ばれるのは時間の問題だった。 システムエンジニア(SE)派遣会社に新卒で入社した20代の男性は「実務経験5年のSE」として取引先に送り込まれた。 実際は素人同然で、トイレの個室にこもっては専門用語を検索する日々が続いた。周囲からの冷ややかな視線に耐えかね、程なく退職する羽目に。 会社の対応に疑問を持った男性は、会社と闘うことを決意する。 トントン拍子で内定も… 「未経験でも応募可能」「スクールでスキルも学べる」 2021年2月、大手求人サイトに掲載されていたうたい文句に目が留まった。 当時、大学4年生。新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっていた。内定先の旅行会社から「倒産する」と連絡を受け、途方に暮れていた。 過去にプログラミングを学んだ経験があり、SEへの興味はあった。わらにもすがる思いで応募すると、トントン拍子で採用内定を得た。 会社は、取引先から依頼を受けて、見合った能力を持つS
女性の稼ぎが男性より多いカップルほど破局のリスクが高まる――。フランス国立人口研究所(INED)が最近発表した調査結果が仏主要メディアで取り上げられるなど話題となっている。 フランスでは女性の高学歴化などに伴い、女性が男性より稼ぐカップルが2002年の20%から17年には25%に増加している。 INEDが9月30日に発表した国内のカップルの所得格差についての調査結果によると、女性の所得がカップルの所得全体の55%を超えると、男女の所得が同等のカップルに比べ、離別率が11~40%上がった。 調査は①未婚で同棲(どうせい)するカップル②税控除などで夫婦と同等の権利が得られるパクス(連帯市民協約)を結んだカップル③結婚した夫婦の3種類のカップルを比較した。女性の所得が男性の所得を上回った場合、3種類すべてで離別率が上がり、特に未婚で同棲するカップルの離別率が最も高かった。
川崎市バスで8月、身体障害のある男性(53)がスマートフォンの障害者手帳アプリの利用を断られ、乗車できなかったことが判明した。アプリは市が使用を認めているもので、男性は「不当に乗車を拒否された」と訴えている。市は男性に「運転手の認識不足だった」と謝罪。情報通信技術(ICT)活用が進む一方で、事業者側の理解が遅れている状況が浮かぶ。 男性は東京都あきる野市に住み、慢性腎不全で人工透析を受けている。外見からは分からない「内部障害」の状態で、身体障害者手帳(1級)を持っている。障害者割引などをスムーズに適用してもらうため、マイナンバーカードと連携することが可能で手帳の代わりとして認められているアプリ「ミライロID」をスマホに入れて外出している。 このアプリは民間企業が開発して2019年に提供が始まり、今では交通機関や娯楽施設、自治体の施設など官民の全国約4000事業者で利用できる。手帳を持ち歩く
水泳の授業で男女のデザインが同じ「ジェンダーレス水着」を採用する学校が増えている。現場からは「水着になることへの抵抗感を少しでも減らし、積極的に授業に参加してもらえたら」と期待の声が上がる。 制服に続き水着も 東京都武蔵野市立第五中学校では今年度から、従来の男子用、女子用に加え、長袖の上着とハーフパンツに分かれた男女共用の中から生徒が着たい水着を選べるようにした。 同校では制服も、男女を問わずにスラックスやスカートなどの中から着たいものを選べるようにしている。保健体育を教える阿部直樹教諭(47)は「最近はスラックスをはく女子生徒も増えており、水着もジェンダーレスタイプがないか探していた」と話す。
10月から始まる「インボイス(適格請求書)制度」の影響で、アニメ声優の3割弱が廃業を検討している――。こうした状況が、声優の有志団体のアンケートで明らかになった。制度の導入後、声優業にどのような影響があるのか。実態を探った。 アンケートを実施したのは、人気アニメ「SPY×FAMILY」に出演するなど芸歴23年目のベテラン声優、甲斐田裕子さん(43)らが2022年8月に設立し、東京都内を中心に制度の反対運動をする「VOICTION」。同年9~10月、制度導入による影響を調べるためアンケート(有効回答数969人)をすると、「収入が減ると思う」が77%、「廃業するかもしれない」との回答は全体の27%に上った。 制度導入のメリットについて国は、企業などが消費税の納税額を正確に計算でき、消費税に関する不正やミスを防ぐことに役立つと主張する。制度の負担軽減措置として、免税事業者と取引をした企業が消費税
名古屋刑務所の刑務官が受刑者に暴行や暴言を繰り返した問題を受け、名古屋刑務所は8月から受刑者を「さん付け」で呼ぶ取り組みを始めた。6月に公表された法務省の再発防止策に、受刑者を蔑視する不適切な呼称を直ちに禁止すると盛り込まれていた。法務省は処遇現場で浸透するか、課題を洗い出したい考えだ。 一部受刑者は「くすぐったい」 名古屋刑務所では2021年11月~22年9月、若手刑務官22人が40~60代の男性受刑者3人に計419件の暴行や不適切な処遇を繰り返していたとされる。 名古屋刑務所の刑務官らは受刑者を「懲役」「やつら」などと呼んでいたといい、有識者でつくる第三者委員会は「人権意識が希薄だ」と問題視。上下関係が固定しやすい呼称の廃止を課題に挙げ、受刑者を呼び捨てにする慣行についても見直しを求めた。
「総務省は知事会と完全な出来レースを演じています」 7月中旬、毎日新聞の情報提供窓口「つながる毎日新聞」に一通の「内部告発」が寄せられた。出来レースの証拠として添付されていたのは、ある会議の議事録。東京都などの大都市の税収を他の地方自治体に再配分する「偏在是正措置」を強化するために開いた会議で、6月2日の日付がある。議事録によると、その出来レースは総務省幹部が鳥取県と宮崎県の部長を役所に呼び出した場面から始まる。 高齢化と人口減少に悩む地方。毎日新聞は、各地の取り組みを通じ、地方創生策を考えていきます。企画の趣旨はこちら。 地方から声を 「今日は、どうしても知事会が偏在是正をやりたいとのことで作戦会議を持つこととなった、というテイでお願いしたい」 冒頭、こうあいさつした総務省幹部。全国知事会が7月7日に開催する地方税財政常任委員会(委員長・河野俊嗣宮崎県知事)で偏在是正を議題にすべく、その
天理教の事例を交え「宗教2世」問題の背景について語る天理大の金子昭教授=奈良県天理市で2023年4月13日午後2時14分、花澤茂人撮影 「宗教2世」の問題を受け、親子間での信仰継承のあり方について宗教者に聞く企画の最終回。家が天理教の教会という環境で育った天理大学おやさと研究所の金子昭教授(62)は、多くの教団で後継者育成が課題となっている背景に、この問題があると指摘する。親からの信仰を受け継ぐことを是としつつ、家庭が信仰の場となる危うさや、多様な信仰のあり方を許容する大切さを強調する。【聞き手・花澤茂人】 この連載は全3回です。 このほかのラインアップは次の通りです。 第1回 真宗大谷派・玄照寺住職の瓜生崇さん 第2回 カトリックの前田万葉枢機卿 「100%安全」はない 他山の石に ――宗教2世の問題が浮上してすぐ、宗教専門紙への寄稿や論文で「天理教にとってもひとごとではない」と指摘され
脳などへの電子機器移植後に立ち上がれるようになった脊髄損傷患者のリハビリの様子=研究チーム提供(CHUV/Gilles Weber) 脊髄(せきずい)損傷で下半身がまひした患者に、脳からの信号を伝えるワイヤレスの電子機器を頭部と脊髄に移植したところ、階段を上り下りするなど足腰を自発的に動かす能力を取り戻した。スイス連邦工科大などのチームが、英科学誌ネイチャーで24日に報告した。脳と機械を連動させる技術「ブレーン・マシン・インターフェース(BMI)」を応用したリハビリの成功例として注目される。 患者は12年前の自転車事故で脊髄を損傷し、足を動かすことができなくなった男性(40)。中枢神経である脊髄は脳からの信号を体の各部位に伝達するとともに、末端の手足の感覚を脳に伝える役割を担う。これが遮断されるとまひが起きる。
文化庁は、各都道府県の担当者を集めて「不活動宗教法人」への対策を促した=東京都千代田区で2023年4月26日、国本愛撮影 節税の一つとして宗教法人を取得することをお考えください――。本来、営利を目的としないはずの宗教法人が、インターネット上では「税制優遇」をうたい文句に、公然と売り買いされている。脱法的な売買が横行してしまう背景には、宗教法人に行政の目が行き届いていない実態がある。 ネット上では、宗教法人の売買を呼びかける仲介サイトがいくつもある。「歴史あるお寺(宗教法人)譲ります」。個人間で不用品を売買できる情報サイトには1億2000万円で中部と関西地方にある二つの寺が売りに出されていた。 「立派な本堂あり」「大きな土地有り」との説明書きもあった。出品者は「お寺の経営改善などのコンサルを行っています」とするが、取材を依頼すると「応じかねる」と拒否した。 宗教法人は、境内には固定資産税が課
岡山県奈義町は「子育て応援宣言の町」を掲げている=同町豊沢で2023年3月8日午後0時15分、堤浩一郎撮影 厚生労働省は2月28日、衝撃的な発表をした。2022年の出生数は79万9728人(速報値)で、統計を取り始めた1899年以降で最少という。厚労省のデータでは、1人の女性が生涯に産む子どもの数に相当する「合計特殊出生率」の21年の全国平均は1・30。山陰・山陽の4県は平均をわずかに上回るが、「少子化」が大きな課題であることに変わりはない。こうした中、19年に出生率2・95を記録した「奇跡の町」が岡山県にある。 県北東部の鳥取県境にある人口約5700人の奈義町。20年かけて取り組んできた少子化対策が実り、出生率は21年も2・68を維持している。注目を集め、米国、韓国、オランダ、カタールなどの海外を含む自治体の訪問は年間50件を超え、岸田文雄首相も2月19日、視察に訪れた。
今年2月までに少なくとも7783万回分の新型コロナウイルスワクチンが使用されずに廃棄されたとみられることが、毎日新聞の取材で判明した。厚生労働省の公表資料や全国の主要な自治体へのアンケート集計で割り出した。ワクチンの有効期限切れが主な要因で、廃棄量は購入契約数の約9%に当たる。有効期限の到来によって今後も増える見通しで、有識者からは大量廃棄に至った過程について検証を求める声が上がっている。 国はワクチンの1回当たりの購入単価を公表していないため、廃棄されたワクチンの費用を算出できない。ただ、財務省は購入予算額(2兆4036億円)を総契約数(8億8200万回分)で割った2725円を金額換算した場合の1回分として示している。この数字を掛け合わせ、廃棄されたワクチンを金額に換算すると約2120億円と試算することができる。厚労省幹部は「2725円を掛け合わせて廃棄されたワクチンの費用の総額…
政府が推奨するマスクの着用ルールが緩和される。新型コロナウイルス感染拡大前の「マスクなし」が当たり前になるのはいつか。公衆衛生の観点とは別の要因もあり、すぐにコロナ禍前の風景には戻らないとの見立てがある。【安藤龍朗】 強かった同調圧力 「大半の人たちがマスクを外すようになるのは、5月の大型連休ごろではないでしょうか」。桜美林大学の山口創教授(健康心理学)は、そう予想する。政府のマスク着用ルールは3月13日に緩和されるが、「脱マスク」が広がるには、少し時間がかかるとみる。 感染が拡大した2020年、マスクの着用は瞬く間に日本社会に浸透した。「それから3年も着けていますからね。周囲の行動を見て自分の選択を決める、いわゆる同調圧力が日本社会はとても強いと実感しました」
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