1日1000円」などの形で「日割り支給」されているというあり得ない実態だった。 以降、市の福祉事務所に生活保護利用者の印鑑1900本以上が保管され、本人の了解が
DVから避難したケース。DV加害者である夫のもとに荷物を残して逃げて来た女性に「戻るかもしれないから(生活保護の)申請は受けられない」と虚偽の説明をした。女性はその後、支援者の助けを受け、申請はできたが、開始決定が遅延、保護費支給が遅延、更に本人が保護費を受け取る前に受領簿にハンコが無断押印されていた。 調査団、総力を上げて奮闘 一年間(全8回)に渡る第三者委員会の会合に、私は2回目から足を運んだ。前橋地裁での口頭弁論にも皆勤で通っている。 桐生市は8回に及んだ検証委員会の追及の場においても、とぼけたり、虚偽の説明をしたりすることが何度もあった。反省していると述べたり、改善計画を事細かに発表したりして、一見よくなるのかな? と思わされても、裁判で桐生市側の答弁を閲覧すると、反省などはかけらも感じられない盗人猛々しい言い分が書かれていて、メモを取る手が震えた。 第三者の立場で桐生市の生活保護
米国・トランプ大統領が2期目の政権をスタートさせてから1カ月あまり。この間、70本を超える大統領令に署名しています。なかでも、就任後すぐに、連邦政府のDEI(多様性、公平性、包括性)プログラムの廃止と、「性別は男と女の2つだけ」とする大統領令に署名したことは大きな波紋と動揺を広げました。こうしたトランプ政権の姿勢から見えてくるものは何か。ジャーナリストの北丸雄二さんにご寄稿いただきました。 救命ボートの倫理とは 「救命ボート倫理(lifeboat ethics)」と称して提示される問いがあります。60人乗りの救命ボートにはすでに50人が乗っている。そこにさらに波間を漂う100人もの遭難者がいる。さてその場合、何をどうするのが倫理的か、あるいは最適解か? 1974年にアメリカの生態学者ギャレット・ハーディン Garrett Hardin が持ち出したこの倫理上の難題は古代ギリシャの「カルネア
「仕入れ方」が本屋の性格を決める こんにちは。よりまし堂(準備中)の岩下です。 おかげさまで開店準備のクラウドファンディングは目標を達成し、ネクストゴールに挑戦しています。あと2週間を切りましたので、最後のひと押しをぜひよろしくお願いします。 2月に入り、店舗の内装工事が始まりました。空調や電気工事、床の張り替え、キッチンカウンターの造作。本屋の形になるのはまだ先ですが、いよいよだな、と気分が高揚してきます。 先週は、メインの書籍仕入れ元とする予定の「子どもの文化普及協会」さんへ取引開始の打ち合わせに行ってきました。業界団体のような名前ですが、作家の落合恵子さんが代表を務めるクレヨンハウスの子会社です。もともとは児童書専門の卸売会社として始まり、現在はそれ以外のさまざまな本も扱っています。 いわゆる独立系書店は、ここから本を仕入れているお店が多いと思われます。担当の方に伺うと、やはりこの数
米の価格の高騰を受けて、農林水産省は備蓄米をできるだけ早く放出する方針を示した。 政府の備蓄米は、これまで大凶作や災害の際だけに放出できるものだった。しかし農水省は先月、その運用を見直して、流通が滞っていると判断された際にも一時的に放出できるようにした。 たしかに、主食の価格が上がるのは困ったことではある。だからそれに対して政府が急いで対応することは、必要なことなのかもしれない。 だが、僕はこのニュースを複雑な心境で受け止めた。なぜなら農家からは、そもそも米価は安すぎて経済性が成り立たず、米作りの継続が難しいとの悲鳴が聞こえてくるからだ。 たとえば『週刊金曜日』1月10日号に掲載された、米農家で映画監督の安田淳一氏のインタビューによると、2024年産の米の相対取引価格は一俵(60キログラム)あたり2万3820円で過去最高を記録したという。相対取引価格というのは、JAなどの出荷団体と卸業者と
本だけ売っても本屋はできない 前回の記事では、僕が本屋をやろうと決意する前のところで字数が尽きてしまいました。話が冗長で申し訳ないですが、“なりわい”としての本屋のハードルがどのあたりにあるかを知っていただきたかったからです。 前回書いた通り、書籍はとにかく利益率が低いのが特徴です。日頃あまり本を買わない人なら、2000円の本といったら「高め」と感じるでしょう。でも、それを1冊売っても本屋に残るお金は300〜400円。定価の安い新書や文庫、コミックならさらに低く、本当に「雀の涙」という形容がしっくりきます。 それでも、本がたくさん売れた時代には薄利多売でなんとかなっていました。特に雑誌は、毎週新しい号が出て固定客が買っていくので、書店経営の大きな支えでした。しかし今、雑誌を定期購読する人は珍しくなってしまっています。 書籍や雑誌の販売だけで成り立たないとなれば、他の収益源をつくるしかない。
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