高畑鍬名『Tシャツの日本史』(中央公論新社) 今から20年前、2ちゃんねるから生まれた『電車男』の主人公は、Tシャツをズボンに入れたことで笑われた。ところが2025年の街中で目にするのはその逆の風景だ。Tシャツのタックインはオタク的イメージから解き放たれ、いつの間にかオシャレな着こなしとして一般化。むしろタックアウトのほうが「だらしない」と揶揄される場面さえある。 果たしてどこで価値観が逆転してしまったのかーー。8月21日に刊行された高畑鍬名氏による『Tシャツの日本史』(中央公論新社)は、ファッション史の中では主役になりにくかったTシャツに着目した一冊。各時代の映像作品・漫画作品でのTシャツ登場シーンを引用し、若者たちの間での「裾」の扱いの変遷を振り返っている。 本書の序文で著者は、日本においてTシャツと若者の関係は独特であり、「裾が、とんでもない同調圧力を発生させる」と語る。若者たちは周